ミニ・レビュー
69年リリースのストゥージズのファースト・アルバム。それと同時にイギー・ポップのデビュー作でもある。デトロイト・サウンドと呼ばれるやかましいロックン・ロールが基本だ。一方プロデューサーのジョン・ケイル色が強い(3)の内向性もきき逃せない傑作。
収録曲
011969
若きイギーの有り余るエネルギーが凝縮された、青さ全開のスローなロックンロール・ナンバー。ゴツゴツしたギター・サウンドと野卑なヴォーカルが倦怠感と反発精神をものの見事に体現している。後半唸りをあげるギター・プレイは必聴!
02I WANNA BE YOUR DOG
イギー・ポップの代表曲といえばまさにこの曲。歪んだギターと投げやりなイギーの「Come on!」という叫び声は何度聴いても鳥肌が立つほどの格好良さ。しゃんしゃんと鳴り響くタンバリンが警鐘のごとき緊張感を全編にもたらしているのもポイント。
03WE WILL FALL
不協和なヴァイオリンと暗黒のように沈んだサウンドが呪術的な色合いすら見せている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを思わせる壮大なフリー・セッションが10分に及び繰り広げられ、ただただ圧巻。
04NO FUN
シンプルなコードのギターがゴロゴロ転がっていくストレートなロックンロール・ナンバー。「退屈だ」と倦怠感を前面に押し出しているものの、ストレートなサウンドが生み出す泥臭さや下品さは、ロック・キッズを虜にする魅力に満ちあふれている。
05REAL COOL TIME
リズムとワウの効いたギターが跳ね回るダイナミックな一曲。徐々に狂気を剥き出しにし、暴走していくバンド・セッションとは裏腹に、終始クールに歌い上げるイギーとの対比がなかなか面白い。
06ANN
ブルージィに淡々と綴られるダウナーなサウンド。失恋という形はとっているものの、この闇の深さは敗者・弱者が味わう圧倒的な絶望感や退廃感と通じるものがあるのではないだろうか。
07NOT RIGHT
閉鎖的で現状を打破できない若者の叫びをテーマにしたナンバー。単調なフレーズを繰り返すギターやリズム、憂いを秘めたイギーの歌声が印象的だが、アウトロから一気に感情があふれ出すようにギターが暴走し出すさまが、非常にエキサイティング。
08LITTLE DOLL
これぞロックンロール! と叫びたくなるようなダイナミックなリズムとギター・セッションを存分に味わえるナンバー。荒くれたサウンドと気怠いイギーの歌声が、アルコールと紫煙の匂い漂う場末のライヴハウスを思い起こさせる。