ミニ・レビュー
ビヨンセなどとも共演したジャマイカの人気ダンスホール・レゲエ・アーティストの3年ぶりのアルバム(通算3作目)。ノリノリでホットな曲に圧倒されるが、ヴォーカルの割合も増えているあたりも聴きものだ。プエルトリコのニーナ・スカイ((14))などが参加。
ガイドコメント
ダンスホール・レゲエの貴公子から世界的スーパースターへ飛躍したショーン・ポール。空前の大ヒットを記録した『ダッティ・ロック』に続く3rdアルバムだ。1stシングル「ウィ・ビー・バーニン」収録。
収録曲
01FIRE LINKS INTRO
リル・ジョン風のがなり声がのた打ち回るアルバム『ザ・トリニティー』のイントロ。繰り返される「ガ〜ヴァメント!」(ここでは「政府!」ではなく「制覇!」だろう)は前作『ダッティ・ロック』同様、このアルバムでも世界制覇してやるぜとの宣言だ。
02HEAD IN THE ZONE
一気にヒート・アップしてしまいそうなダンスホール・サウンド。故郷のジャマイカでの録音にこだわるショーン・ポールの、赤道近くの故郷の空気まで一緒に音に詰め込む貪欲さが明確に聴こえてくる。この汗は止まりそうにない。
03WE BE BURNIN'
アルバム『ザ・トリニティー』1発目のシングルでロング・ヒット曲。サビはショーン・ポールの出世作にしてメガ・ヒット「ゲット・ビジー」のアプローチだが、安易なプロトタイプではない。サウンドは明らかに洗練の度を増しており、成長を証明している。
04SEND IT ON
アップ・タウン育ちのショーン・ポールの品の良さが出ている曲。この鬼気迫る暗めのトラックで50セントがラップしたら、まったく雰囲気が違うだろう。ウリのおっとりしたライミングが楽しめる娯楽作品だ。
05EVER BLAZIN'
得意のマッチョなダンスホール・サウンドから視点を変えた、軽いリズムのR&B。それでもトラックがいかに変わろうと、ショーン・ポールのヴォーカリゼーションは不動だ。ぶっきらぼうさはボブ・ディラン並、大物にだけ許された特権だ。
06EYE DEH A MI KNEE
ショーン・ポールの売りの一つ、テンポの速さで迫る曲。ジャマイカのアーティストというと、ゆったりめに裏リズムを楽しむ、というようなイメージがあるが、この曲にその要素は皆無。高速でリスナーをあおっていく。
07GIVE IT UP TO ME
ショーン・ポールの音楽は意外とマイナー・キーが多い、と気づくだろうか。和音シンセが入るタイミングもダンサーを困らせそうだ。明るさで押し切る、単なるフロア音楽ではない、鑑賞用のショーン・ポールがここにいる。
08YARDIE BONE
アルバム『ダッティ・ロック』収録のヒット曲「I'm still in love with you」に通じるサウンド。深みのあるウェイン・マーシャルの声が、ルーツをしっかり感じさせてくれるラガ・チューンに仕上がっている。
09NEVER GONNA BE THE SAME
アメリカン・ロックのようなコード進行で迫るミディアム・ラガ・チューン。ショーン・ポールが珍しく? メロディに充分留意して歌っている。曲ごとにプロデューサーを変えるスタイルが生んだ、新境地といえる。
10I'LL TAKE YOU THERE
ジャマイカに土着するコンセプトでも、世界に向けて音楽を発信していくショーン・ポールの特徴がよく出ている曲。隙間が絶妙なアメリカン・ラップと間髪入れず言葉が押し寄せるダンスホール・ラップが、絶妙に混在している。
11TEMPERATURE
無気味にチャートを上昇し、大ヒットとなった本曲。「体温」を意味するタイトルから激アツな曲かと思いきや、やけに冷静なショーン・ポールのライミングが聴ける。ヒットすることが分かっていたかのような余裕の佇まいだ。
12BREAKOUT
踊らないやつは逮捕! とでもいいたげなサイレン音があおるフロア讃歌。流れていかない腰の座ったリズムに早いフロウがのっていく。スウィング・アウト・シスターの同名異曲「ブレイクアウト」を想定していると置いていかれてしまう。
13HEAD TO TOE
キャッチーなフレーズが飛び回るポップ・ラガ・チューン。日本人には難解なリズムと暗めのメロディだが、おっとりボーイのたたずまいを忘れないショーン・ポールが歌うと、難しさも暗さも吹き飛んでしまう。
14CONNECTION
ミステリアスで官能的なメロディを携えて、ニーナ・スカイが強力にサポート。プエルトリコの双子姉妹がジャマイカンのショーン・ポールに熱い吐息で語りかける、カリブの夜の熱狂がラガ・ポップになったナンバー。
15STRAIGHT UP
タテノリとヨコノリが同居するフロア映えしそうなカリブ・サウンド。ハンド・クラップ+音階付きのパーカッションには踊らざるを得ないだろう。歌詞にはモニカ・ルインスキーとビル・クリントンまで登場する、上昇気流サウンド。
16ALL ON ME
タミー・チンのヴォーカルが美しいポップ作品。ほんの少し雰囲気が違うショーン・ポールが見え隠れするが、いつもの「ヨォヨォ」でこけてしまう。どんなディーヴァを前にしても、ボクトツな彼は変わらない、と再確認できる。
17CHANGE THE GAME
コントラバスのイントロが荘厳な世界へ誘うかと思いきや、チープ狙いのトラックへとなだれ込むディレイ・ラガ。端と端で鳴り続けるシンバルにどうにかなってしまいそうなサウンドだが、ここからも生トラックへの参戦をにおわせる。
18THE TRINITY
「誰も俺を止められない」宣言のシンプル・ダンスホール作品。時折スペイン語でも歌う? ショーン・ポールだが、あくまで本気作品ではジャマイカの公用語の英語。彼のジャマイカン・イングリッシュでないとこの曲は成立しえないアルバム・タイトル・ナンバー。
19FEEL ALRIGHT
ニーナ・スカイの「MOVE YOUR BODY」のヒット・フレーズを使ったフロア・トラック。「朝までフォール・オーライ」と繰り返されるフレーズは、アルバム『ザ・トリニティー』最後を飾る曲でも「まだまだだぜ」とクール・ダウンを許さない。