ミニ・レビュー
女だてらにローリング・ストーンズらに通じる、アーシーな感覚を追い求めて約10年。その間にヒットした11曲中8曲を含む初のベスト盤だ。キッド・ロックと共演した(11)は近年稀なる逸品。ただし、新曲として取り上げたキャット・スティーヴンスの(4)は創造性に欠ける。
ガイドコメント
グラミー賞など輝かしい経歴を持つシンガー・ソングライター、シェリル・クロウ。彼女の足跡が一望できる本べスト・アルバムには、新録「ファースト・カット・イズ・ザ・ディーペスト」も収録。
収録曲
01ALL I WANNA DO
滑らかなスライド・ギターの音色を特徴とするダンサブルなポップ・チューン。火曜の昼間にバーでビールを飲んでいる様子を綴ったなにげない歌だが、本曲のヒットをきっかけにシェリルは一気にスターダムにのし上がった。
02SOAK UP THE SUN
それまでカントリーやブルースのエッセンスが多かったシェリルが打ち出した、ロック・スピリットあふれるポップ・ナンバー。エッジの効いたメジャー・コードのメロディ・ラインは爽やかな元気を与えてくれる。
03MY FAVORITE MISTAKE
3rdアルバムのオープニングを飾ったミディアム・ポップ・ロック。本気で愛した恋人との別れをテーマにした失恋ソングで、バンド全体で醸し出す重めのグルーヴとシェリルの表情豊かなヴォーカルが悲しみを表現している。
04THE FIRST CUT IS THE DEEPEST
キャット・スティーヴンスのカヴァー。ソフトなアコギで始まるミディアム曲で、清涼感のあるストリングスやツボを抑えた打ち込みトラックなどが特徴的。オリジナルが1960年代の楽曲とは思えないほど新鮮な響きだ。
05EVERYDAY IS A WINDING ROAD
毎日の生活を曲がりくねった道になぞらえ綴った歌詞を、日々の“励まし役”として活用している女性も多かろう名曲。大陸的な広がりを持つメロディはもちろん、高低を絶妙に使い分ける歌い手としての魅力も堪能できる。
06LEAVING LAS VEGAS
本国アメリカでのデビュー・シングル曲。ラスヴェガスでの博打生活から足を洗う心情を描いた歌で、シンプルなフレーズを延々と繰り返すアコギとシェリルのパンチの効いた力強いロック・ヴォーカルが特徴的。
07STRONG ENOUGH
1stアルバム収録のフォーク・ナンバー。緩急の少ない比較的淡々とした展開だが、シェリルの情感豊かなヴォーカルが聴き手の心を充分に引き付けている。古き良きアメリカン・サウンドを彷彿とさせる独特の渋みが味わいどころ。
08LIGHT IN YOUR EYES
新録のオリジナル・ナンバー。スライド・ギターのシンプルなフレーズが印象的な軽快なフォーク・ロックで、聴き手の背中を押してくれるようなポジティヴな歌詞と軽やかに歌い上げるシェリルの洗練されたヴォーカルが魅力。
09IF IT MAKES YOU HAPPY
2ndアルバムからのシングル第1弾。ソリッドな8ビートが心地よい骨太ロックで、低めのメロディを抑え気味に歌うAメロとロックらしいシャウトを披露するエネルギッシュなフックの鮮やかなコントラストが魅力。
10RUN, BABY, RUN
1stアルバムに収録された8分の6拍子が基調のミディアム・バラード。エモーショナルにタイトルをリフレインするサビと心地よくスウィングするグルーヴが特徴的。1人の女性の生き様を描いた1篇の小説のような歌詞も見事。
11PICTURE
本国アメリカでは大ヒットを記録したキッド・ロックとのデュエット・ソング。カントリー・テイストあふれるフォーク・ロック・ナンバーで、前半はそれぞれのソロを、後半はユニゾンや美しいハーモニーを聴かせる。
12C'MON C'MON
4thアルバムのタイトル曲。本テイクはアイルランドの兄妹4人組グループ“コアーズ”との共演ヴァージョンで、彼らの透明感あふれるコーラスとシェリルの個性的な歌声が絶妙に融合し、唯一無二の世界を創造している。
13A CHANGE WOULD DO YOU GOOD
2ndアルバムに収録された怪し気な雰囲気のロック・ナンバー。バック・ビートを強調する打ち込みトラックと歯切れの良いシェリルのハスキー・ヴォイスが魅力。イギリスでは本曲の大ヒットでブレイクを果たした。
14HOME
滑らかなスライド・ギターとエレピが演出するしっとりとしたサウンドが印象的なミディアム・スロー・ナンバー。32歳の女性の後悔にも似た複雑な心情をメランコリックに歌い上げる、シェリルのかすれた歌声が実に魅力的。
15THERE GOES THE NEIGHBORHOOD
ライヴで人気の高いファンク・ロック・ナンバー。一流ミュージシャンが集結したブラス・セクションの分厚いサウンドやオクターヴ・ユニゾンによるサビ・メロディなどが特徴的。3rdアルバムからのシングル第2弾。
16I SHALL BELIEVE
1stアルバムに収録された静かなバラード・ナンバー。信じたいと願う女心をテーマにした大人のラブ・ソングで、パッド系シンセによるスムーズなバッキングが情感豊かなシェリルのヴォーカルを際立たせている。
17LET'S GET FREE
ミディアム・テンポのフォーク・ロック。イラク戦争を受けての平和ソングと位置づけられる1曲で、ネット上で公開された音源の初CD化。シェリルの伸びやかなヴォーカルと明解なメロディが際立つ好ナンバーだ。