ミニ・レビュー
低音部でのつぶやくような節回しなど独自の歌唱法をもつ人だが、このセカンド・アルバムはその個性が全面的に開花し、確立された感がある。井上陽水のカヴァーなどはその顕著な例だろう。サウンド面もエレガントなストリングス・アレンジが彼女によく合っている。
ガイドコメント
小林信吾、坂本昌之の両プロデューサーの強力なバックアップを得て、丹念に作り上げられた2ndアルバム。話題のミュージカル『十戒』のテーマ曲も収録。
収録曲
01BLESSING 祝福 (Album Mix)
スペクタクル・ミュージカル『十戒』テーマ・ソング&TOYOTA「WISH」CMソングと、ダブル・タイアップのついた5thシングル。壮大なホーン・アレンジに包み込まれるようなサウンドが魅力だ。そんなバック・トラックにのせて歌う伸びやかな彼女の歌声も安心感があって◎。天性の倍音をもったヴォーカルは聴いているだけで気持ちいい。
02NIJI NO YOKAN NO YOKAN
03虹の予感
DoCoMoの携帯電話「N506i」CMソングとなった4thシングル。ストリングスによる繊細なイントロからはじまるナンバーで、作詞・作曲は平原綾香自身が担当している。オクターヴの上下でダブルで歌っているサビの響きが耳に心地よい。ストリングスをからめたウエストコースト調のアレンジも新鮮だ。
04夢の種
『M-ON! Harmony with the Earth ID』テーマ・ソング。宗次郎のオカリナをフィーチャリングしたミディアム・スロー・ナンバーで、全面を彩るストリングスが感動的。繊細なパートから、壮大な広がりを感じさせるサビまで、スケールの大きい仕上がりが印象的だ。彼女の柔らかなヴォーカルも心に残る。
05i
“自分”と向き合い“自分”と高めあっていけたら……と、怒涛の成長過程にある自身の心情を自作のリリックとメロディに託す、スケール感あふれるナンバー。シリアスなムードが漂うバラード調からロック・スピリットあふれる気迫のクライマックスまで、一筋縄ではいかないドラマティックな展開に、弱冠20歳の才能が炸裂している。
06Smile
アニメ『ネポス・ナポス』エンディング・テーマにもなっていたミディアム・スロー・ナンバー。チェレスタやフルート、ホーンなどを贅沢にフィーチャーしたアレンジで、優美なサウンドが安らぎを呼び覚ます。大事な人にいつも笑っていてほしいと歌う歌詞は、平原綾香自身が担当。3分ほどの比較的短いナンバーだが、聴き応えは十分。
07歌う風
NHK総合テレビ『スタジオパークからこんにちは』のテーマ・ソングとして、日本全国、さらには海外にまで浸透しているおなじみのナンバー。未来の夢に向かって手を伸ばそうと歌う詞は、平原綾香自身が担当。全体的にシンプルなアレンジが、彼女の豊かなヴォーカリゼーションを引き立てている。
08心もよう
井上陽水の大ヒット曲のカヴァー。フォーク調だった原曲と比べて、キーボードとアコースティック・ギターをフィーチャーした、ちょっとジャジィで都会的なアレンジに生まれ変わっている。メジャー・コードの楽曲が多い平原だが、こういうマイナーな曲も彼女のヴォーカルの新たな一面を引き出していてGOOD。
09君といる時間の中で
2004年発売の3rdシングル。小林信吾作曲による表情豊かなメロディに、平原綾香自身の作詞による、一秒一秒を大切に生きたいと願う心を綴った歌詞が乗った、大空に羽ばたいていきそうな力のあるナンバー。
10私を呼んで
作詞・作曲ともに平原綾香自身によるスロー・ナンバー。叙情的かつ壮大なストリングスのイントロではじまる楽曲で、ほとんどエレピのみをバックに歌い上げるシンプルな仕上がり。しかし、豊かな聴後感があるのは、彼女のヴォーカルの饒舌さゆえだろう。息づかいすら近くに感じられるようなサウンド構成も見事。
11願い
作詞を平原自身が担当している楽曲。いつまでも変わらぬ“願い”を歌った詞は、幻想的かつ不偏的な言葉でつづられたロマンティックなもの。三拍子で構成されているスロー・ナンバーで、ピアノとストリングスを前面にフィーチャーしたサウンドが彼女らしい。アウトロで静かに流れる彼女のブレスが安らぎを誘う。
12Hello Again、JoJo
ディズニーのアニメ制作者、ハンス・バッハーが生み出したドラゴン“JoJo”をテーマにした曲。2004年10〜11月にNHK『みんなのうた』で放送された。優しさと愛しさにあふれ、ゆったりとしたナンバー。
13The Voice (“Jupiter”English Version)
ホルストの組曲「惑星」の「木星」に日本語詞をつけた、2003年12月発表のデビュー曲の英語ヴァージョン。豊かに響く低音域から繊細に転がるような高音域まで、彼女のヴォーカルの魅力が堪能できる壮大なナンバーに仕上がっている。英語の発音も抜群で、英語独特の流れるようなリズム感が、メロディアスな楽曲に彩りを添えている。