ミニ・レビュー
マレーシア生まれ、オーストラリア育ち、NY拠点、myspaceから発掘されたシンガーのデビュー作。思い切りのいいパワフルな歌いっぷりが魅力で、 そのぶん、アップ・テンポがいい。特にダンスホール・スタイルはファーギー並みの大胆さと奔放さが爽快。
ガイドコメント
ニューヨークを拠点に活動する、オーストラリア育ちのR&Bシンガー、シャネルの2007年8月発表のアルバム。“当たり前の日常”をエキゾティックなR&Bサウンドに乗せて歌う表現力に、誰もが虜になってしまいそう。
収録曲
01I FELL IN LOVE WITH THE DJ
空前の着うたダウンロード数を記録し、2007年に日本でヒットした洋楽の代表ともいえる曲。ダンスホール・サウンドでありながら、誰もが楽しめるポップ・ソングになっている。いかにも女の子ウケしそうな仕掛けがたくさん施されている、元気サウンドだ。
02CLUB JUMPIN'
オーストラリアなまりの英語で歌われるフロウが新鮮なダンスホール・ポップ。リズム・ヒットが抜けた部分でのなまめかしいヴォーカルにシャネルの歌唱力の懐の深さを感じる。ところどころに出るオリエンタルな空気も斬新で好感が持てる。
03TEACH ME HOW TO DANCE
2006、7年とアメリカのトレンドになっているオリエンタルR&Bだ。プッシー・キャット・ドールズが得意とするようなクールなトラックのわりにリリックが子供っぽいが、これも女の子らしさの演出としては成功だろう。
04HURRY UP
マレーシア生まれオーストラリア育ちの女子がアメリカ進出をうかがったキャッチーな曲。稀代のヒット・メイカーであるショーン・ギャレットのプロデュースだけに音はかなり派手。激しい腰つきでベリー・ダンスをするのにぴったりなビートだ。
05RIGHT BACK
70年代産のメロウ・サウンドに21世紀のフロウがのる艶っぽいR&B。エンディングのスキャットは初々しく、王道のソウルフルな歌唱でないところが新鮮で良い。“マイスペース”シンデレラは、きっちりR&Bもこなすのだ。
06MANTAKER
自らトラック制作もこなすシャネルならではの曲。ハウス・レア・グルーヴで名高いM.A.A.R.S.の「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」のリズムをいただいたミクスチャー・サウンドだ。プリンスの影響を色濃く感じるアレンジも面白い。
07WHEN WE WILL MEET AGAIN
スティール・ギターが切ないチカーノ・バラード。マレーシア、インド、オランダにルーツを持つシャネルのヴォーカル・アプローチが白人っぽくて興味深い。ワールド・ミュージックの要素がごった煮された雰囲気に、ジャンル分けがくだらなく思えてくる。
08LOOKIN'
ショーン・ギャレットがアッシャーの「Yeah!」で使った手法を流用して、シャネルにエネルギーを与えている曲。女性ヴォーカリストをさらに強力にするのには、このクールなサウンドはもってこい。少し変態的なアレンジも加えつつ男をぶちのめす。
09STICK WITH ME
ダンスホールのリズムの上で乱舞するのは、日本人コンシャスの切ないヨーロピアン・ポップス。そこにオリエンタルなテイストを絶妙にまぶしていくシャネルならではのパフォーマンスは、オリジナリティにあふれている。
10SUMMER JAM
ガレージ・ロック・バンド、ブルース・マグースの「Can't get enough of you」のフレーズをいただいたダビーなミクスチャーR&B。派手なリズム・ブレイクのリズム・ソングかと思いきや、歌メロも美しく二度おいしい曲。
11MY PLEDGE
R&Bディーヴァが歌うにふさわしい、美しい横揺れバラード。こんなにシンプルなリリックがあっていいのだろうか!? というぐらい簡素なラヴ・ソングだが、ここにエンターテインメントの原点がある。頭の中が解毒されていく。
122ND NATURE
ここにあるのはスティール・ギターと抑えめのリズム、そしてパワフルなシャネルの歌唱。シャネルの歌を聴かせるために施されたアレンジが彼女の全貌を明らかにする。やさしく、強く、緩急に富んだ七変化のパフォーマンスが楽しい。
13I CAN'T MAKE YOU LOVE ME
シャネルが渾身のヴォーカル・パフォーマンスで迫るア・カペラのインタールード。“あなたを思って 私のものなんだってフリをするの”。ふられた女の情念がうずまくリリックに思わずたじろいでしまうが、女子からは共感の嵐? かも。
14I FELL IN LOVE WITH THE DJ
ジャマイカン・リミックスならDJシャムにご登場願うしかないだろう。日本の女子をとりこにしたダンスホール・サウンドに濃厚なスパイスをまぶしたら、どうなる? といった感じのリミックスだ。女子なら魔法のフレーズ“フッフッフ〜”をともに歌うべし!!
15I GUESS
タイトルの“アイ・ゲス”を吐息のように3回繰り返すサビに、女力を感じる強い曲。インテリジェントなエレピのフレーズとベース・ラインの絡みが、なんとも狂おしい。メロウで落ち着いたサウンドは、この上なく洗練されている。
16CERTAIN THINGS
中音域のピアノに絡みつくリズム・ヒットが心地良く響く、古いタイプのR&Bバラード。無駄を一切排したアレンジだが、ひなびたホーンが顔を出すタイミングが心憎い。抑揚が豊かな導入部や力強い歌唱で迫るサビは、迫真の出来だ。
17OUTRO
アウトロといっても、シャネルのアルバム『シャネル』の締めコメントの後に独立したバラードが1曲横たわっている。琴のサンプリング・フレーズがしっとりと響く美しい曲だ。シャネルの抑えめのヴォーカルがとても新鮮。