ミニ・レビュー
スウェーデンのプロデュース・チーム“Burning Chicken”との共同プロデュースによる9枚目のフル・アルバム。男性的ともいえる力強いビートを軸にしたロック・サウンドのなかで切なくもきらびやかなメロディが舞う。いつになくポジティヴなリリックも、きわめて魅力的。
ガイドコメント
ベスト盤を経て放たれる、BONNIE PINKの9枚目のオリジナル・アルバム。フジテレビ系ドラマ『私たちの教科書』の主題歌に起用された「Water Me」をはじめ、話題のタイアップ・ナンバーが満載。清涼感漂うポップスが心ゆくまで楽しめる。
収録曲
01Gimme A Beat
ロック的な強さとクラブ・ミュージックの高揚感、そして、60年代ソウルを思わせるようなシックなメロディ。まったく新しい感覚を呼び起こす、独創的にして斬新なダンス・トラック。2007年型のBONNIE PINKのサウンドがここに。
02Broken hearts、city lights and me just thinking out loud
アタック感の強いビートがリスナーの感情をハッと覚醒させる、アルバム『Thinking Out Loud』のオープニング・ナンバー。恋のはじまりの高揚感をストレートに描いた、サビのフレーズとリンクしたストリングスも、アッパーな気分をグイグイと引っ張ってくれる。
03Burning Inside
軽やかに跳ねるバンド・サウンドと“どんなときも心のなかの火は絶やさないで”というメッセージが美しくシンクロ。意外な展開を見せるメロディとストレンジなギター・アレンジも含め、オルタナティヴ感もたっぷり。
04慰みブルー
タイトルどおり、ブルーにこんがらがった状態をストレートに表現した、憂鬱な空気を持つミディアム・チューン。シンプルだが先鋭的な手触りのあるサウンド・メイクと麗しいストリングスの組み合わせも、かなりユニーク。
05Imagination
ゴリゴリに歪んだベースからスタートする、極太かつダイナミック、さらにアグレッシヴなビートを中心にしたヘヴィ・ロック・チューン。どこか男っぽいヴォーカルから投げかけられるメッセージは、“想像すること”の大切さだ。
06A Perfect Sky (Philharmonic Flava)
BONNIE PINKの大ブレイクを導いた資生堂「アネッサ」のCM使用ヒット曲を、本格的なストリングスをフィーチャーしてアレンジ。重厚にしてクラシカルなサウンドのなかで伝わるのは、彼女が紡ぎ出すメロディの素晴らしさだ。
07Lullaby
セッション風の雰囲気のなかで披露される(おそらく一発録りと思われる)ビートルズ・ライクなミディアム・バラード。物事はなるようにしかならないから、もうちょっと寝たほうがいいよ、という詞に、思わずほっとさせられる。
08坂道
基本的にはシャッフル系のビートだが、独特の“揺れ”を感じさせるエフェクトを施すことで、きわめて斬新なロック・ミュージックに変化。プロデュース・チーム“Burning Chicken”のセンスの良さを感じさせるナンバーだ。
09Water Me
“乾いた私に水をちょうだい”と切実なメッセージを掲げたバラード。生々しい感情を響かせるメロディとハイファイな感触のサウンド・メイクがガッチリと溶け合い、きわめて個性的な雰囲気を描き出している。
10Catch the Sun
シンプルでキュートなギター・リフが導くのは、“くよくよしてもしょうがない。泣いたあとは、さあ、太陽を捕まえよう”というポジティヴなリリック。彼女のポップ・サイドをわかりやすく伝えるメロディも高品質なナンバーだ。
11Chances Are
英詞によるアコースティック・バラード。70年代の米シンガー・ソングライターを思わせる洗練されたメロディ・ラインと、愛する人に対する葛藤まじりの感情をテーマにした詞が、しっかりと一体化している。
12Anything For You
ざっくりと空間を切り裂くギター・サウンド、骨太かつ壮大なリズム・アレンジに刺激的なエレクトロ感をプラス。いつも新しいサウンドを模索してきた彼女の、2007年のモードを伝えるアグレッシヴなポップ・チューン。