ミニ・レビュー
元Hi-STANDARDの横山健のソロ3作目。ソロといってもライヴの固定メンバーで作られ、ハジけるバンド感は興奮もの。楽曲も過去3作の中ではポップ性が一番高く、キュンキュンするようなメロディの嵐。それが疾走感とパンクの痛快さを持ってさく裂。
ガイドコメント
Ken Yokoyamaの3作目となるアルバム。“三度目の正直”と名付けられた本作には、ポップなパンク・チューンからカヴァー・ソング、アコースティック・ナンバーまでを収録。それぞれテイストは違えど、強く心に響く楽曲ばかりだ。
収録曲
01Why
お前と比べられるヤツなんて誰もいない。お前がいなければ何処へも行けやしないさ。ストレートな言葉と泣きのメロディで瞬殺するアルバム『THIRD TIME'S A CHARM』のオープナー。降り注ぐビートの嵐に爆走ギター、歌うベースがキッズのハートを連打する。
02Not Fooling Anyone
メロディアスなラインをなぞりつつ心地よく疾走していくギターに乗せ、ハスキー・ヴォイスで歌い上げるミディアム・チューン。人間が知らず知らずに被ってしまう別の顔について攻め立てる詞だが、愛がちらほらと見え隠れしている。
03Go With The Flow
人生はクレジット・カードのように操れる? いや、流れに任せるのさ。金持ちだろうと貧乏だろうと、自分の運命を楽しめばいい。ピュアなメロディにKEN YOKOYAMA的な人生哲学が凝縮された、アッパー・メロコア・チューン。
04Dry Spell
曲が書けない!? KEN YOKOYAMAを襲う最大のピンチ! スランプさえも歌にしてしまうパンク精神は、あっぱれ。サビでのコール&レスポンスに気合が入りそうな、ライヴ必須のメロディック・パンク・ナンバー。
05That Girl
One more fxxx you! 悪ガキ風のカウントで始まるパンク・ナンバーは、永遠に忘れられない“あの娘”の物語。落ち着きなく走り回るティーンエイジ・ライクなギターと泣きのメロディで綴る、ホロ苦い童貞喪失グラフィティだ。
06Happy Days
オレの親がティーンエイジャーだった頃に生きていたかったなあ。オールディーズ・テイストのドゥー・ワップ・コーラスとフィンガー・ティップスのイントロで始まるミディアム・パンク・ナンバー。直球ロックンロールなメロディが逆に新鮮な一曲。
07Ricky Punks 2 (The Lamepire Strikes Back)
2005年発表のシングル『How Many More Times』に収録の「Ricky Punks」の続編的なナンバー。相変わらずスタイルばかり真似ているRickyの似非パンクスぶりに、怒り沸騰。真のパンクスの誇りが凝縮された1分15秒だ。
08Movin' On
かつての友達が近づいては去り、オレたちの約束は手から漏れる水のようにこぼれ落ちてしまった。でも、これが成長するってことなんだ。自分に言い聞かせるかのごとく、突き放すように冷たく歌い放つ、哀しみと痛みにあふれたスラッシュ・パンク。
09Father's Arms
“お前はオレのすべてなんだ”ざっくりしたアコギの弾き語りで、息子への想いを綴ったアコースティック・バラード。“父親の腕は子供を守るためにこそある”という一言に、大きな愛があふれている。バックで鳴るオルガンの音色にも胸を打たれる。
10Daydream Believer
モンキーズが1968年に発表したヒット・ナンバーをKEN YOKOYAMA流にカヴァー。陽気なブルース調で始まり、サビではおなじみのジャキジャキのロックに。オリジナルよりアッパーで、ほろ苦いパンキッシュ・ロックに仕上がっている。
11Do It Again
みんな、バンドで金を稼げると思ってる。けど、近道も秘密もないんだぜ。誰もライヴを見に来なくても、バンド内で大喧嘩しても、もう1回やってみろ。バンド界のカリスマからの、後進のキッズたちに向けた叱咤激励のメロディック・パンク。
12Fuck Up、Fuck Up
ベースのSergeがリード・ヴォーカルを務めるミッド〜アッパー・メロコア・チューン。日本盤とはいえ“4 letter words”のオンパレードと“fuck up, fuck up”の連呼は、インディ・レーベルならでは。
13Cheap Shot
もう怖くないさ。お前に裏切られた傷のおかげで、こんなに強くなったんだ。“悲しい卑劣な一撃”を放ったかつての友に毅然と別れを告げる、メロディックなスラッシュ・パンク・チューン。ヴァースごとにすべて韻を踏む、英詞の巧みさはさすがだ。
14Somewhere Over The Rainbow (INSTRUMENTAL)
映画『オズの魔法使い』の主題歌として1940年に発表されたスタンダード・ナンバーをインストゥルメンタルでカヴァー。エレクトリック・ギター、オルガン、控えめなリズムのみのシンプルなアレンジで、しっとりゆったりと聴かせる。
15I Love
オレは愛してる。心から理解してくれる家族と友人、そして自分がプレイする音楽を。グルーヴィなギターに乗せて、率直な気持ちを綴った心温まるロック・チューン。自分を支えてくれる人へのピュアな愛と感謝に満ちたアルバム『THIRD TIME'S A CHARM』のクローザーだ。