ミニ・レビュー
時代外れの大衆メタルの熱狂で世紀替わりの時期を彩ったバンドが、2003年4月の解散発表から4ヵ月を経て“最後のスタジオ・レコーディング・アルバム”と銘打ち発表したアウトテイク集。97年以降のデモ音源から採られた荒々しいメタル曲ばかり。彼らの鋼鉄魂は本物だった。
ガイドコメント
先発のベストに続き、解散アイテム第2弾が登場。活動中の5年間に制作された膨大な音源から、未発表曲だけを12曲収録。脱退したSussy、Sypanの楽曲も含まれるファン垂涎の1枚。
収録曲
01仮面夫婦
アウトテイクばかりを集めたアルバム『To The Future Tracks』のオープニング・トラック。“カメン〜”と一瞬勇ましく感じられるフレーズが聴けるのだが、実は仮面夫婦の歌というところがミソ。シングル・カットされていても何ら不思議じゃないほど完成度の高いナンバーだ。
02オレンジジュース
「仮面夫婦」同様、完成度の高いトラック。ミドルテンポのヘヴィなサウンドに、比較的ポップな味付けで、情景描写を交えつつ、女の子との恋愛模様やそれに伴うエクスタシーなど、男子ならではのピュアな気分の高まりを包み隠さず表現した濃いナンバー。
03刹那 (インストゥルメンタル)
『To The Future Tracks』に収録のインストゥルメンタルで、歌入れ前のバック・トラックとも想像できる作品。この後に歌詞を書き、ヴォーカル録りをして完成する予定だったのかも。そう思うと、歌入りの完成形を聴いてみたいという欲求に駆られてしまう、ある意味罪作りなトラックだ。
04エレクトリックアンマーPart1
「刹那」と同様、その後発展を遂げて、歌モノ曲として完成する前段階のトラックと思えるナンバー。とくにサビのフレーズが印象に残る作品で、このままで完成といっても差し支えないほどのポテンシャルがある。タイトルにある“Part 1”が何を意味しているのかも興味深いところだ。
05ナム
非常に重厚なサウンドによるナンバー。仮タイトルが「ピーターパンはまだこない」だったようで、毎日終電まで残業している悲しきサラリーマンの心の叫びが表現されている。デモ・ヴァージョンだけに完成の一歩手前だが、バンドの演奏はしっかりとしており、完成に近い仕上がりを感じさせる。
06リサイクル (P.V.バージョン)
ベスト・アルバム『マシンガンズの集い』の初回限定盤のみに収録されていた曲のP.V.ヴァージョン。「ゴミの分別は確かにめんどうくさいけど、ゴミはキチンと分けて捨てて、リサイクルに協力しよう」という、生活感もあって真面目なメッセージ・ソング(?)だ。ベスト盤のヴァージョンと聴き比べてみるもよし。
07Rome
クールなギター・リフで幕を開ける、SEX MACHINEGUNSにしてはちょっと異色の、抑えめなアレンジが印象的な作品。「ローマは一日にして成らず」という有名な格言にあるとおり、誰もが心のなかに秘めているローマ(=目標)に向かって焦らず歩いていこう、と歌われるポジティヴな応援ソングだ。
08Hell Rider
歌詞は「トレビアン、エレガンス、エチケット、素敵です。ジェントルマン」だけで、あとはひたすら激しい演奏を展開するトラック。たったこれだけの歌詞にもかかわらず、“Hell Rider”のことを見事に表現しているのだからスゴイ。聴きながら思わずヘッド・バンギングしてしまいそうな一曲だ。
09ガードマン
深夜の工事現場で交通整理のアルバイトをするガードマンの心情を綴ったナンバー。曲調はかなり激しいが、それがガードマンの胸の内を見事に表現していて、痛快このうえない。もしかしたら、メンバーのなかにガードマンのアルバイト経験者がいるのかもしれない……なんていう想像も。
10主婦の性
歌詞のユニークさも魅力のひとつであるSEX MACHINEGUNSが、まさに彼らの個性を炸裂させたナンバー。どんなことがあっても、スーパーの特売品のことだけは決して忘れない主婦の悲しい性について歌う。デパートのバーゲン・セールをテーマにした「Bargain Sale」同様、意外なアプローチ。
11想い出の缶詰
アルバム『To The Future Tracks』の締めくくりにふさわしいバラード・ナンバー。いつになく真面目に、センチメンタルに、切々と歌われる曲だが、こんなSEX MACHINEGUNSも実に魅力的だ。イントロとエンディングの美しいピアノ・ソロと、間奏でドラマティックに盛り上がるギター・ソロとのコントラストも素晴らしい。
12Operatin Tiger
99年のアルバム『MADE IN JAPAN』収録曲のデモ・ヴァージョンで、97年に録音されたもの。このヴァージョンは、おなじみのSPEED STAR SYPAN JOEがドラムを叩いているようで、彼ららしい破天荒さが際立っている。マシンガンズ・ワールドのコアがこのサウンドに溶け込んでいるといえそうなナンバー。