ミニ・レビュー
音楽性のみならず、斬新かつユニークなビデオ・クリップも話題を呼ぶ4人組の2作目。ニューウェイヴやブラック・ミュージック、エレクトロニカなどをミックスした独特の浮遊感のある音楽性はそのままに、よりポップ指向を打ち出している。
ガイドコメント
ロック・バンド、APOGEEの2ndアルバム。メンバー4人の個性を活かして多彩な音楽ジャンルの要素をちりばめた、ハイブリッドなロック・ポップ作品に仕上がっている。独特な浮遊感と歪みを持つサウンドは中毒性あり。
収録曲
01Touch in Light
アルバム『Touch in Light』のオープニングを飾るタイトル・ナンバー。2分足らずの小品ながら、APOGEEならではのシンセサイザーにシャープなギターが絡むスペイシーかつスリリングなサウンドは、後に続く楽曲への期待感をいやが上にも盛り上げてくれる。
02ESCAPE
閉塞感に満ちた世界の中であがき、この場から逃げ出したい。そんな焦燥感や強迫観念を抱えたAPOGEEらしい表現による詞と小気味いいビートを刻むニューウェイヴ風サウンドが印象的な、アグレッシヴなナンバー。
03アヒル
最新のテクノロジーを使ったプロモ・ビデオも話題になった曲。シンセサイザーの音色もギター・リフもレトロな感じだが、少しも古臭くなく、むしろ新鮮に響いてくる。いつかは白鳥になりたい……そんな痛切な思いを綴っている。
04Spacy Blues
タイトルがすべてを物語っていると思わずにはいられない。ファンキーなリズムとスペイシーなシンセサイザー、シャープなカッティング・ギターに浮遊感のある永野亮のヴォーカルと、これらが一切の無駄なく結びついたアップ・チューンだ。
05The Sniper
子供たちの無邪気な声に導かれて始まるメロウなミディアム・ナンバー。ノスタルジックな雰囲気を醸しつつミステリアスな要素もはらんだ、夢とも現実ともつかない不思議な情景が、柔らかなサウンドに乗って優しく歌われる。
06???What is the life???
日常の何気ない生活の中、ふとした瞬間に“人生とは、生きるとは何か”を考えてしまうことがある。そんな哲学的な示唆がうかがえる詞が、シンセイザーによる優美なオーケストレーション・サウンドをバックに歌われている。
07Tell Me Why
武骨なリフを繰り出すギターやチープさを演出したシンセイザーの音色が、ファンカデリックあたりのファンク・ロックを思わせるナンバー。シニカルながらもロマンティックな詞を歌う、永野亮の活き活きとしたヴォーカルが魅力だ。
08Rain Rain Rain
デビュー当時のデュラン・デュランを彷彿とさせる、ファンキーなリズムやギター・リフ、シンセ・サウンド。それらをバックにした永野亮の歌声が軽やかに舞い踊る、80年代ニューウェイヴ風のダンサブルなポップ・ナンバー。
09Drop
雨雲に覆われた暗い街並みとそれを眺める恋人たちの情景がまぶたの裏に浮かんでくるような、重く沈みこんでいくメロディのスロー・ナンバー。これまでになくアダルトな味わいをたたえたサウンドやヴォーカルが印象的。
10Who's your Enemy?
明確な敵が見えない混迷した社会状況をパラノイアック(逆説的)かつスキゾフレニック(分裂的)な視点で映し出した詞が、ズシッと心に響く。ヘヴィな内容とコントラストをなすようなシンセサイザーが、カラフルなサウンドを奏でるナンバー。
11Transparent
シンセサイザーのファンタジックかつスペイシーな音色とアコースティック・ギターの乾いた響きが、SF風でありながら温もりのある音空間を作り出すスロー・ナンバー。丁寧にじっくりと歌い込んだ柔らかなヴォーカルもグッド。
12Just a Seeker's Song
自分が本当に探しているのは何か? 過去の思い出か、明日の夢か、それとも……。何かを求めさまよう飢餓感にも似た今を生きる心情を、ギター・ポップとエレクトロニカを融合させたサウンドに乗せて歌い綴ったナンバー。
13Creatures (What Are We?)
ニューウェイヴ・テイストをまぶしたミディアム調のポップ・ナンバー。永野亮の優しいヴォーカルと子供たちのピュアなコーラスが心地いい歌世界を紡ぎ出している。聴き進むうちに柔らかな空気に包まれ、和やかな思いに満たされるよう。