ミニ・レビュー
ド派手なアレンジのネオフォークあり、寸劇っぽいはっちゃけ曲あり、得意のバラードあり……13枚目のアルバムはタイトルどおり、普遍的で変わらないものをテーマにゆずの王道が炸裂! なんだかんだで、寺岡呼人と制作した「夕焼け雲」にホッとしてしまう。年輪が滲む「終わりの歌」もいい。
ガイドコメント
前作『新世界』から約2年ぶりの13thアルバム。サッポロビールのCM曲「ポケット」や『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語〜サボテン大襲撃〜』の主題歌「OLA!!」などを収録している。
収録曲
01OPENING CEREMONY
その名のとおり、13枚目のアルバム『TOWA』のオープニングを飾る小品。鐘の音からホーンによる勇壮なファンファーレへと展開。30秒ほどの短いトラックながら、ファンタジックな世界観でリスナーのワクワクを増幅させている。
02終わらない歌 (Album Version)
前山田健一との共作で制作された43枚目のシングル。村田陽一がアレンジを手がけたホーンセクションの華やかなファンファーレをはじめ、マーチングバンドのような軽快かつカラフルなサウンドが魅力。平和な世界への思いを高らかに歌い上げる。
03かける
配信限定シングルとして発表された日本生命CMソング。ビートメイクにtofubeatsを、ギター&編曲にTaiyo Dokiを招き、生命力に満ちた躍動感あるサウンドを構築。“描け”“生きろ”と繰り返すサビの突き抜けた爽快感が印象的。
04みそら
ピアノとアコースティック・ギター、ストリングスを中心とした柔らかで温かい肌触りのサウンドが感動的なミディアム・バラード。二人ならどんな困難も乗り越えていける、美しい空を見つめながら、希望と幸せに満ちた未来に思いを馳せる。
05ポケット
サッポロビールのCMソングとして配信で発表されたポップ・チューン。冷たい風が吹くなか、ポケットの中で握り締めた君の手。そこからスケールの大きな世界を描く岩沢の詞が秀逸。“疾走感のあるバラード”といえる編曲を施した蔦谷好位置の手腕も光る。
06た Ri ナ ぃ
ギャーンと鳴るエレキギターやエフェクトをかけたヴォーカルなど、攻めのサウンドで進むロック・チューン。次々と流行を消費していく社会や、スマホやSNSの依存に対する皮肉をたっぷりと込めながら、挑発的なヴォーカルで問題提起する姿勢がクール。
07いっぱい
ポロポロと鳴らすアコースティック・ギターと北川の手によるマンドリンがどこか懐かしいサウンドスケープを描くミディアム・アップのポップ・チューン。大切な人になかなか会えない日々のなか、胸いっぱいの感謝と希望に満ちた未来を約束する温かなラヴ・ソングだ。
08いつもの病気
“初期のゆず”を思わせるパーカッションとアコギだけのシンプルなアレンジによるナンバー。心地よい耳鳴りと不快指数……なにかの象徴とも思える“いつもの病気”を描きながら、言葉遊びのように自分らしく生きることの大切さを挟むセンスがたまらない。
09OLA!!
映画『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』主題歌となった42枚目のシングル。タイトルのとおり、マリンバやヴァイオリンを取り入れたラテン風の味付けが楽しい。忙しいアレンジでテクニカルな一面を覗かせながら、サビはしっかりとポップ。
10Interlude〜Borderless Ticket〜
13枚目のアルバム『TOWA』の中盤に配された2分弱のインタールード。マンドリンなどを配した悲しげなサウンドと映画をサンプリングしたようなセリフに続き、断片的な言葉とともにストーリーが展開。じんわりとした余韻を残す。
11TOWA
配信シングルとして発表されたアッパーなナンバー。ブーピーなベースを備えたリズムにパイプオルガンやダルシマーなどユニークな楽器で彩りを添えた“ゆず風EDM”ともいえるアレンジが新鮮。スケールの大きな言葉とともに、未来へ向けた決意を高らかに歌う。
12夕焼け雲
フルートを取り入れた柔らかいサウンドが心地よく響くミディアム・アップのポップ・チューン。言葉遊びにも似たフレーズを並べながら、不意に核心を突くような表現を入れる岩沢らしい歌詞にニヤリ。伸びやかなメロディで、二人のハーモニーをたっぷり楽しめる。
13二人三脚 (Album Session)
2015年のライヴ“二人参客”のテーマ曲として制作されたナンバーを、バンド・サウンドにリアレンジした“Album Session”ヴァージョン。明日に向けて新たに歩を進めるドラマティックなストーリーに呼応する、力強いメロディに勇気をもらえる。
14終わりの歌
二人のギターと声、そしてハーモニカだけで構成、すぐ近くで歌っているような生の質感に近い録音が魅力的なナンバー。あの日君が足を止めてくれたから物語は始まった……デビュー前の彼らの姿を思わせる描写とともに、感謝の気持ちをじんわりと歌い上げる。