ミニ・レビュー
2013年の1月まで5ヵ月間で計3枚のアルバムを発表するグリーン・デイの、その3部作からの第1弾。どの曲もキャッチーでメロディックなのに驚かされるが、これだけ多彩でポップな曲をコンスタントに生み出せるのが彼らの本当の凄さだ。20年近くも活動を続けてなお、フレッシュでパワフルな彼らは特別だ。
ガイドコメント
前作『21世紀のブレイクダウン』に続く、『ウノ!』『ドス!』『トレ!』の3部作からの第1弾アルバム。原点回帰ともいえる疾走チューンからディスコ調の曲まで、期待を裏切らないポジティヴな作品となっている。
収録曲
01NUCLEAR FAMILY
かき鳴らされるギターとストレートなビートで駆け抜ける爽快なパンク・ナンバー。ポップなサウンドに乗せて“メリー・ゴーランドのように世界に乗って楽しむんだ”という歌う冒頭とは裏腹に、次々と攻撃的な言葉が並ぶギャップが刺激的。
02STAY THE NIGHT
“今夜は泊まると言って”と歌うキャッチーなサビを中心に、ポップなサウンドを前面に押し出したナンバー。胸が苦しくなるような青春時代の恋模様を綴る。やるせない思いが募っていくように、徐々に熱を帯びていくアレンジがハマっている。
03CARPE DIEM
ラテン語で“今を楽しめ”という意味を持つ言葉を冠したミディアム。何も失うものはないんだから導火線を爆発させろと力強く背中を押してくれるが、サビのメロディとコーラスはむしろ温かみすら感じさせる美しさを持っている。
04LET YOURSELF GO
切れ味鋭いサウンドと疾走感あるビートで突き進む高速パンク・チューン。心地よいコーラス・ワークで“やりたいようにやれ”と煽るサビ直前のブレイクから、やりたいようにフロアへとダイヴするオーディエンスが目に浮かぶようだ。
05KILL THE DJ
グリーン・デイにとっては珍しい、ファンクっぽい縦ノリのビートを持った4つ打ちのダンス・ナンバー。吐き捨てるように“Someone Kill the DJ”と繰り返す曲でダンサブルなビートを使うセンスがニクい。
06FELL FOR YOU
シンプルなドラムのみのビートから、とびきりスウィートなギターのリフが飛び込んでくるイントロが印象的なロック・チューン。夢に現れた芸術品のような君に心を奪われ、どうすることもできないまま恋に落ちた男の胸のうちを歌い上げる。
07LOSS OF CONTROL
フロア・タムをドコドコと回すシリアスな導入から、シャウトとともに一気に爆発する爽快なパンク・チューン。恋に落ちてくれるはずの彼女の残酷な姿に戸惑い、“人生は最低のろくでなし”と吐き捨てるように歌う姿が泣ける。
08TROUBLEMAKER
心臓発作を起こすほどにセクシーな悪女を前に、“トラブルメイカーになりたいんだ”とうわ言のように繰り返すロック・ナンバー。クラップを交えたシンプルなビートとリフが悪ガキっぽさを演出。キワドイ言葉を並べた歌詞も楽しい。
09ANGEL BLUE
キャッチーなサビと爽快なサウンドで駆け抜けるパワー・ポップ・チューン。決して難しいプレイやギミックを施しているわけではないが、バンド全体で前へと運ぶ推進力とグルーヴ感はやはり出色。バンドのカッコよさを再確認させられる。
10SWEET 16
青臭いほどに甘いコード・ワークとメロディが散りばめられたロック・チューン。比較的クリーンに近いギターの音色が全編にわたってうまく作用しており、決して戻ることのできない青春時代を一瞬で思い起こさせるギター・ソロは感涙もの。
11RUSTY JAMES
メジャーからマイナーへと展開する王道のサビをはじめ、キッズのツボを完璧に心得たコード・ワークで攻めるナンバー。もちろんそこに乗せるメロディも、甘さと力強さを兼ね備えた秀逸の出来。メロディをなぞるギター・ソロもニクい。
12OH LOVE
ギターと歌のみで幕を開けるスケールの大きなナンバー。力強いビートを伴っての中盤以降はドラマティックなアレンジを次々と盛り込み、歌詞の持つ物語性を見事にサポート。ステージでライトを受け、ひとり歌うビリーが目に浮かぶ。
13LET YOURSELF GO
『ウノ!』からシングル・カットされた高速パンク・チューンのライヴ・ヴァージョン。フロアへとダイヴするオーディエンスをサポートするようなアレンジを効かせたナンバーだけに、客ウケも抜群。煽りもさすがの貫禄だ。