ミニ・レビュー
アイドル楽曲の革新はSMAPが先鞭をつけ、この国民的5人組により一つの発展の端へ辿り着いたが、それでも“未完成”と謳う16枚目。シングルで“惹き”の良さを保ちながら時流のデジタル調から和、ジャズなどへ広がりをみせ、10分超の組曲にまで挑戦。J-POPの進化を端的に凝縮した佳作。
ガイドコメント
通算16枚目のアルバム。シングル「つなぐ」「Power of the Paradise」「I'll be there」のほか、和やデジタル、ヒップホップなどいくつものジャンルが混ざり合ったリード曲「未完」などを収録している。
収録曲
[Disc 1]
01Green Light
抑揚激しい“Louder! Louder!”のフックがクセになるエレクトロニック・ポップ・ダンサー。“進め”のシグナルを合図に新たなターゲットへ走り出せというメッセージは、トップの座に驕らず高みを求め続けろという自らへ向けた問いかけにも聴こえる。
02つなぐ
大野智主演の時代劇映画『忍びの国』主題歌起用の52ndシングル。時代が巡り偽りだらけの世だとしても、あの時誓った愛だけは信じて生きていくと、普遍的かつ個人的な愛を歌う。和のアクセントとエッジなギターを絡み合わせたドラマティックなポップ・ロックだ。
03「未完」
アルバム『「untitled」』のリード曲。デジタル・サウンドをベースにしながら、ジャズファンク、和、モーツァルト交響曲第40番、“サクラップ”などを繰り出していく。食い気味に歌い出すフックをはじめ性急な展開のなかで、自ら未来を切り拓けと告げる。
04Sugar
スウェーデンのiiiSAKが制作に大きく関与した、90年代の薫りをチラつかせたシンセ・ポップ的アプローチのアッパー・ダンサー。描かれるのは、誘われるがままに翻弄され、刹那の愛に溺れる男。フックなどで見せる甘美なファルセットやハーモニーは実に刺激的だ。
05Power of the Paradise
日本テレビ系『リオオリンピック』テーマ・ソング起用の50thシングル。全編を通じて奏でられる麗しいストリングスは、アスリートたちの勇気を鼓舞するかのように躍動。“Fly Fly Fly”のフックほか、明るい未来を感じさせる展開が魅力のダンス・チューン。
06ありのままで
“七転び八起き”“一歩進んで二歩下がる”といったフレーズを用いながら、自分のペースで気楽に未来の地図を描いていこうと説くミディアム・ポップ。ハートウォームながらもリズミカルなノリを持った曲調が、彼らの力みのない自然体のヴォーカルをより引き出している。
07風雲
ギターがグイグイと牽引する、王道バンド・サウンドといえるグルーヴィなアッパー・ロック。風を切って駆け抜けていくような推進力が痛快。クライマックスへ煽るチョッパーベースも好演出。“ブリンギ ブリンギ オン!”などオノマトペ的なフレーズも耳をくすぐる。
08I'll be there
相葉雅紀主演の“月9”ドラマ『貴族探偵』主題歌起用の51stシングル。ドラマの世界観を汲んだミステリアスな導入から、スリリングなメロディとスウィングする華やかなビッグバンド・ジャズへと展開。探偵になぞらえながら、謎を解き明かし真実へ辿り着く愛を歌う。
09抱擁
どことなく90年代R&Bやディスコ、シティ・ポップ的な要素も含ませた、軽快なファンキー・ポップ。艶かしいタイトルとともに大人の恋の歌うが、濃厚過ぎないヴォーカルワークで耳を引き寄せるのは嵐ならでは。“サクラップ”からクライマックスへの展開の高揚感は見事。
10Pray
エリック・リボムを中心に手掛けたポップ・バラード。途絶えてしまった恋から時を進められず、雪が降る寒空の下で想いに耽る男の悲しきウィンター・ラヴ・ソングだ。想い出を蘇らせるような動き出すストリングスとセンチメンタルなメロディが胸に沁み、涙を誘う。
11光
Jazzin'parkの久保田真悟によるハウス・テイストをベースとした開放感にあふれたミディアム・ポップ。“サクラップ”パートほか全編に重なるゴスペル風コーラス展開は、MISIA作品でも知られる佐々木久美の着想か。希望と灯して未来へ歩いていこうと歌う。
12彼方へ
ジャニーズやK-POP系などへの提供が多いTAKAROTとスウェーデンのiiiSAKによるメロディで描く、タイトルどおり伸びやかな広がりをみせる清涼感あふれるダンス・ポップ。夢へ奏でる音をやめることなく鳴らしていこうと告げるメッセージ・ソングだ。
13Song for you
壮大に、ファンキーに、ジャジィに、スリリングにと多彩なフレーズを絡ませて映画のスコア風に展開する、自身初の10分超の組曲。これまでの軌跡に寄り添うように同じ景色と思いを抱いて歩んできてくれたファンへの感謝のメッセージを凝縮し、自然体の歌唱で紡ぐ。
[Disc 2]
01バズりNIGHT
相葉、大野、櫻井のトリオで送る派手な“パラパラ”風ユーロトランス。多田慎也がおふざけモードのバブリーな詞曲を提供し、3人をハイテンションなパーティナイトへと染め上げる。“にん にん にん”“御意 御意 御意”のキャッチーなフレーズが中毒になりそうだ。
02夜の影
松本、二宮、大野のトリオによるミディアムR&Bチューン。三浦大知やBIGBANGあたりが歌っても不思議じゃないスタイリッシュなヒップホップ・ソウル的アプローチで描く、夜に生まれる情熱的なラヴアフェア。3人のクールに決めたハーモニーにも注目したい。
03UB
相葉と二宮によるハートフルなポップ・ソング。タイトルは“ユニットバス”のことで、つかず離れずにいる状態を、気づけば隣同士で過ごしてきた盟友になぞらえる。明るく弾けるホーンの高鳴りや麗しいストリングス、朗らかなメロディが、安らぎや温もりを伝えてくれる。
04Come Back
松本と櫻井のラップの掛け合いに胸躍るファンキー・グルーヴ・チューン。SUPA LOVEの田中直が扇動的なホーンやギターを駆使してダイナミックなトラックを提供。無条件に腰を揺らせるグッド・ヴァイブスで、湧き上がるような興奮に包まれること必至の一曲だ。
05カンパイ・ソング
立てノリビートで展開する文字どおりの乾杯ソング。スピーディな2ビートに急かされるように、曲が進むに連れてテンションもアップ。コール&レスポンスも連発で、飲み会のワイワイガヤガヤ感が目に浮かぶよう。メンバーと一緒に飲んでいる気になれそうなのも嬉しい。