ミニ・レビュー
得体の知れないパワーで疾走する彼女たちであるが、新手のハードコアと思えばその音楽性も高く感じてしまうから不思議なものだ。絶対に一発録りだ、と断言できる妙な音質もライヴ感があり面白いし、既成概念というモノは非常に狭い価値観なのだなと気づかせてくれる一枚。
ガイドコメント
SONIC YOUTHの前座を務め、世界を騒がす20歳の2人組。本作は、すべてシカゴにて録音された作品で、抜群のオリジナリティと20歳ならではの純情、超絶テクニックとが絡み合う話題作だ。
収録曲
01ドドドド
ストレートなONIのギターとPIKAの力強く変幻自在なドラム。二人の自由なヴォイスが渾然一体となった演奏は、ハードコア・ファンのみならず、ベテラン・ミュージシャンをも魅了。メジャー進出アルバム第1弾のオープニング・トラックに相応しい1曲。
02あかんこのまま帰さない
“Let's Go!”の合図で始まる骨太なロックンロール・ナンバー。グイグイと引っ張られる演奏と徐々に深くエフェクトが掛かったヴォーカルが、独特の世界観を醸し出している。時折入る絶叫はボアダムスのYoshimiを彷彿とさせるようだ。
03オニピカハート
力強いドラムとクリーンで骨太なギターは、ヴォーカルが入らなければ女の子二人組とは思えないほどたくましい演奏。コロコロ変化する曲の展開と歌詞が面白く、心の底から演奏を楽しんでいる様子が伝わってくる。
04ちょととまてくださいよ!!
前半はたった三小節で演奏が止まり「ちょととまてくださいよ!!」と、曲のタイトルを連呼。曲が進むにつれて何を絶叫しているのか分らなくなる。1分ちょっとの短い曲ながら、自由な彼女たちの魅力が満載。
05アートブレイコー
“アホにな〜る〜おまじない!”という歌詞が病みつきになる1曲。激しいドラムのイントロから始まり、ブルース・エクスプロージョンを彷彿とさせるドスの利いたサウンドへと変化する。アホさと疾走する演奏が素晴らしい。
06HARITATENO GEN DID CUT!
「張りたての弦が切れたー!」とほぼタイトル通りに絶叫。ハードコア・パンクでガンガン責め立てる演奏が心地良い。関西アンダーグラウンド・シーン独特のアホさ加減が満載で、49秒で曲は終了。
07生意気うさぎ
どこかで聴いたことのあるような、懐かしいメロディ。あふりらんぽ版童謡という感じか。歌詞も「生意気うさぎが食べちゃった」と童謡ライク。シンプルな楽曲ながらも、歪み系のノイズで終わるという遊び心が満載の1曲。
08サンダー
ソニック・ユースを思い出させるようなハーモニーと、メロディアスで歌心のあるナンバー。サウンドはゆっくりと変化し、力強くも美しいギター・リフを聴かせる。ハード・コアな雰囲気で終わるのも、彼女たちらしい。
09In the Space Night
“In the Space Night”という絶叫で始まり、力強いドラムと歪んだギターでサイケ色の濃い演奏が繰り広げられる。深いリバーヴが掛かったヴォーカルで、宇宙に飛んで行ってしまったような歌詞が印象深くて面白い。
10せーの
疾走感のあるロックンロール・ナンバー。「せーの」というかけ声で始まり、適度に歪んだギターとグルーヴ感あふれるドラムが渾然一体となった演奏が、次第に混沌とした世界に突入する。文句なしにカッコイイ1曲。
11CAVA
鋭いカッティング・ギターと性急なリズムでグルーヴするドラムで演奏が始まるが、一転して、ヴォイスのみのパフォーマンスが展開される。元の演奏に戻ったかと思ったら、ゆっくりとしたリズムに変化する曲構成が興味深い。
12テレパシー
ゴリゴリとした感触のギターと激しいドラムで始まるこの曲は、アルバムで唯一の完全な即興による演奏。何の決め事もなしに繰り広げられる演奏は、激しい絶叫と可愛らしい歌が混在し、喩えようのもない混沌とした世界に突入する。
13あふりらんぽ
インディーズ時代にもリリースされている、彼女たちの自己紹介的な代表曲。とびっきりの明るさと極上のロックンロールで歌われるこの曲からは、彼女たちの自由な精神とバンドとしての完成度の高さを聴くことができる。