ガイドコメント
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の大ヒットで音楽ファン以外にも広く知られるようになったビョークの4thアルバム。ストリングスやハープ、オルゴールの音色などが美しい、新たな癒し系作品。
収録曲
01ヒドゥン・プレイス
サンフランシスコ出身の2人組ユニット、マトモスがプログラミングを、ビョークが作曲とプロデュースを担当。民族音楽の合唱のようなコーラスとエレクトロニカのビート感が同居する、まさにビョークを象徴する1曲。
02コクーン
デンマークのDJ、Thomas Knakとビョークとの共作。ディープな低音が深海の流れのように心地良い音世界を構築する。トーンを抑え目にするビョークの歌唱も、静かで優しげな曲調とマッチした美しさを醸し出していて良い。
03イッツ・ノット・アップ・トゥー・ユー
優しく他者を肯定していくテーマの提示という、初期のビョークとは大きく異なる部分がみられる1曲。煌びやかな高音と“許す言葉”がリフレインされる主題部は、ビョークが経てきた変化を色濃く表現しているといえる。
04アンドゥ
ビョークとDJ Thomas Knakとの共作。ハープ奏者にはジーナ・パーキンスを迎え、内気な人々への祈りというテーマを、空間的奥行きと劇場のような臨場感を伴ったオーケストレーションで形成している。
05ペイガン・ポエトリー
オルゴールのようにささやかで儚いメロディが、力強いビョークの歌声に引っ張られていくようだ。はたまた、逆にビョーク自身がメロディを導いているような印象も受ける。突如訪れる静寂から終局に向かう展開が最大の聴きどころ。
06フロスティ
アルバム『ヴェスパタイン』のインタールード的な1曲。ほぼオルゴール・ソロだが一聴してビョーク作品だとわかる、哀切かつ力強い独特なメロディだ。ガラス製の特殊なテーブル型の楽器で演奏されているらしい。
07オーロラ
サンフランシスコのエレクトロニック・デュオ、マトモスのプログラミングがビョークの北欧的世界観によくマッチした佳曲。いまにもオーロラが目に浮かんでくるかのような零度の美しさを絶妙に体現している。
08アン・エコー・ア・ステイン
マドンナのアルバムにも曲を提供しているGuy Sigworthによる楽曲。どことなく閉塞的な不安感と神秘的世界観を絶妙に同居させた曲のアレンジが素晴らしい。時おりヴォーカルにも加工が施されており、心地良い空気感の演出に一役買っている。
09サン・イン・マイ・マウス
トム・ヨークも敬愛する詩人e.e.カミングスの詩から引用された歌詞とGuy Sigworthの濃密なサウンド・メイキングが、ビョークというフィルタを通して精緻なタペストリーを編み上げているかのような1曲。
10エアルーム
ビョークとMartin Consoleの共作であるこの曲は、その質感、メロディ・ライン、バック・トラック、ビート、すべてにおいてアルバム『ヴェスパタイン』中、最もポップといえそう。とはいえ、ビョークの持ち味は遺憾なく発揮されている。
11ハーム・オブ・ウィル
映画『ガンモ』で知られるハーモニ・コリンが作詞を担当した楽曲。彼の映画と同じように現代的な歪みをもって語りかけられており、重厚なコーラスとビョークの歌声が静謐な空間をもって回答している。
12ユニゾン
実験精神にあふれたエレクトロニック・ミュージックの巨匠、OVALの一曲がサンプリング元になっている楽曲。元々アルバム『ヴェスパタイン』のラスト・ナンバーであり、ミドル・テンポで子守唄のようなメロディを口ずさむカーテン・コールである。
13ジェネラス・パームストローク