ミニ・レビュー
世界各国のチャートで1位を記録した『美しき生命』と、そのレコーディング・セッションを通して同時期に生まれていた楽曲などを収めた『プロスペクツ・マーチ』を併せた2枚組。前作『X&Y』(2005年)から『美しき生命』へと向かう過程とその到達点が深く見えてくる。★
ガイドコメント
ヒット・アルバム『美しき生命』に、その続編的アルバム『プロスペクツ・マーチ』をカップリングした作品。2枚を続けて聴くことで、より深く作品の世界を味わうことができる。
収録曲
[Disc 1]
01LIFE IN TECHNICOLOR
「生と死」をテーマにしたアルバム『美しき生命』のオープニングを飾るインスト・ナンバー。キーボードからスタートし、オーガニックな弦楽器が入ったあとドラムが力強いリズムを刻みだす。まるで生命が吹き込まれるような展開を見せる壮大な一曲。
02CEMETERIES OF LONDON
メランコリックで哀愁さも感じさせるマイナー調のナンバー。ギターのカッティングを前面にフィーチャーしたラテン・ミュージックのリズムの上で、時には儚く、時にはエモーショナルにクリスが歌い上げる。
03LOST!
パーカッションの独特のリズムとファンタジックなキーボードがドリーミーな印象を与える一曲。立ち止まっているからといって諦めたわけではないと常に前を見据えた歌詞を、芯のある内なる力強さで歌う。今の地位で慢心しないという決意も込められている。
0442
ピアノとストリングス・サウンドに乗せて儚げに歌うパートから、ダイナミックなバンド・サウンドへと移行するミッド・ナンバー。“人って死んでも、ほんとは死なないんだよね 僕の頭の中で生きてる”という詞が生命というものを考えさせる。
05LOVERS IN JAPAN/REIGN OF LOVE
前半と後半でタイプの異なる、組曲的な構成がユニークな楽曲。前半は躍動感のあるピアノが清々しさを演出する、前向きでさわやかなロックだ。後半はピアノと弦楽器のトライバルな旋律が優しく響く、温かいサウンドで愛を歌うミッド・ナンバー。
06YES
『美しき生命』収録の「ラヴァーズ・イン・ジャパン」同様、前半と後半でタイプの異なる組曲的な構成がユニークな楽曲。前半はストリングスを効かせたほろ苦さのあるミッドで、後半では『美しき生命』のなかでも一番ストレートなロックを聴かせてくれる。
07VIVA LA VIDA
iTunesのCMソングとなった『美しき生命』のタイトル・ナンバー。クラシカルなストリングスが多用された壮大な一曲で、心臓が鼓動するように刻まれる力強いバスドラが心地よく響く。キリスト教のシンボルを使用した文学性のある詞も奥深い。
08VIOLET HILL
『美しき生命』のなかでは少し異質な、退廃的な哀愁を感じさせるミッド・スロー。ボトムを効かせたヘヴィでダークなサウンドがずっしりと響き、物悲しい歌詞と見事にマッチしている。曲に合わせるように、クリスも憂いを帯びた艶のある歌唱を披露している。
09STRAWBERRY SWING
軽やかなエスニック風味のギターが特徴のナンバー。繰り返される“きみがいなかったら、ただの時間の無駄だもの”というフレーズが印象的。手拍子から始まり手拍子で終わるオーガニックなサウンドには、リラックスした雰囲気が漂っている。
10DEATH AND ALL HIS FRIENDS
ピアノとギターの温かい前半から、ヴァイタリティあふれるダイナミックなバンド・サウンドへと展開しアウトロへと続く清々しい一曲。アウトロに『美しき生命』のオープニング・ナンバー「天然色の人生」の旋律を引用することで、ひとつの循環を想起させている。
11LOST?
『美しき生命』収録の「ロスト!」のピアノ・アレンジ版。ピアノだけの演奏によりしなやかな印象を与えている。クリスは穏やかさのなかに憂いを帯びたヴォーカルで、諦めたわけではないと自分に言い聞かせるように歌い上げる。
12DEATH WILL NEVER CONQUER
ジャジィな跳ねたピアノにのせて、クリスが味わい深い歌唱を聴かせるピアノ・ソング。「生と死」がテーマの『美しき生命』において、ひときわ“死”を意識した歌詞が印象的だ。1分半にも満たない楽曲のなかに、仲間たちへのメッセージが存分に込められている。
[Disc 2]
01LIFE IN TECHNICOLOR 2
「天然色の人生」に伸びやかなヴォーカル・パートが加わり、より躍動感と生命力があふれる仕上がりとなったダイナミックな楽曲。『美しき生命』の続編的アルバム『プロスペクツ・マーチ』のオープニングを堂々と飾っている。
02POSTCARDS FROM FAR AWAY
『プロスペクツ・マーチ』の「天然色の人生2」と「グラス・オブ・ウォーター」を繋ぐ、クラシカルなピアノ・インストゥルメンタル。優しい旋律で癒されそうな、心地よいミディアム・ナンバーだ。
03GLASS OF WATER
ギターのカッティングが心地よいパワフルなロック・ナンバー。転調を繰り返すドラマティックなサウンド展開で、聴く者を楽曲の世界へと引き込んでいく。特にサビでは圧倒されるほどにダイナミックだ。
04RAINY DAY
パーカッションでトライバルな印象を持たせながら、ストリングスでクラシカルな表現ものぞかせる二面性が楽しいロック・ナンバー。独特のリズムを刻むパーカッションが耳に残るなか、イントロのパーカッションはファニーとさえ思えてしまうほどユニークだ。
05PROSPEKT'S MARCH/POPPYFIELDS
人生への嘆きが感じられるような、ビターで哀愁あるミッド・スロー。ブルージィなメロから幻想的なサウンドへと展開していき、サビでは音がじわりと広がっていくような不思議な感覚を堪能できる。憂いを含んだ渋いヴォーカルが優しく響く。
06LOST+
『美しき生命』収録の「ロスト!」をジェイ・Zがアレンジしたリミックス・ヴァージョン。リミックスといいながらもほぼオリジナルのままで、中盤でラップが入った構成となっている。わずかな参加ながらも存在感を発揮したジェイ・Zにも注目。
07LOVERS IN JAPAN
『美しき生命』の「ラヴァーズ・イン・ジャパン」の前半部がフィーチャーされたリミックス・ヴァージョン。何かの始まりを予感させる、躍動感のある清涼なサウンドが耳当たりのよいピアノ・ロックで、前向きな気持ちになれそうだ。
08NOW MY FEET WON'T TOUCH THE GROUND
躍動感のあるアコギにトライバルなパーカッションとブラスが加わるテンポのよい楽曲。『プロスペクツ・マーチ』のオープニング「天然色の人生2」と同じフレーズで曲が終わるという仕掛けを組み込んだ、同アルバムのラスト・ナンバー。