ミニ・レビュー
前作の『ゲット・レディー』の大ヒットで若者世代にもその存在感を示したUKロックのリーダーの約3年半ぶりのアルバム。デジタルを巧みに取り入れた美的感覚あふれるサウンドと、抜群のメロディ・センスはさらなる進化を遂げており、楽曲の質も実に高い。
ガイドコメント
英国ロック界のカリスマ、ニュー・オーダーの4年ぶりのアルバム。スティーヴン・ストリートらがプロデュースを手がけ、ヘヴィなギター・サウンドとダンス・オリエンテッドが混在した1枚。
収録曲
01WHO'S JOE?
厳かなストリングスに乗せてスタートするミドル・テンポのロック・チューン。シンプルなリズム・パターンとメランコリックなギターには、かつてのダンス・ロック・バンドの匂いはほとんど感じられないが、紆余曲折を経てたどり着いたシンプルさには好感が持てる。
02HEY NOW WHAT YOU DOING
いきなり目が覚めるようなギター・リフが飛び込んできて一瞬ハッとさせられる、正統派UKギター・ロック。若干ヘヴィなサウンドとニュー・オーダー特有の甘いメロディが相反しそうだが、それを巧みに融合させており、独自の世界観を見せている。
03WAITING FOR THE SIRENS' CALL
得意のメランコリック・サウンドをこれでもかと繰り出したニュー・オーダーの王道的なナンバーだが、全体の演奏のバランスがぐっと引き締まった印象。柔らかいメロディが浮かび上がっては、ふっと流れていく。その刹那の美しさに涙すら出る。
04KRAFTY
冒頭から繰り出されるピーター・フックの野太いベース音、ささやくようなバーニーのヴォーカル、脈打つ電子ビートにきらめくキーボードのサウンド……。四半世紀にわたる彼らのキャリアを凝縮したような集大成的ナンバー。飛ぶように奏でられるメロディは軽やかで美しい。
05I TOLD YOU SO
往年のエレクトロ・サウンドをふんだんに盛り込んだ、80年代フレイヴァー満載のダンス・チューン。アシッドなビートとバーニーの陶酔しきったヴォーカルが発する妖気に、思わずマッドチェスターの再来を夢見ずにはいられない。
06MORNING NIGHT AND DAY
ピーター・フックの太いベースがブンブンとうなりまくるアッパー・チューン。サビ以外の部分はエレクトロの要素を強くし、サビで一気にギターを炸裂させるダイナミズムはカッコイイの一言。ダンス・サイドとロック・サイドの魅力を出し切った秀曲だ。
07DRACULA'S CASTLE
「ドラキュラの城」というタイトル通り、どこかしら妖艶で危険な香りのするナンバー。不穏な電子音と警告を発するような鋭いギター・カッティングが、お化け屋敷さながらのエキサイティングな興奮を喚起している。
08JETSTREAM
どこかしら野暮ったい感じのあるニュー・オーダーのイメージを根底から覆すような、クールでお洒落なダンス・チューン。ゲスト・ヴォーカルにシザー・シスターズのアナが参加し、艶っぽさを加味している。
09GUILT IS A USELESS EMOTION
80年代ニュー・オーダー・サウンドをそのままリバイバルさせたかのような、色鮮やかなディスコ・サウンドが満載のアッパー・チューン。当時の熱気をそのまま真空パックしたような興奮が、これでもかと伝わってくる。
10TURN
がっしりとしたバンド・サウンドで聴かせる疾走感のある1曲。タイトルの「ターン」が表わすように、25年のキャリアを「ここはまだターニングポイント」と言い放つ、頼もしいメッセージが込められたナンバーだ。
11WORKING OVERTIME
ファズの効いた轟音ギターを前面に押し出した直球ロックな1曲。プライマル・スクリームかと見紛うような大胆なサウンド・アプローチに唖然としたファンも多いだろう。しかし、結成四半世紀経ってもなお、新機軸を模倣し続ける貪欲さがうかがえる。
12KRAFTY
バーニー本人たっての要望で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が日本語歌詞を書き下ろした日本語ヴァージョン。原曲のテイストを残した日本語詞はさすがだが、カタコトのバーニーの歌い方には思わず苦笑してしまう。
13KRAFTY
原曲のきらびやかなサウンドを抜き取り、ビートを強調してグッとタイトに仕上げた印象のリミックス。原曲ほどのカタルシスは感じられないが、渋みの効いたサウンドもこれはこれで面白い。静謐な感じさえ味わえる1曲だ。
14KRAFTY
ギトギトなエレクトリック・アレンジで仕上げた、アクの強いリミックス・ヴァージョン。リズムはややハウス調にアレンジされていて、フロア対応としてクラバーを熱狂させそうなナンバーだ。