ミニ・レビュー
「リエンツィ」序曲。長い導入の分厚く渋い弦の音色。それに続くフォルテの主部、金管の強奏、「ローエングリン」の艶やかな弦……すばらしい。オケの機動力と美質を掌握し、完全に鳴らし切る技術と感性。緻密な解釈に裏打ちされた自然で快い音楽の流れ。80年代、ドイツのオケが若杉弘を最上級の評価で迎えた理由がよくわかる。「英雄」の終楽章。プレストになってもテンポに無理がない。みごとな棒さばきだ。生成りのような肌触りのマーラーもいい。何度聴いても感動する。いまは亡き若杉弘によるかけがえのない遺産だ。
ガイドコメント
2009年に亡くなった若杉弘の追悼BOX。80年代にソニー・ミュージックに遺した3枚のアルバムをまとめている。常任指揮者を務めていたシュターツカペレ・ドレスデンとの、いずれもドイツ・クラシックの真髄として名高い演奏だ。
収録曲
[Disc 1]
01歌劇「さまよえるオランダ人」序曲 (ワーグナー)
02歌劇「タンホイザー」序曲 (ワーグナー)
03歌劇「リエンツィ」序曲 (ワーグナー)
04歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲 (ワーグナー)
05歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲 (ワーグナー)
[Disc 2]
01交響曲第3番変ホ長調op.55「英雄」 (ベートーヴェン)
[Disc 3]
01交響曲第1番ニ長調「巨人」 (マーラー)
録音
[1] 84.12 [2] 85.6 [3] 86.8