ガイドコメント
童子-T初のベスト・アルバム。メジャーで発表した全シングルに代表曲を付け加えた充実の楽曲群が、アンプラグドでリアレンジされている。ヒップホップ・ファンのみならず、広い層にアピールできる一枚だ。
収録曲
01Intro
生バンドをアレンジの核とする童子-Tが、生ピアノに乗せて心意気を告げるナレーションを披露。フレンドリーな英語を駆使して、オリジナリティあふれる彼独自のヒップホップ・スタイルを創り上げていることが伝わるイントロダクション・トラック。
02better days (feat.加藤ミリヤ、田中ロウマ)
節目となる10thシングルは、次世代歌姫こと加藤ミリヤとR&Bシンガーの田中ロウマを迎えて贈るラブ・ソングだ。恋に落ちた男女の1年間を綴るドラマ仕立ての詞、ヒップホップを超えた美しいメロディがみごと。
03Sky Triple Dancing (feat.LITTLE)
KICK THE CAN CREWのLITTLEをフィーチャーした、童子-Tのシングル曲。聴きごたえのある二人の掛け合いラップ、ハンドクラップを誘うディスコティックなトラックが魅力のパーティ・チューン。
04少年A
幾重にもなるアコースティック・ギターのサウンドが印象的に響く。自分を失わずに社会に適応していくバッド・ボーイの成長過程を追う内容はあくまでポジティヴで、「念ずれば花開く」の心意気だ。フックのライミングがリスナーを煽るのにバッチリだ。
05世界はおまえの手に
「闘い続けるんだ」というリリックにあるように、童子-Tが「アーティストに安息の地はない」と自らを戒める内容。日本のヒップホップ・シーンを群雄割拠ととらえ、その中でも「俺は生き残る」という力強い意志が詞からうかがえるポジティヴ・ソング。
06MARK YOURSELF
クラヴィネットが隠し味のジェームス・ブラウン風サウンド。ファンキーなバック・サウンドに一歩も引けを取らないライミングが頼もしい。ヒップホップには珍しくギター・ソロもあるのは、童子-Tのバンド・サウンドへの敬意ともとれる。
07勝利の女神 (feat.加藤ミリヤ)
レゲエ・サウンドが軸となっているが、クロスオーヴァーのようなギターが単調な雰囲気を一掃している。惚れた女は男にとって、いつも勝利の女神。男臭い低音が這うサウンドの中で、このトラックにメリハリを与えている加藤ミリヤは、まさに勝利の女神の面持ちだ。
08In-mail (feat.千輪)
シンプルなギターの映える美しいアコースティック・チューンで、「優しい香り」にあふれた作品。飾らない私小説のような「永遠の愛」を惜しげもなくライミングできる童子-Tには、一つの枠にとらわれない懐の深さを感じる。
09蜃気楼 第二章
ミュートのトランペットが彩り、生ドラムならではのスネアの抜けが気持ち良い楽曲。「後悔はつきもの」だと説教臭くなりがちな語りを、童子-Tの人生観を通してさらっとしたフロウでいってのける説得力はさすがだ。
10言葉はじくプロ
ヒップホップ・アーティストが日々さいなまれる「言葉」について語った、童子-Tのライミングが存分に楽しめるナンバー。“言葉はじくプロ”と言ってのける童子-Tは威風堂々で、女々しさなどは決して見せないというコダワリが感じられる。
110時すぎのシンデレラ
パーカッションとホーンで盛り上がるサルサ・サウンドのナンバー。夜の街を目もうつろに闊歩する女の子をシンデレラと揶揄していく。「話すと悩みがある感じ」とはいうものの、シンデレラへ乾いた目線を送る童子-Tがそこにいる。
12Di Di Di
ボーン・サグスン・ハーモニーを彷彿とさせるフロウに綺麗なコーラスが寄り添い、そこに絡む縦横無尽に動き回るソプラノ・サックスが美しい。「そしらぬ顔で舞い上がる落ち葉」に心をが痛め、闇夜に思い出を馳せた純愛失恋ソング。
13実りある人生を
前半部のジャズのスキャット的な符割りにセンスがあふれている、超ハイ・レヴェルなトラック。リズム楽器のない中で、ライム、フロウのポテンシャルも高く、幸せの極みを打ち出したサウンド・メイキングは見事。