ミニ・レビュー
1年半ぶりの4枚目のアルバム。全12曲中6曲がタイアップ曲だということが物語るように、キャッチーな作品満載。もちろん彼女の存在感のある、力強いヴォーカルは健在。独特の言葉遣いもちらほら見られ、全体的に歌の向かう方向は彼女らしくポジティヴ。
ガイドコメント
YUKIのソロ4作目のアルバム。ヒット・シングル5曲を含む本作は、YUKIだからこそ消化できるポップかつエッジの立ったサウンドと、唯一無二の歌詞の世界観が魅力。生きることの優しさと切なさに満ちた内容だ。
収録曲
01長い夢
「JOY」を手がけた蔦谷好位置による、キラキラのシンセに包まれた幻想的な曲で、サビに突入して増していく音の厚みは迫力抜群。それ以上に存在感のあるYUKIのヴォーカルが感動的。ソニー・エリクソン音楽ケータイCM曲としてもおなじみ。
02メランコリニスタ
イントロがシカゴの「サタデイ・イン・ザ・パーク」を想起させる穏やかムードのパーティ・チューン。憂鬱な気分をやんわりと取り除くチル・アウト感覚は、“くるり”の「ワールズエンド・スーパーノヴァ」にも似た趣。
03ドラマチック
アニメ『ハチミツとクローバー』主題歌。歌謡曲風のポップさが特徴のキャッチーなナンバーだが、独自のヴォーカル・スタイルをまったく崩さない、YUKIのヴォーカルが光を放っている。常に前向きな彼女のメッセージも魅力的だ。
04裸の太陽
聴きやすい2ビートのリズムに乗って自由奔放に宙を舞う、YUKIの楽しげなヴォーカルがとても魅力的。絶妙な間の取り方が緊張感を作り出し、約6分間とやや長めの曲であってもゆるみを与えない。彼女の実力が証明された1曲。
05ふがいないや
キレの良いパワー・コードのギターにのせて歌われる独創的で抽象的な詞が、不思議と心に刻まれて静かな感動を残していく。サビでの天に突き抜けるような透明感あるヴォーカルは、鳥肌もの素晴らしさだ。蔦谷好位置作曲のTVアニメ『ハチミツとクローバーII』オープニング・テーマ。
06バースディ
スロー・テンポの打ち込みを土台にしたシンセの空気感と静かなアコギの音色に支えられ、ゆっくりと紡いでいくYUKIのヴォーカルにハッとさせられる。YUKIの存在感に圧倒されてしまうこと間違いなしの、ハートウォームなバラードだ。
07ヘイ!ユー!
緩急をつけたグルーヴィなサウンド・プロダクションが楽しいダンス・ナンバー。気の抜けたようでいて決して芯のぶれない歌声が、彼女が持つたくましさをしっかりと裏づけている。女性の強さを前面に押し出した歌詞にも、YUKIらしさがいっぱいにあふれている。
08あおぞら
ハード・ロック調のシンプルなギター・リフが軽快にリズムを刻む、ミディアム・ロック・ナンバー。「心にあおぞら」を思い描こうという前向きなメッセージを、さりげない素振りで伝えるYUKIの奔放なヴォーカルが印象的だ。
09You've got a friend
勢いのあるドラム・ブレイクで始まるキャッチーな楽曲。感情を巧みに操るような、緩急のあるヴォーカル・ワークが見事。細部にまでこだわったギター・サウンドなど、メリハリを効かせたプロデュースが活きた、耳あたりのいいナンバー。
10ユメミテイタイ
軽やかなカッティング・ギターと明るいフルートの音がのどかなイメージを醸し出すミディアム・ポップ・ナンバー。純情な言葉の1つ1つを子供のようにピュアに発するYUKIのヴォーカルが、優しく響いて心を揺さぶる。きっとこの世界観にどっぷりと浸ってしまうはずだ。
11夏のヒーロー
YUKIのヴォーカルがひときわ輝いて聴こえる、ノスタルジックなバラード。優しいストリングスと切ないハモンド・オルガンの音色のマッチングが、YUKIの切実で純粋なヴォーカルをさらに助長して、心打たれる。
12歓びの種
日常のささやかな“歓びの種”を見逃すことなく育てようと、彼女らしくポジティヴに歌うミディアム・バラード。無責任に「~しよう」と歌わず、あくまで「~みよう」と歌いかけるところに、彼女のセンスの鋭さがある。