ミニ・レビュー
コベントリー出身のトリオによる、スティッフからのデビュー作。労働者階級の不満や苛立ちを描いた詞や、攻撃的な中にほどよいポップさを持つサウンドで、往年のUKパンクのスピリッツを今に伝えてくれる。1作目とは思えない完成度の高さも魅力。
ガイドコメント
イギリスはコヴェントリー出身の3ピース・バンド、ジ・エナミーのアルバム。オアシスやアークティック・モンキーズあたりが好きなファンにはたまらないであろう、キャッチーで切れ味の鋭いナンバーがたっぷりと収録されている。
収録曲
01AGGRO
オアシスからの影響が顕著に表われた、スケールの大きな力強いロック・チューン。8ビートを基本としながらも、隠し味的に16ビートを織り交ぜるなど、2000年代のバンドならではの細やかなリズム・アレンジが施されている。
02AWAY FROM HERE
初期のザ・ジャムを想わせるエネルギー全開のロックンロール・チューン。トム・クラークの歌声も心なしかポール・ウェラーを彷彿とさせる。ライヴでは大合唱必至のシンプルでキャッチーなフレーズの応酬が爽快極まりない。
03PRESSURE
性急なビートに乗せて“プレッシャーに飲み込まれるな!”というシンプルなメッセージが連呼されるパンク・ナンバー。この世界ではいつだって食うか食われるかの戦いだ……。そんな切実な想いが楽曲全体から満ちあふれている。
04HAD ENOUGH
ザ・フーの現代的な解釈といった趣もあるギター・ロック・チューン。一聴するとシンプルながらも、エレクトリック・ポップ風なサウンド処理を施すなど、いかにもピート・タウンゼンドがやりそうな手法を巧みに取り入れている。
05WE'LL LIVE AND DIE IN THESE TOWNS
“俺たちはこんな街に生まれ死んでいく。だからってがっかりするなよ”。日常の中で感じる絶望と、それに立ち向かっていく決意を高らかに歌い上げたポップ・チューン。確信に満ちたトム・クラークのまっすぐな歌声が胸に迫る。
06YOU'RE NOT ALONE
“おまえは一人ぼっちなんかじゃない”というフレーズが繰り返し叫ばれる、感動的なメッセージ・ソング。いつだってリスナーの味方であるという歌詞からは、労働階級出身である自分たちの出自への誇りと気高さが伝わってくる。
07IT'S NOT OK
“奴隷みたいな生活なんてちっとも良くないぜ!”。市井の労働者たちが抱える不満と怒りをストレートに発散させたロックンロール・ナンバー。“時間はどんどん進んでいるし、チャンスはたった一度だけ”という切実な歌詞が印象的。
08TECHNODANCEAPHOBIC
アークティック・モンキーズなどとの同時代性をも感じさせる若者たちの享楽的で刹那な日常を描いた、猥雑で切れ味鋭いロックンロール・ナンバー。硬質でパーカッシヴなギター・サウンドには、ギャング・オブ・フォーからの影響が大。
0940 DAYS AND 40 NIGHTS
本国イギリスでは1000枚限定のアナログ盤シングルとして発売され、わずか1日で完売したという、記念すべきデビュー曲。日常の鬱屈が一気に爆発したかのような、“始まり”の予感に満ちたロックンロールだ。
10THIS SONG
メロディアスなベース・ラインとホーン・セクションが前面に押し出された、マンチェスター・ムーヴメントの頃のジェイムスを想わせる歌心満点のポップ・チューン。人生という名の戦いから脱落していった者たちに捧げられた人間賛歌だ。
11HAPPY BIRTHDAY JANE
『ウィル・リヴ・アンド・ダイ・イン・ジーズ・タウンズ』収録曲の中で唯一のバラード・ナンバー。彼らのメロディ・センスの良さが、ストリングスをフィーチャーしたメランコリックなサウンドによって浮き彫りになっている。
12FEAR KILLED THE YOUTH OF OUR NATION
若い世代を押さえつけ、搾取しようとする大人たちへの怒りが込められた、社会性の強いメッセージ・ソング。この曲におけるトム・クラークのまっすぐなアティテュードとそれを体現した歌声は、まるでかつてのポール・ウェラーのよう。
13DANCIN' ALL NIGHT
タイトルそのままのグルーヴィでタイトなビートが爽快なロックンロール・ナンバー。エレクトリック・ギターのコード・カッティングを中心に構成された、すべてはビートのためのような簡素で潔いサウンド・プロダクションだ。
仕様
CDエクストラ内容:イッツ・ノット・オーケー (ビデオ・クリップ)〜アウェイ・フロム・ヒア (ビデオ・クリップ)〜40デイズ・アンド・40ナイツ (ビデオ・クリップ)