ミニ・レビュー
結成10周年を超えて、新たな旅立ちを宣言する通算6枚目。人に用意されたものではなく自分を信じてレールをひいてゆけ、と歌う「レール」が象徴する意欲的な歌詞に加え、大人びたジャズやアコースティックの要素、そして沖縄民謡にゴスペルを合わせた「時をこえ」など、サウンド面での成長も顕著だ。
ガイドコメント
結成10周年を迎えたHYの、前作『HeartY』から約2年ぶりとなる2010年1月27日発表の6thアルバム。表題『Whistle』には彼らの新たな挑戦とテーマが込められている。リード曲「レール」を含む、未来への決意を感じる一枚。
収録曲
01レール
6thアルバム『Whistle』のオープニングを飾るにふさわしい、彼らの新たな決意表明を綴ったナンバー。イントロの透きとおったピアノのメロディからストリングスが加わった壮大なサウンドへの展開が、希望ある未来を予感させる。
02ビタミンI
恋人同士のお互いに対する一途な想いを描いた一曲。Izuが歌うヤキモチ焼きの彼女と、Hideが歌う“男だから”を言い訳にする彼氏のやりとりがリアル。なめらかかつ軽やかな耳なじみのよいポップなサウンドが楽しい。
03告白
“どんなに想いを募らせても 伝えなきゃ意味がない”という詞が、片思いをしている人たちの共感を生むバラード。あなたへの告白を決意をするまでの気持ちを切々と歌うさまが、ピアノの優しいメロディから伸びやかで凛としていくサウンドの変化とリンクする。
04君のいない世界
シリアスなギター・リフとクールなキーボードが中心のサウンドが、ほのかに懐かしくほろ苦い一曲。間奏に挿まれる恋人たちの会話は幸せだった頃を回想するかのようで、哀愁漂うギターが彼女を失いたくないという彼氏の必死な想いをより強調している。
05すてがらHOLLY
ヘヴィなサウンドが前へ突き進む力強さをくれるロック・ナンバー。間奏のマイナー調のピアノが見えない未来への不安をあおるが、“道は暗いけれど それでも何かがあると 信じて”と勇ましく歌う。挑発的なギターが夢を持った若者の闘志を掻き立てるようだ。
06哀しみの向こう側
温かみのあるサウンドに君への想いを乗せた失恋ソング。歯切れのよいギターとクリアなピアノがさわやかで、君に“最高の恋”をしたことを誇りに思う僕の純粋さが表われている。哀しみを乗り越えた先の清々しさを教えてくれる一曲だ。
07うけんビーチ
夜の海や星空を連想させる淡く柔らかいギターが心地よいスロー・ナンバー。“落ち込む日は誰にでもある だけど大切な今を見失わぬよう 自分を信じて”という詞が、忙しさに追われている現代の人々の疲れた心に響く。
08少年
立ちはだかる試練に真正面から向かっていく覚悟を歌ったロック・ナンバー。過去の自分から抜け出したいという抑えられない衝動が、エッジの効いたギター中心の力強いサウンドから伝わってくる。悩みを持つ“少年”たちに勇気を与える一曲だ。
09Super Positive
自分を信じることで世界は広がっていくという希望を綴った詞が勇気をくれる一曲。凛々しいギターと涼しげなキーボードの見事な調和により、未来に向かって駆けていく様子が目に浮かぶよう。まさにタイトルにぴったりの爽快なサウンドだ。
10Answer
ピアノが中心の美しいメロディに元彼への想いを乗せたバラード。繊細でクリアな歌声から芯のある伸びやかな歌声まで、Izuが変幻自在の歌唱を見せつける。淡く柔らかいコーラスが、楽曲の持つ切なさをより引き立てている。
11帰り道
流麗なピアノの包みこむような優しいサウンドに癒されるナンバー。君と別れて自分の夢に向かって歩き出した僕の、後悔と感謝が入り混じる心の機微を描く。新しい気持ちで活動していこうと決意したメンバー5人の心情とリンクしているようだ。
12時をこえ
祖父母の辛い思い出を一言一言丁寧に歌うとともに、忘れてはならない過去を後世に伝える。三線、エイサー太鼓、指笛という沖縄独特の音が耳を引き、エイサー囃子と英語のコーラスを同時に取り入れた表現が斬新。戦争の怖さや命の大切さが身に沁みる曲だ。