ミニ・レビュー
ジャズ、R&B、ラテンといった幅広い音楽性をしなやかに身につけた女性シンガー、JUJUのファースト・フル・アルバム。生楽器のおだやかなグルーヴが印象的な「奇跡を望むなら...」、ファンク/ラテンの要素を取り入れた「Song for you」など13曲を収録。
ガイドコメント
NY在住のシンガー、JUJUの1stアルバム。ヒット曲「奇跡を望むなら…」「ナツノハナ」など、浸透性抜群のクリスタル・ヴォイスを活かしたナンバーを多数収録。じっくりと噛み締めながら聴きたい。
収録曲
01奇跡を望むなら...
雨音のように繊細なピアノの調べが胸に染みるラヴ・バラード。ゆったりとしたテンポとシンプルなアレンジが、ハスキーでソウルフルな彼女のヴォーカルの魅力を引き立てている。切なくも美しいメロディが感動を誘う。
02rush hour
なめらかなギター・カッティングとともにグルーヴしていく、AORテイストのポップ・チューン。“繰り返すだけの毎日”のなかにあるちょっとした希望をさりげなく描き出すリリック、すぐそばで語りかけてくるようなヴォーカルもいい。
03Song for you
心地よくシンコペーションしていくビートと洗練されたホーン・アレンジがひとつになった、2000年代のシティ・ポップ。なめらかなグルーヴを支えるローズ・オルガンと絡み合うシルキーなヴォーカルにうっとりしてしまう。
04あこがれてた関係
力強さとしなやかさを兼ね備えたアレンジは、ケツメイシなどの仕事で知られるYANAGIMANによるもの。“あこがれてた関係”とは違っても、君との関係を大切にしたいという詞も、奥深い魅力をたたえている。
05Lost&Found
まるで海のなかで漂っているような音像と生々しい高揚感を宿したパーカッション、そしてゆったりと溶けていくようなヴォーカル……。リスナーの気持ちと身体をじんわりと緩めてくれるヒーリング・ポップ・チューン。
06笑顔の残像 (カケラ)
古きよき時代のソウル・ミュージックを想起させるストリングスをフィーチャーした、スタンダードとしての魅力を感じさせてくれるミディアム・バラード。別れてしまった“君”への切ない思いが、エモーショナルに響きわたる。
07MIS
バウンシーなビート感とキュートなコーラス・ワークによって身体がウキウキと動き出してしまうグルーヴィなナンバー。シンプルな日本語をクラブ・ミュージック・テイストのトラックに乗せるテクニックも素晴らしい。
08me against the material world
山積みの仕事が終わらず、大好きなキミにも会えない。そんなシチュエーションをリアルに描き出したナンバー。クラブ・ジャズのエッセンスを取り入れたオシャレ系トラックと身近なテーマを取り上げた歌詞のコントラストもかわいい。
09キミに会いに行こう
シンガー・ソングライターとしても活躍する川口大輔の手による、シックにしてオーガニックなミディアム・チューン。豊かなソウルネスをさりげなく取り込んだサウンドメイクとナチュラルな響きを持つヴォーカルのバランスが絶妙。
10ナツノハナ
豊かなドラマ性を伝えるメロディ、“君”の不在を叙情的に映し出すリリック、ノスタルジックな空気を感じさせるストリングス。これらがひとつになった、オーセンティックなバラード・ナンバー。芳醇なヴォーカルをたっぷりと堪能してほしい。
11sayonara
ゆったりとしたテンポのなかに豊かなソウルをしっかり含んだリズム・アレンジ、聴き返すたびに深みを増していくホーン・セクションが耳を惹きつける。軽やかなスウィング感と豊かな感情表現を同居させた歌も最高。
12Open Your Heart〜素顔のままで〜
洗練されたストリングスのハーモニーとヴォーカル・パートの美しいメロディが心地いい、流麗なポップ・バラード。繊細さと切なさに満ちたシンプルなサウンドのAメロ・Bメロとゴージャスで力強いサビとのコントラストが、鮮やかに効いている。
13Wonderful Life
しっかりと洗練されたサウンドで、曲が進むにつれて高揚感が増していく展開が良い。ブラック・ミュージックの本質をわかりやすいJ-POPへと昇華することに成功した、さわやかで奥深い名曲。CHOKKAKUのソングライティング、アレンジがとにかく秀逸。