ミニ・レビュー
カントリーのメッカ、ナッシュヴィルで録音し、プロデューサーに元ブッカー・T&THE MG'Sの名ギタリスト、スティーヴ・クロッパーを迎えた超話題作。かつてのサザン・ソウル的な面を取り入れた熱い内容で、“パシフィック・クロッシング”とでも呼びたい。
ガイドコメント
2006年に病気療養を発表した忌野清志郎の、約1年半ぶりとなるアルバム。プロデューサーにスティーヴ・クロッパー、作家に細野晴臣と仲井戸麗市を迎え、彼の原点であるサザン・ソウルの流れを汲んだ楽曲を中心に収録している。
収録曲
01誇り高く生きよう
味のあるギター・リフが印象的なミディアム・ナンバー。シンプルでタイトなサウンドに乗せて、力強く伸びやかに歌う清志郎の温かみのあるヴォーカルが絶妙。心から愛する気持ちを歌ったハートフルな歌詞も最高だ。
02ダンスミュージック☆あいつ
最高にファンキーで底抜けにダンサブルなポップ・チューン。16ビートのタイトなリズムや軽快なホーン・セクションといったソウル・ミュージックの王道スタイルを踏襲しつつも、ジャンルの枠を飛び越える個性的な声とセンスに圧倒される。
03激しい雨
盟友、仲井戸麗市とのゴールデン・コンビが、ここに復活! 2人が所属する伝説のバンド“RCサクセション”をサビの歌詞に登場させるなど、遊び心満載のR&Rナンバー。ギターとホーンを中心とした、シンプルでタイトなサウンドが気持ちいい。
04花びら
RCサクセション時代の名曲「スローバラード」の系譜ともいえる、スロー・テンポな大人のラブ・バラード。楽曲の完成度もさることながら、時に弱々しく、時に力強く、感情の起伏をストレートに声で表現できる才能に、改めて圧倒される1曲。
05涙のプリンセス
軽快なピアノと味のあるギター、そして陽気なホーンのサウンドが心地いいポップ・ロック・チューン。清志郎節は抑えめで比較的ストレートな歌い方をしているので、彼の独特な声が今まで苦手だった人にも是非聴いて欲しい1曲だ。
06残り香
スライド・ギターとベースが絡み合うイントロから、アダルトなムードがプンプン香るラブ・ソング。大人っぽいサウンドと子供みたいな清志郎のヴォーカルはミスマッチであるはずだが、違和感どころか心地良く感じさせてしまうという不思議な曲。
07雨の降る日
清志郎の圧倒的な声の魅力をあますことなく堪能できるスロー・ナンバー。泣き声のような高音とうなるような低音、そして彼の代名詞ともいえるしわがれた節まわしと、シンガーとしての天賦の才能のすべてが凝縮されている1曲だ。
08THIS TIME
メンフィス・サウンドの大御所プロデューサー、スティーヴ・クロッパーとの共作による軽快なナンバー。クロッパーのソング・ライティングの素晴らしさもさることながら、誰のメロディでも自分の歌にしてしまう清志郎節の不思議な魅力に今更ながら脱帽。
09温故知新
トップ・アーティストとして長年走り続け、時代を越えて愛されてきた彼が、新しさばかりに目を奪われる人間たちをロックで笑い飛ばす。メッセージをユーモアのオブラートで包み込み、上質なポップスとして成立させるセンスが素晴らしい。
10毎日がブランニューデイ
RCサクセション時代の名コンビ、仲井戸麗市との合作によるロック・ナンバー。エレキ・ギターやピアノ、サックスが奏でるポップな曲調と、ポジティヴさ全開の歌詞が織りなすピースフルな雰囲気は、聴くだけで幸せな気分に。
11オーティスが教えてくれた
清志郎が敬愛するブラック・ミュージック界の偉人、オーティス・レディングに捧げるソウル・ナンバー。シンプルで泥臭いサウンドがたまらなく渋い。単にジャンルとしてではなく、魂の叫びが込められた本物のソウル・ミュージックだ。
12NIGHT AND DAY
別れた恋人への想いを綴ったミディアム・テンポのポップ・チューン。昼も夜も忘れられない気持ちを「忘れられNIGHT AND DAY」と表現するなど、遊び心にあふれた詞が楽しい。十八番とも言える「baby」のシャウトが多く聴けるのも、ファンには嬉しい限りだ。
13ダイアモンドが呼んでいる
突き抜けるようなサビが印象的な、爽快感あふれるミディアム・テンポのロック・ナンバー。シンプルなギター・サウンドに、野球少年をテーマにした爽やかな詞がハマっている。野球に夢中になる子供と音楽に打ち込む清志郎とが重なり合う姿は、微笑ましい。
14あいつの口笛
旧友・細野晴臣の作曲による、ほのぼのとしたポップ・チューン。清志郎がつま弾くウクレレとつぶやくような細野の低音コーラスが、いい味を醸し出している。曲中で効果的に使われているかすれ気味の口笛も絶妙だ。