ミニ・レビュー
87年発表のデビュー作。代表曲「ジェントル・チューズデイ」ほか、12弦ギターをきわ立たせた、フォークとサイケの融合を試みた楽曲が並ぶ。甘酸っぱい既視感を伴って展開される青年期特有の感傷と屈折を描いた世界が、リアルな痛みとして胸に突き迫る。
収録曲
01GENTLE TUESDAY
サイケ/ガレージ・ロックの名誉殿堂コンピ『ナゲッツ』シリーズにも収録されている極甘ギター・ポップ・ナンバー。バーズ直系の12弦ギター、タンバリンの音色、ボビーの弱々しい歌声が、青臭く控えめに鳴り響く。
02TREASURE TRIP
シャッフル調のイントロから、バーズら1960年代バンドのエッセンスを採り込んだギター・ポップへと展開。弱々しいヴォーカルとギターとは対照的な力強いドラミングが特徴的。ギターがじわじわとサイケデリックな音色に変質を遂げていく。
03MAY THE SUN SHINE BRIGHT FOR YOU
「これバーズのなんて曲だったかな?」と記憶に検索をかけてしまうほどバーズ・テイストたっぷりのフォーキー・ナンバー。歌詞は、現在のボビーに音読させたら恥ずかしさで気絶するに違いないほど乙女男子調。
04SONIC SISTER LOVE
甘酸っぱい恋心が歌われたネオアコ・ナンバー。12弦ギターが鳴らす、どこかで聴いたことのあるようなギター・ソロに、ついついバーズの曲も聴きたくなる。うっすらとシュガー・コーティングされたメランコリックな佳曲だ。
05SILENT SPRING
初期曲では珍しくアップ・テンポな曲調のフォーキー・ナンバー。1960年代テイストあふれるソフトなギター・ポップ・リフにドライヴ感あるギター・ロック・リフを重ねたことで、深みのある作風に仕上がっている。
06IMPERIAL
シングルにもなった曲だけに、アレンジに一歩踏み込んだ練り加減が感じられるナンバー。ギター・ポップの特徴のひとつである“ギターと同じくらい存在感があるタンバリン”が、楽曲に軽快さとスピード感を与えている。
07LOVE YOU
悪い遊びに溺れる前のボビーが、このうえなくジェントリーに歌ってみせるスロー・バラード。歌声と朴訥なギター・ソロで、恋する気持ちの実直さを表現した。いかにも80年代風なドラム・サウンドが予想外の魅力を放つ。
08LEAVES
ボビーのはかなげな歌声が、メランコリックなネオアコ・サウンドと魅力的に合致。イントロのギターが鳴った瞬間に甘酸っぱさがこみ上げ、イノセントな記憶が甦る。ギター・ポップ・ファン必聴の隠れた名曲である。
09AFTERMATH
ローリング・ストーンズのアルバムと同名だが、曲の雰囲気はもちろんバーズ。イントロやエンディングの調子、ドラムやギターやタンバリンの響きに至るまで、1960年代ロックのマナーがセンスよく陳列されているナンバー。
10WE GO DOWN SLOWLY RISING
シンセ・ストリングスなどを被せた幽玄なギター・ポップ・サウンドに、1960年代と80年代のサイケデリック・エッセンスを溶け込ませたナンバー。サビ手前でのドラム・ロール的演出が、なんとも微笑ましく感じられる好アレンジが光る。