ミニ・レビュー
シングルだけで大いにもりあがったオアシスの、デビュー・アルバム。2本のギターが織り成すダイレクトなロックに、ネトっとしたヴォーカルが歯切れいい。前評判だけじゃない内容になっている。早くも次作に期待。ストーン・ローゼスみたくならないといいが。
ガイドコメント
年がら年中、仲良くケンカしまくっている音楽界の“トムとジェリー”ことギャラガー兄弟が率いるオアシスのデビュー作(94年)。ビートルズら古き良きロックへの愛情あふれたギターによるダイレクトなロック作品。
収録曲
01ROCK'N' ROLL STAR
労働者階級出身である彼らの、ドン底生活からの脱出願望と成功への確信が歌われたロックンロール・ナンバー。矢沢永吉が言うところの「近所のタバコ屋にキャデラックで乗りつける」に通じる、上昇志向たっぷりの一曲。
02SHAKERMAKER
オアシスの曲では最古の部類に入るスローなロックンロール・ナンバー。歌い出してからのパートが、ニュー・シーカーズの大ヒット曲「愛するハーモニー」にそっくりなため、CD発売前から騒動に。歌詞はかなり意味不明。
03LIVE FOREVER
ソングライターとしてはもちろん、詩人としての評価も高めたノエル会心のメロウ・ナンバー。恋人あるいは友人に向け歌われているような歌詞だが、実際にはノエルの母ペギーに「長生きしてね」と捧げた親孝行ソング。
04CLOUDBURST
いかにもデビュー当初のオアシスらしいポップなギター・ロック・ナンバー。が、そう感じられるのは彼らのつたない演奏力も大いに影響しているから。実際に目指していたサウンドはもう少しハードなものだったのかも。
05UP IN THE SKY
「どんな気分だい?」と、人気が下火になってきた人物を揶揄する言葉を次々に投げつける曲。KANの「愛は勝つ」のように、サビ&準サビ・パートが最後まで切れ目なく続く、オアシスにしては変則的なパターンの曲。
06SAD SONG
クリエイション・レーベルのオーナー、アラン・マッギーに捧げられたノエルの弾き語りナンバー。弟リアムのミャーミャー唱法とは対照的なウェットで柔らかい歌声。この両極端な個性が彼らが人気を得た要因のひとつだ。
07COLUMBIA
リアムの“ミャーミャーニャーニャー”という歌唱が堪能できるロック・ナンバー。重めのサウンドや多重ヴォーカルなど、実験的な色合いも強い異色曲。タイトルはリヴァプールにあるホテルの名前だが、暴れた彼らは出入り禁止に。
08SUPERSONIC
オアシス成り上がり伝説の第一歩となったデビュー曲。リアムの個性的な歌唱が注目を集め、インディ・チャートでは早々と1位。ストーン・ローゼズに憧れ始まったバンドだけに、ギターが彼らの「憧れられたい」風。
09BRING IT ON DOWN
オアシスのパンク・ロック・サイドを全開にした、叩きまくり弾きまくりのナンバー。ドラマーの目立つパートが多いためか、ザック・スターキー加入後のライヴでたびたびプレイし、デビュー時からのファンを喜ばせている。
10CIGARETTES & ALCOHOL
T.レックスそのままなイントロを受け歌い出す、リアムのジョニー・ロットン(セックス・ピストルズ)風歌唱。パンクとグラム・ロックが同時に楽しめるお得な一曲だ。歌詞にはイギリス労働者階級の心情が綴られている。
11DIGSY'S DINNER
軽妙なピアノと軽やかじゃないリズム隊とのギャップも楽しいポップ・ソング。歌詞は、バンド“スモーラー”の変人シンガー、ディグジーことピーター・ディアリーが発した「ラザニア食べたい」に触発され書かれたもの。
12SLIDE AWAY
すれ違う恋人への想いを切実に綴ったラブ・ソングで、哀しげなリアムの歌唱が絶品。デビュー時のオアシス作品にはまるでラブ・ソングがなく、実はこれが最初の一曲だった。その分、ファンの思い入れも強い曲だ。
13MARRIED WITH CHILDREN
にぎやかなアルバム『オアシス』の最後を締めくくる、のんびりと落ち着いたムードのナンバー。ケンカして家を出た恋人への強がりや愛情が綴られた歌詞も微笑ましい、思わずニッコリしてしまうラブ・ソングだ。