ミニ・レビュー
これまでのようにポップで弾けた明るさを、この作品に望むと驚かされるかも。前作辺りから見られる、起伏のゆったりとしたビートにノセて、ユーミンの感情的かつメロディアスな歌の数々が綴り織られてゆく。ラテンや中近東風のリズムへの挑戦も楽しい一面。
収録曲
01KATHMANDU
アルバムのオープニングに相応しいスケール感のあるナンバー。ヒマラヤ山脈の麓へ滑空するイメージの下、“きみ”とともに輝く世界・未来に羽ばたこうと高らかに歌う。歌い出しのメロディや間奏のエスニックな響きが特徴的。
02Take me home
アンデス風のイントロで始まるアコースティックなロック。列車のレールをモチーフに過去と未来について綴った歌で、不思議と郷愁の念を誘うマンドリンのエスニックな音色とサビでのパンチの効いたヴォーカルが魅力。
03命の花
死をも恐れないほどの情熱的な愛を抽象的に歌ったナンバー。ソリッドでありながらグルーヴする打ち込みビートが特徴的。演歌のコブシにも似た節回しを見せるヴォーカルと終盤の民族風バック・コーラスが聴きどころ。
04Baby Pink
スムージーなダンス・ナンバー。“ピンク”をキーワードに悩める女性の恋心を綴ったラブ・ソングで、“〜なの”という甘えた口調が魅力的。シンプルなミュート・トランペットやスリリングな間奏が実にシャレている。
05Delphine
コンテンポラリーな雰囲気のライト・バラード。姿を消した“デルフィーヌ”を待つ歌で、イルカとも女性とも解釈できる点が特徴的。エメラルド・グリーンの海を想像させる視覚的印象重視の歌詞とサウンドが味わいどころ。
06輪舞曲 (ロンド)
南米ラテン/スパニッシュ風ダンス・ナンバー。幸福の象徴であるはずの結婚の瞬間をセンチメンタルに描いた歌で、多くの日本人の琴線に触れる哀愁漂う曲調が魅力。軽いダンス・ビートが違和感なく馴染んでいる。
07Broken Barricade
バグパイプ・マーチで壮大なイントロを飾るロック・ナンバー。悪役になってでもマザコンの恋人に自立性を持たせようと意気込む姿をボクシングに喩えたユニークな歌。ユーミンは格闘技好きとしても知られている。
08Midnight Scarecrow
少年の視点で綴られたライト・バラード。恋人がひたすら恋しくて、夜中に用もなく公衆電話から電話をかけるという身近な設定(当時)が魅力。ユニゾンでメロディを奏でるシンセや力強さに満ちたブリッジ部分が特徴的。
09クロームの太陽
重めのブラス・ロック・チューン。明け方の湾岸線でのツーリングをモチーフに、過去や束縛を蹴散らす爽快さを歌った男っぽいナンバー。シンプルゆえに重厚なブラスやA〜Bメロのファンキーなギターが特徴的。
10Walk on、Walk on by
4ビート基調のミディアム・ポップ・ナンバー。恋人の昔のカノジョを街で見かける設定のもと、ヒロインの自分だけを愛してほしいという想いが見事に描かれる。その揺れ動く心の核心に迫るようなBメロが聴きどころ。
11Weaver of Love〜ORIHIME
ファンタジックな純和風ソング。七夕をテーマにしたラブ・ソングで、遠いところにいる恋人への想いを綴る。「砂の惑星」並みにキャラクター性が際立っているユーミンの声が聴きどころ。エンディングも気が利いている。