ミニ・レビュー
ドリカムのヴォーカリスト吉田美和がNYでデヴィッド・T・ウォーカーらとジャム・セッションしながら作り上げた、とってもハートフルなソロ・アルバム。オープニングの(1)をアカペラで始めるところに、ヴォーカリストとしての彼女の自信が窺える。
収録曲
01ビューティ・アンド・ハーモニー
“この世界の美しさを、ずっとあなたとみられますように”。夏景色の鮮やかさに喚起され、あふれ出る想いを、もの悲しくも美しい旋律で紡ぎ上げる珠玉のア・カペラ・ソング。ソロ・デビューを飾るに相応しい、威風堂々たる歌唱だ。
02つめたくしないで
恋する女の子のすっぴんの心を描かせたら、吉田美和の右に出る者はなし。その揺ぎない吉田ワールドを、ジャズ界の巨匠たちが円熟したプレイで優しく包む。キュートな中にもアダルトな空気漂う、絶妙のポップ・チューンに仕上がった。
03泣きたい
天才サックス・プレイヤー、マイケル・ブレッカーの鮮やかなソロで幕を開ける、アダルトなジャズ・ナンバー。失恋の痛みに悶える淑女の悲痛な歌声に、ジャズ界の巨匠たちが、熟年紳士然としたメロウなプレイで優しく相槌を打つ。
04バイバイ
別れを切り出された女の子の複雑なリアクションを、これぞ吉田節の絶妙なタッチで描く。ドリカム然としたポップスを、ジャズ界の巨匠たちが大人風味に料理。とりわけ、デヴィッド・T.ウォーカーの歌心あふれるギター・ソロは圧巻。
05パレードは行ってしまった
4年に一度現れる、ドリカム・ファン憧れの音楽移動遊園地、DWL。その夢空間が去り行く情景を、グレッグ・アダムスの円熟のトランペットと美和のブルージィなヴォーカルという、奇跡のデュエットで描く美しきジャズ・ナンバー。
06ア・ハッピー・ガーリー・ライフ
色々あるけど、やっぱ女の子でよかったわ、というポジティヴィティあふれるブギー・ナンバー。殿方の目には届かぬ女の子のリアルな生態を、実にユーモラスに歌い上げる。ジャズ界のそうそうたる顔ぶれによる、メロウなプレイも聴きものだ。
07ダーリン
ジャズ的要素もたっぷりの上品なラヴ・バラード。ダーリンの性格も仕草もすべてがとにかく好きでたまらない。そんな一途な乙女心を、柔らかなタッチのヴォーカルで歌い上げている。二人の温かな空間を想像させます。
08冷えたくちびる
恋人は去り、女は茫然自失と雨に打たれる……。そんな別れのシーンを、じっとりしたフュージョンをバックに綴る悲恋のバラード。打ちひしがれる女を歌う低いヴィブラートは、まさに神からのギフトと言うべき、極上のブラックネス・ヴォイス。
09奪取
愛を手に入れるには強引なのもアリ!と、恋の大勝負に出る女の子の心意気をパワフルに歌い上げる。ドリカムならば弾けたポップ・チューンになるところだが、バックを固める天才プレイヤーたちは、実に洗練されたR&Bに仕上げた。
10生涯の恋人
恋の悲しみ、苦しみ、すべてを乗り越えた人が辿り着く、究極の愛を描いた真のラブ・ソング。添い遂げることなくとも想い続ける“生涯の恋人”が誰の心にもいる。この魂の歌声は、そんな我々の心深くに響くはず。
11ビューティ・アンド・ハーモニー (リプライズ)
ソロ・デビュー・アルバムのプロローグで聴かせた圧巻のア・カペラ。エピローグでは、美和が歌い上げたもの悲しくも美しい旋律をストリングスでなぞる。弦の織り成す深いハーモニーは、シンプルな中にも荘厳さと神聖さを湛えている。