ミニ・レビュー
ヴォーカルのドラッグ死で遺作となったセカンド。ファンクからレゲエ、スカやパンク、スクラッチも取り込む広い音楽性はさることながら、聴き手を歪んで弛緩した世界に導く、トリップ効果は筆舌に尽くし難い。でも死んじゃったらシャレになんないか。
収録曲
01GARDEN GROVE
のんびりとした西海岸のビーチの雰囲気を伝える、スローなレゲエ調のトラック。スクラッチを効かせたり、スペイシーな電子音をコラージュしたりと、独自のサイケデックな演出しているところがサブライムらしい。
02WHAT I GOT
シングル・カットされ、当時MTVにて頻繁にオンエアされた、いまだファンの間でも人気が高い大ヒット曲。シンプルな楽曲の主役は歌心のあるヴォーカルで、調子のいいラップやゴキゲンな口笛も聴かれ、非常にノリがよい。
03WRONG WAY
思わず体を揺らしたくなるスカの心地よいリズムに身を委ねれば、気分は常夏ビーチの昼下がり。タイミングよく切り込むホーン・セクションも楽しい、笑顔になれるアップ・テンポなトラックだ。
04SAME IN THE END
ゆったりした楽曲が多い『サブライム』の中では、初期作品に近いスピード感と荒さを感じさせる高速スカ・パンク・チューン。哀愁や疾走感、初期衝動が一緒くたになったサウンドと反骨精神に満ちたリリックが、彼らの不変のアティテュードを証明している。
05APRIL 29,1992(MIAMI)
美しく、底抜けに明るいイメージの強いリゾート地で起こった人種差別事件をテーマにしたリリックはひどく怒っている。が、バックのサウンドはどこか人をくったような惚けた調子。嫌味にならない問題提起の仕方に唸らされる。
06SANTERIA
愛する我が子に捧げられた、涙なしには聴けないであろうサブライムの名曲。ブラッド・ノウェルのヴォーカルは優しすぎるほど穏やかで、ゆるーいサウンドも温かく詞を包み込んでいる。楽曲全体から多幸感がにじみ出ている。
07SEED
疾走する高速パンク・ビートからレゲエ調の横ノリ、そしてスカのリズムへとくるくる曲の表情が変化する、緩急のある展開が楽しいミクスチャー・ナンバー。彼らの幅広い音楽的背景が短い展開の中でもしっかり凝縮されている。
08JAILHOUSE
ゆったりとしたレゲエ・サウンドにのったエモーショナルなヴォーカルが胸に響くナンバー。ちょっと枯れた味わいのブルージィなギターが、ビーチの夕暮れにも似た切なくほろ苦いムードを盛り上げている。
09PAWN SHOP
ダブに近いエフェクト加工したヴォーカルやギター・サウンドが、どこかへトリップしそうなサイケデリアを生むレゲエ・ナンバー。突如として鍵盤が響いたり、ブレイクを多用するなど、巧妙なアレンジがキラリと光る。
10PADDLE OUT
陽気なリズムでかっ飛ばし、わずか1分強で終わってしまう超ファストでタイトなキラー・チューン。早口でまくしたてる歌唱とアグレッシヴでハイ・テンションなサウンドに刻まれるハワイアン・ギターが、ピリリと効いている。
11THE BALLAD OF JOHNNY BUTT
同じフレーズが繰り返される詞、非常にミニマルなサウンドなど、コンパクトにまとまったスローなナンバー。表情豊かなヴォーカルは味わい深く、哀愁が漂うもの悲しいメロディは胸に切ない余韻を残す。
12BURRITOS
一聴では彼らが得意とする軽快なリズムのダンスホール・ナンバー。しかし、ギターをはじめとするルーズでダルなサウンド・メイクが、歌詞と同様に退廃的で無気力な状態を表現している、ユニークなタッチの作品。
13UNDER MY VOODOO
レッド・ホット・チリ・ペッパーズを想起させるハード・ロック調のギター、ブラック・ミュージック風のファンキーなリズムとグルーヴ感で押しまくる情熱的なトラック。引き出しの多さとセンスのよさに感嘆するナンバーだ。
14GET READY
オーガニックでナチュラルな空気が漂うゆる〜いレゲエ・ナンバー。横ノリのグルーヴとリラックスしたムードの気持ちよさは格別。その心地よい空間を誰にも邪魔させないぜ、という気概にあふれた力強い歌が頼もしい。
15CARESS ME DOWN
自然と口ずさんでしまうほどキャッチーなサビが印象的な、オーセンティックなレゲエ・ナンバー。ファニーでちょっとダルな空気とピースフルな開放感が同居する、サブライムならではのヴァイブスが堪能できる。
16WHAT I GOT
レゲエ色の強いアレンジを施したシングル曲の別ヴァージョン。楽しみながらプレイしているのが伝わってくる。遊び心もたっぷりでありながら、ナチュラルな雰囲気を損なっていないのはさすがの一言。
17DOIN' TIME
ジャニス・ジョプリンの名曲「サマータイム」をモチーフとしたルーディなチューン。夏の午後の気だるくとろけそうな熱気を持ち込んだダンス・ライクなミクスチャーが、当時クラブ・シーンを席捲したことは言うまでもない。