ミニ・レビュー
おっ、ユーミンが凄味を利かせたヴォーカルを露にしているじゃないか。肥大化した自分の影を、チープな姿で登場することで弄んでやろうとしているみたいに見える。状況をしっかりと見据えているその眼には、90年代末“歌謡曲”の姿が見えているのかも。
収録曲
01ありのままを抱きしめて
タイトな8ビート・ロック。タイトル通り、等身大の自分を受け止めてほしいという歌で、物憂げなサウンドと媚びないメロディが特徴的。Bメロで顕著な裏返りそうな独特の歌いまわしが、ユーミンの新たな可能性を感じさせる。
02Cowgirl Blues
ユーミンにしてはかなりヘヴィなギター・ロック曲。離れていく恋人を繋ぎ止めるため、車で彼の元へ向かう歌。ポップなサビへの自然な流れや終盤のサビの背景でかすかに聴こえるカウンター・ラインが聴きどころ。
03告白
インパクトの強いイントロで始まる、大胆なダンス・ナンバー。偽りは捨てて自由のために告白しようと鼓舞する歌だが、同性愛の歌だとする風潮もある。終盤の次第に音数が増えて盛り上がっていく展開が聴き応えあり。
04Moonlight Legend
メルヘンチックなイントロで始まるポップ・チューン。自分達は、何万年もの時空を飛び越え満月の夜に再び結ばれた伝説の2人だと歌う、おとぎ話的ラブ・ソング。Aメロが控えめなのでキャッチーなサビが際立っている。
05別れのビギン
恋人との最後のダンスをテーマにした、ジプシー〜フラメンコ調ナンバー。楽曲に違和感なく溶け込んでいる打ち込みビートとアンニュイな雰囲気のユーミンのヴォーカルが特徴的。吉川忠英のセンスあるギターにも注目したい。
06忘れかけたあなたへのメリークリスマス
独りで過ごすクリスマス・イヴをテーマにしたライト・バラード。街路樹のイルミネーションを見て忘れかけていたかつての恋人を思い出してしまう、静かな失恋ソング。グリッサンドするストリングスやシタールの音色が印象的。
07Midnight Train
ウォーキング・ベースで始まるジャズ風失恋ソング。宇宙を駆け抜ける列車に乗って傷ついた心を癒そうという、ファンタジックな1曲。随所にジャズ・テイストあふれるアレンジが施されていて、星空の旅を盛り上げている。
08最後の嘘
常磐貴子主演TVドラマ『ひとり暮らし』の主題歌となったバラード。アパートを舞台にしたユーミン得意のストーリー性あふれる別れの歌で、サビ・メロディを必要以上に繰り返さない節操のある曲構成が好印象。
09Called Game
物静かなバラード曲。別れを野球のコールド・ゲームに喩えた歌で、過度な感情移入のない客観性のある歌詞が特徴的。アコースティック・ギターの柔らかいサウンドが、2人を見守るような優しい雰囲気を演出している。
10まちぶせ (荒井由実)