ミニ・レビュー
これぞ英国ならではのロック。音楽的な新鮮味は何もないけれど、とにかく力で捩じ伏せるような堂々たるバンド・サウンドで、メロディアスな歌を聴かせる文句なしのオアシスの通算3作目。既にビートルズ風な匂いすらもオリジナルとして昇華した力作。★
収録曲
01D'YOU KNOW WHAT I MEAN?
ジミ・ヘンドリックス『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』を意識した風の混沌とした幕開け。フィードバック・ノイズを振りまくギターも、どこかジミ風だ。分厚いサウンドが特色の『ビィ・ヒア・ナウ』を象徴する一曲。
02MY BIG MOUTH
「誰がオレの代わりに殿堂を歩けるってんだ?」と、ラウドなギター・サウンドをバックに大言壮語。「総理大臣の代わりはいても俺の代わりはいない」と発言した勝新太郎には及ばないが、かなりのオレ様節が楽しめる。
03MAGIC PIE
センシティヴな序盤は、いかにもノエルが歌いたがりそうな雰囲気。開始1分過ぎからは“なんちゃってウォール・オブ・サウンド”が展開されるが、分厚い音の向こう側で持ち前のメロディは立ち往生気味な印象も。
04STAND BY ME
大ヒット作『BE HERE NOW』からの2枚目の先行シングル。“俺の心は決してお前の家にはなりえない”と言いながらも“俺のそばにいてくれ”と繰り返すスウィートなナンバー。ノエルから母親へのラヴ・ソング。
05I HOPE, I THINK, I KNOW
デビュー時からオアシスを追いかけている人なら、まず嫌いとは言わないであろう爽快ギター・ポップ。明快なギター・リフに歌い上げ系のサビなど、これぞシンガロングな一曲だが、なぜかライヴではほとんど演らない。
06THE GIRL IN THE DIRTY SHIRT
いつものやさぐれぶりとはまた違った、(彼らにしては)アダルティなやさぐれぶりを披露したスワンプ・ロック・ナンバー。スライド・ギターや鍵盤を、上塗りで終わらせることなく効果的に多用。なかなかの好曲だ。
07FADE IN - OUT
コンガやマラカス、俳優ジョニー・デップが弾くスライド・ギターなど、明らかにローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」を意識した一曲。米国南部サウンドをオアシスなりに料理したスワンプ・ブリット・ポップだ。
08DON'T GO AWAY
過激な発言で話題に事欠かないオアシス(ギャラガー兄弟)だが、本作は、つまらない記事ばかり並び立てるプレスを黙らせるような、美しいミディアム・チューン。そばに居てくれと願うストレートな歌が胸に迫る。
09BE HERE NOW
ローリング・ストーンズ風の曲がいくつか聴ける『ビィ・ヒア・ナウ』。この表題曲もそのひとつで、ルーズでブギーなムードは明らかにストーンズの影響下。本家にくらべ粘り気が足りないが、健気にストーンズぶっている。
10ALL AROUND THE WORLD
少しずつ音階が下がりながら進む得意のパターンを駆使した9分超えの大曲。バンド成功前に書かれた曲ながら、成功を確信していたかのような歌詞で驚くやら呆れるやら。ストリングスやホーンも派手に飛び出し大団円。
11IT'S GETTIN'BETTER (MAN!!)
ローリング・ストーンズのルーズなエッセンスを、上手いことオアシス流に転化したロックンロール・ナンバー。イントロ→サビと軽快に進行するが、エンディングに近づくにつれ曲調が渋滞し、気づけば7分間の長尺曲。
12ALL AROUND THE WORLD
まるで『ビィ・ヒア・ナウ』の出来栄えを自分たちで讃えているかのような、華やかなファンファーレ・インスト。足音、そして扉を閉める音は「オレたちは今いる場所から次の場所へと歩き始めたぜ」を意味したSEか。