ミニ・レビュー
各2枚組全3巻になるシングル・コレクション全集の第3巻。彼がTVドラマという表現手段をも使い出した時期で、その主題歌になった作品が多い。またこの時期、カップリングにライヴ・ヴァージョンが少なくないのは、ライヴをアピールしたい表われか。
収録曲
[Disc 1]
01とんぼ
男・長渕、その本人を象徴するような勇ましい一曲。間奏のくだりは誰しもが聴き覚えのあるものだろう。東京に憧れた男の挫折と苦悩のストーリーは、聴く者の胸に熱く響く。反骨精神が如実に表われているのもいい。
02ステイ・ドリーム ('88 TOKYOドーム・ライヴ・ヴァージョン)
打ち込みトラックを採り入れたミディアム・バラード。“くよくよするなよ”と聴き手を優しく勇気づける“アニキ”流応援ソングで、歌詞の中には長渕剛の人生観を感じさせる温かい言葉の数々がちりばめられている。
03激愛
愛は深まれば混沌に陥る。ロマンスに酔いしれるがゆえ、二人のせめぎ合いはまるで戦のようにもなりうる。激しすぎる禁断の愛はどこか重苦しくもあるが、止められない。そんなムードたっぷりのヘヴィなラヴ・ソング。
04あんたとあたいは数え唄 ('88 TOKYOドーム・ライヴ・ヴァージョン)
05しょっぱい三日月の夜
長渕剛が原案・主演・音楽を手掛けた映画『ウォータームーン』の主題歌。月夜を連想させる柔らかいシンセ・サウンドが印象的なミディアム・バラードで、アクの強いヴォーカルが疲労感にも似た男の哀愁を感じさせる。
06いつかの少年 ('89 YOKOHAMAアリーナ・ライヴ・ヴァージョン)
07ジープ
早朝の海辺でひとり物思いにふける歌。スリー・フィンガー奏法によるアコギの小気味よいサウンドと2声でハモるメロディ・ラインが特徴的。具体的な情景描写と次第にポジティヴになっていく心境の変化が実にリアル。
08女よ、ごめん
ギターの弾き語りナンバー。タイトル通り、女性への反省の言葉を綴った歌で、さまざまな女性と噂になった長渕剛だけに非常にリアルに聴こえる。アルバム『JEEP』収録のロック・ヴァージョンと聴き比べるのも面白い。
09しゃぼん玉
同タイトルのドラマの主題歌で、長渕自身が主演したことでも話題を呼んだ楽曲。強い男も時にはしみじみと黄昏めいて、己を振り返る。そんな男の弱さも長渕が歌えば様になる。漂う哀愁は儚く、美しさすら感じられる。
10親知らず
弾き語りのブルース・ロック・ナンバー。日本の未来への憂いを訴えながら、長渕剛らしい男の生き様を説いたメッセージ・ソング。バッキング演奏はアコギ2本だけだが、なかなか迫力のあるプレイを聴かせている。
[Disc 2]
01巡恋歌'92
1978年にリリースされた再デビュー・シングル曲のロック・アレンジ・ヴァージョン。透き通るような歌声でソフトな歌い方をしていた当時から、無骨に声を響かせる現在のヴォーカル・スタイルへ変化。長渕のキャリアに歴史を感じる1曲だ。
02俺らの家まで ('92 TOKYOドーム・ライヴ・ヴァージョン)
03ラン
重苦しい悲愴感が漂う、自問自答的な内省歌。詞にはシニカルな表現が多分に盛り込まれている。やるせない嘆きの感情が、しとしと伝わってきて酷く切ない。曲のムードとは裏腹に、キャッチーなメロディで聴かせる。
04愛しているのに ('93大阪城ホール・ライヴ・ヴァージョン)
05人間
ミディアム・スローのラブ・バラード。ペンタトニック・スケールなどを用いたエスニックなサウンドや緩やかなハンド・クラップなどが特徴的。“俺たちは人間だもの”というシンプルかつ根本的な視点から愛を歌う。
06アイ・ラヴ・ユー (アコースティック・ヴァージョン)
アルバム『JAPAN』収録曲のアコースティック編。ブランドなどの流行を気にする女性に対して本当の意味での“一流”というものを説く、長渕剛らしい愛の歌。サウンドが穏やかなので説教がましく聴こえない。
07友よ
かつての友人をテーマにしたスロー・バラード・ナンバー。純粋で一生懸命だった昔を懐かしむと同時に、それを糧にして今を生きようと語りかける。ライヴ会場での大合唱を想像させる曲終盤のリフレインが聴きどころ。
08恋というもの
男女の恋をテーマにしたスロー・バラード曲。“わり切れないのが恋というもの”など、長渕剛なりの恋愛観が展開される。アコギとパーカッションの温もりに満ちたサウンドが土臭いヴォーカルを引き立てている。
09傷まみれの青春
ハートフルなオルガンで始まるミディアム・ロック・ナンバー。理屈ではない“あんちきしょう”という感情をテーマにした長渕剛らしい1曲。2番を弾き語り風にするなど、目立たないが秀逸なアレンジが施されている。
10ライセンス (ライヴ'95 “いつかの少年”TOKYOドーム)