ミニ・レビュー
ガレージ・バンドさながらのチープなR&Rにサイケデリック調のノスタルジックなメロディが売りの彼ら。2年振りとなる本作(2nd)は、そのキャッチーな部分は残しながらもドロドロと湿った英国ロック特有の暗さを引きずっている。アナクロニズムが快感。
収録曲
01IVY IVY IVY
下味にストゥージズとニューヨーク・ドールズを使ったガレージ・パンクに、ビーチ・ボーイズ風コーラスをトッピングしたポップなナンバー。思春期を音楽漬けで過ごしたボビーならではの、秀逸なティーンエイジ・ロック。
02YOU'RE JUST DEAD SKIN TO ME
ダークなイントロから一変、本編はベタなまでに王道な風情のピアノ・バラード。ロックンロール殉教者ボビーの祈りが捧げられた歌唱は上手いとは言いがたいが、どっぷりと世界にのめり込んでいる様が魅力的だ。
03SHE POWER
脳裏にストゥージズがチラつくと同時に、この数年後に登場するオアシスの曲の断片(とくに終盤でのギター・フレーズ)も感じ取れる。過去と未来のデジャヴが一度に体感できるギター・ロック・ナンバーだ。
04YOU'RE JUST TOO DARK TO CARE
ギターとピアノをフィーチャーしたスロー・バラード。全編を通じて非常に音数が少なく、それゆえ楽器の鳴りも効果的に彼方へと消え入る。静かに柔らかく歌うボビーが、中盤で少しだけオクターヴを上げてみせるのが絶妙。
05I'M LOSING MORE THAN I'LL EVER HAVE
イントロで「あれ?急にローリング・ストーンズの曲!?」と勘違いさせられるスロー・ナンバー。のちに代表曲となる「ローデッド」の原型にもなった曲で、米国スワンプ・ロックのエキスがセンス良く取り込まれている。
06GIMME GIMME TEENAGE HEAD
MC5の「キック・アウト・ザ・ジャムズ」をライヴでの定番演目にしている彼らが、その「キック〜」を拝借して作った若気のいたり的作品。あまりにそのままなイントロに苦笑が止まらないロール・ナンバーだ。
07LONE STAR GIRL
彼らの過去曲を聴いているデジャヴに襲われるポップ・ナンバー。同じ『プライマル・スクリーム』収録曲で愛を捧げたアイヴィ嬢やマリアンヌ嬢の存在をもう忘れたのか、ここではウェンディ嬢への想いをひたすら熱唱。
08KILL THE KING
同じ『プライマル・スクリーム』収録曲でプロテスト・ソングの無意味さを歌っているボビーだが、ここでは反体制的な歌詞を歌い上げていて興味深い。逆回転テープなど、ビートリッシュな香りも漂う実験的ナンバーだ。
09SWEET PRETTY THING
記憶をつかさどる脳の部位“海馬”がむずがゆくなってくるほど、既視感が走馬灯のごとく駆け巡るグラマラスなロックンロール・ナンバー。この曲の元素が解読できれば、ロックンロール検定試験も一発合格間違いなしだろう。
10JESUS CAN'T SAVE ME
ローリング・ストーンズの1970年代作品を自己流に転化した、穏やかにソウルフルなピアノ・バラード。のちに発表する「JESUS」では神に懇願してみせるボビーが、ここでは「神にオレは救えない」と斜に構えて歌っているのがおもしろい。