ミニ・レビュー
発売3日間で86万枚を売り上げたそうだ。そうやって、何万枚売れるかとか、彼女が何をテーマにしたとか、内容よりもその種の話題に振りまわされ気味だが、丁寧に新しい試みも随所に盛り込んである。「アニヴァーサリー」のような決定打には欠けるけど。
収録曲
01Miss BROADCAST
22枚目のアルバム『天国のドア』のオープニング曲。タイトル通り、女性キャスターをテーマにしたナンバーで、忙しい日々を懸命に生きている姿が綴られる。意味深な言葉も多く、なかなか捕らえどころのない不思議な曲。
02時はかげろう
砂漠を舞台にしたスケールの大きいナンバー。地球のエネルギーを肌で感じることで愛に生きる意味を悟るという歌詞で、ユーミンの死生観が垣間見れる。もはやポップスの域を超えている内容だが、サビは非常にメロディアス。
03A (エース)はここにある
鮮やかなブラスとパーカッシヴなリズムで心躍るミディアム・ポップス。トランプと雷をモチーフに“あなた”への熱い愛を綴る歌で、恋を楽しんでいる様子が窺える。歌詞にとらわれず、雰囲気を楽しむべき1曲。
04満月のフォーチュン
ソリッドなリズムが特徴的な8ビート・ロック。運命の出会いとその予感をファンタジックに描いた曲。ペンタトニック・スケールと呼ばれる音階を使用することで、エスニックな雰囲気を醸し出している。ライヴで人気の高い1曲。
05Glory Birdland
バウンス系ポップ・ナンバー。物語調のファンタジックな歌詞が特徴的で、禁断の島へ行こうと高らかに歌い上げる。ジャジィなピアノ・ソロや引っ張られるようなコード進行など、こだわりのアレンジが施されている。
06ホタルと流れ星
アダルト・コンテンポラリーな1曲。最後のデートをモチーフにした別れのナンバーだが、全編落ち着いたサウンドが展開され、そこに未練がましさがないのが特徴的。微妙に押韻しているサビ部分の歌詞にも注目したい。
07Man In the Moon
オシャレでバブリーなファンキー・チューン。成功を目指すビジネスマンのポジティヴな歌で、“プール付きの家”や“鍛えた肉体”など、時代を感じさせる単語が並ぶ。サビのシンプルなフレーズのリフレインが印象的。
08残暑
哀愁漂うミディアム・バラード。前年に別れた恋人の面影を引きずりながらも、少しずつ立ち直っていく姿を描いた恋歌。ノスタルジックな雰囲気のサウンドと磨き抜かれた言葉が、残暑の鮮やかな風景を思い起こさせる。
09天国のドア
発売3日間で80万枚を売上げた大ヒット・アルバム『天国のドア』に収録されたタイトル・ナンバー。90年代のさらなる快進撃を合図するかのような、陽気でタイトなファンキー・チューン。
10SAVE OUR SHIP
アルバム『天国のドア』のラストを飾るバラード曲。魂を船になぞらえたスケールの大きい歌詞と激しく上下するメロディが特徴的。曲前後の交信SEやクラシック風の間奏など、随所に趣向を凝らしたアレンジが施されている。