ミニ・レビュー
ライヴ盤に次ぐソロ第4作。トラフィックやビートルズなど60年代ロックと、70年代ソウルの融合案が、地味だが力強く、ポップなニュアンスから離れていようという意志がありあり。代表作となろう。実際S.ウィンウッドが(5)(10)に参加。録音もロックぽい。
収録曲
01THE CHANGINGMAN
「導火線に火を点けろ」と自らを鼓舞するモッド・ナンバー。ウェラーの猛るメロディがブレンダン・リンチによるダビーなサウンドと同期した力強い曲調だ。冒頭部がELO「10538序曲」に聴こえた人は、重度の音楽中毒だ。
02PORCELAIN GODS
後ろ向き加減な歌詞に、ウェラーの暗黒面が垣間見えるナンバー。一曲の中でメロディもテンポもテンションも目まぐるしく変化するヘヴィかつ複雑なアレンジは、スティーヴ・ホワイトの堅牢なリズム・キープの賜物。
03I WALK ON GILDED SPLINTERS
その後、共演も果たすドクター・ジョンの1968年発表曲のカヴァー。原曲のブードゥー・サウンドをダビーにアレンジして英国流グリ・グリ・サウンドを構築。意図は不明だが、曲終盤にはレコードの針飛びが再現されているのが特徴的。
04YOU DO SOMETHING TO ME
何度もアレンジを変更した末に完成したのは、メロウなピアノと泣きのギター、そしてソウルフルな歌唱が心を射抜くアダルティなバラード。肴は炙ったイカでいい、そんなしみじみとした気分にさせられる、ほろ苦き傑作。
05WOODCUTTER'S SON
敬愛するボ・ディドリーへのオマージュか、かなり真正面からセカンドライン・ビートに挑戦した土臭いナンバー。ゲストのスティーヴ・ウィンウッドが、軽妙なピアノと流麗なオルガンで楽曲のグルーヴを心地よく輪転させている。
06TIME PASSES...
希代のロック・スターと化す以前のロッド・スチュワートの作品に通じる滋味な味わい。甘すぎない質感のメロディがやけに心地よいバラード・ナンバーだ。いったん曲が終了後、インタールード風ダブ・インストが登場。
07STANLEY ROAD
ウェラーの大好きなノーザン・ソウル風リズムのソウルフルなナンバー。ただし、淡々と野太く弾かれるベース・ラインは、ジュリー・ドリスコールによる「火の車」のカヴァーを参照したそう。なるほど、よく似ている。
08BROKEN STONES
ウェラーのウーリッツァーとスティーヴ・ホワイトの的確なドラミングを軸にしたメロウなギターレス・ナンバー。サザン・ソウルにローリング・ストーンズとスモール・フェイセズのエキスを注入したような、少し塩辛い趣が魅力的。
09OUT OF THE SINKING
スモール・フェイセズの作品を噛み砕いて再構成したような、情感あふれるドラマティックな曲調。まさにモッズ精神を継承する彼ならではの硬軟兼ね備えた見事なラブ・ソングだ。ムダ肉のないバンド・サウンドも力強い。
10PINK ON WHITE WALLS
どっしりとしたリズムなど、米国南部サウンドに本格的に取り組んだ意欲作。軽快な鍵盤プレイで楽曲のオトナ度を高めているのはスティーヴ・ウィンウッド。彼と共演できた興奮を、ウェラーは口笛の音色でご機嫌に表現。
11WHIRLPOOLS' END
叙情詩のような含みを持った歌詞も印象的な7分超えの大曲。太く厚く攻撃的なバンド・サウンドのテンションに、ブレンダン・リンチが手がけるスペイシー・サウンドが融合した、激しく、そして実験的なロック・ナンバー。
12WINGS OD SPEED
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの絵画「シャロットの女」に触発され書かれた曲。英米ロックならぬ、英米教会音楽の融合に挑んだゴスペル・ナンバーで、カーリーン・アンダーソンのあまりに美しい歌声に、聴き手の敬虔値は急上昇!?