収録曲
01STEREOTYPES
近所の視線を気にもせず、煮詰まる夫婦関係の行く末を夫婦交換で解消しようとする、世も末な風景が描かれた歌詞。シンセのエキセントリックな鳴りが誰もが心に潜ませている狂的要素を表現した、毒気いっぱいのモダン・ポップだ。
02COUNTRY HOUSE
メランコリックなメロディにバカ陽気なアレンジを施すことで、無常さを演出しているポップ・ソング。曲の主人公である“人生順風満帆な男”は、ブラーのマネージャーがモデル。休養を欲する歌詞に、彼の心の叫びが。
03BEST DAYS
仕事に追われる都市生活者の姿が描かれたポップ・ソング。これが人生最良の時なんていったら笑われることは理解しながらも、そうでも思わないとやってられない毎日。穏やかなメロディが、歌詞のやるせなさを助長する。
04CHARMLESS MAN
誰からも嫌われている場の空気が読めない男を、直球ギター・ロック・スタイルで揶揄した曲。タイトルがザ・スミスの「チャーミング・マン」に似ているためか、この曲で歌われるのはモリッシーだとする説も根強い。
05FADE AWAY
超過労働で生活がすれ違いがちな夫婦の、何とはなしに始まって、やがて終わる関係を描いた曲。転調に加え、ホーン・セクションや妙なSEを被せたトリッキーな曲調が、夫婦関係が破綻へと向かうさまをジワジワと表現。
06TOP MAN
全編が無感情なムードに覆われたニューウェイヴ風サウンドのナンバー。“個性=アイデンティティ”をテーマにした深い歌詞だが、サビでは西城秀樹「YMCA」ばりに、“♪T・O・P・M・A・N!!” が炸裂。ただし、そこはブラー。あくまでも気だるげに。
07THE UNIVERSAL
希望なき未来に希望を見い出そうとするバラード・ナンバー。ストリングスやホーンの確信犯的に1960年代風な音色が、近未来を歌った歌詞と不思議にマッチ。PVが『時計じかけのオレンジ』のパロディだったのも印象深い。
08MR.ROBINSON'S QUANGO
政府から財政援助を受けている、“自称・政界フィクサー”ロビンソン氏の悪漢ぶりと人格崩壊を描いたグルーヴィなモッド・ナンバー。フリー・メイソンと裏社会を結びつけた歌詞は、デーモンの陰謀史観のたまものか。
09HE THOUGHT OF CARS
“ここではないどこかへ”誰かと一緒に逃げ出したいけれども、考えてみればそんな相手がいないことに気づく、ダークで救いのないナンバー。躁と鬱が交錯したシュールなサウンドは、まさしく主人公の不安定な心中そのもの。
10IT COULD BE YOU
宝くじに当たるか否かで、人生の成否が決まるかのように歌うアップ・テンポのポップ・ナンバー。“今日はハズレだったけれども明日は当たるかもしれないよ”と締めくくる歌詞は、皮肉屋とされる彼らなりの励ましかも。
11ERNOLD SAME
夢心地のサウンドに合わせ、「何も変わりやしない」と優雅に歌う皮肉めいたナンバー。冒頭での酔漢の声はデーモンの迫真の演技によるもので、語りはケン・リヴィングストン議員(2000年にはロンドン市長に)が担当。
12GLOBE ALONE
横並び物欲主義に対する怒りをまくし立てる、パンキッシュなナンバー。その象徴として吊るし上げられるのは、女優のシャロン・ストーンや下着のカルヴァン・クライン。ギターもドラムも怒り沸騰の勢いで鳴っている。
13DAN ABNOMAL
デーモンの名前のアナグラムで作った架空キャラ“ダン・アブノーマル”を通し、ポップ・スターの知られざる日常を描くナンバー。サイケデリックな香りを漂わせた、とろけるサウンドとエッジの効いたビートが美味な曲。
14ENTERTAIN ME
週末も恋人と過ごす時間も退屈に感じてしまう主人公が、「楽しいことないかな」と歌う曲。歌詞の内容は正反対だが、ファンクなベース・ラインのこの曲には、「ガールズ&ボーイズ」に通じるダンサブルな魅力がある。
15YUKO AND HIRO
会社至上主義の日本人を歌ったメロディアスな曲。会社への忠誠で綴られた歌詞も、“♪我々は会社で働いているぅ〜”と歌う日本語コーラスも、これが皮肉だとすればかなり痛烈。聴くうち転職したい気分になるので注意。
16ULTRANOL
軽快なピアノの呼び出しでスタートする、アップ・テンポのポップ・ソング。曲題は未来のドラッグの名称で、歌詞にはその新薬の効能がずらずら列挙されていると同時に、薬物依存による人格崩壊が明るく残酷に歌われる。
17NO MONSTERS IN ME
彼らにしては珍しくハードな曲調は、サウンドが重くなる一方だったオアシスを揶揄したものか。ブラーならではの飄々とした空気を注入することで、軽妙な味わいも同時に演出。勢いまかせで終わらせぬセンスはさすが。