ガイドコメント
モリッシー、ジョニー・マーというアーティストを生み出したバンドのベスト盤。80年代以降の英国ロックを語るに欠かせない存在だ。英国オリジナル・シングル全18曲を年代順に収録。
収録曲
01HAND IN GROVE
83年リリースのデビュー・シングルで、冒頭の哀愁漂うハーモニカ音が強いインパクトを放つ。疾走するビートに絡みつく華麗なギターの旋律とモリッシーの優美で物憂いヴォーカルが交錯し、悲しい愛を克明に描く。
02THIS CHARMING MAN
初のインディーズ・チャート1位を獲得した作品。インパクト大なイントロの流麗なギター音、ポエティックな詞をメロディアスに歌う美しいヴォーカルとしなやかなグルーヴで紡ぐ音像に、最後まで魅了され続ける。
03WHAT DIFFARENCE DOES IT MAKE?
歪んだ恋愛感情と自らが犯した過ちを、自嘲気味に綴ったナンバー。陰鬱な感情を歌い上げる表情豊かなヴォーカル、アルペジオを多用した荘厳なギター音、力強いグルーヴが一体となって、美しく翳りのある世界を描き出す。
04HEAVEN KNOWS I'M MISERABLE NOW
不景気の中でやっと手に入れた仕事に嫌気がさして苦悩するという、モリッシーの閉塞的な心境が反映された作品。暗い歌詞とは裏腹に、音像は明朗で美しくい。流れるように紡ぎ出されるキラキラしたギター・リフに耳を奪われる。
05WILLIAM, IT WAS REALLY NOTHING
ジョニー・マーの卓越したセンスが発揮された、さざ波のように流麗なギターの旋律が圧巻。「ウィリアム」と情熱的に名前を連呼するサビのフレーズは、聴き手に何かを問いかけているようで胸に突き刺さる。
06HOW SOON IS NOW?
しなやかなビートと不穏なノイズ・ギターで始まる冒頭は、インパクト抜群。「今では希望のかけらもなくなった」と絶望感に満ちた心象風景を、美しくメランコリーなヴォーカルと歪んだギターの旋律で描き出す。
07SHAKESPEARE'S SISTER
若さゆえの激情を音像化したナンバー。疾走するビートに絡みつくノイジーなギターと抑揚抑えめに疾走するヴォーカルがアグレッシヴな冒頭から、中盤に拍子が変化してメロウに転じる。そんな劇的な展開に圧倒される。
08THAT JOKE ISN'T FUNNY ANYMORE
アコースティック・ギターのメロウな旋律がゆるいビートに絡みつき、幻想的で耽美なモリッシーのヴォーカルと相まってエレガントな雰囲気を醸し出す。美しいサウンドが、絶望を綴った哀しい詞世界をリアルに描く。
09THE BOY WITH THE THORN IN HIS SIDE
タイトルから鮮烈な印象を放つ、愛に枯渇した少年の心の叫びをリアルに描写した衝撃作。サウンドは明朗で美しく、ファルセットを交えた叙情的なモリッシーのヴォーカルと一体となって、激しい痛みを巧みに描き出す。
10BIG MOUTH STRIKES AGAIN
「僕は人類の一員でいる権利すらない」という自虐的な感情を的確にとらえた、エモーショナルなロック・チューン。多彩な表情を見せるジョニ・マーの鮮やかなギター・ワークと、憂いをたたえたヴォーカルに圧倒される。
11PANIC
チェルノブイリ原発事故を報道した直後の選曲への疑問から始まった、軽薄なラジオDJを批判した作品。子供のコーラスとともに、力強くメロディアスに「Hang the DJ〜」と繰り返すサビのフレーズが鮮烈だ。
12ASK
「何かやってみたいことがあったら僕に聞いて。絶対にノーとは言わないから」というポジティヴなメッセージを高らかに歌った爽快チューン。聴き手にエネルギーを与えるような、明朗かつダイナミックな音像が広がっている。
13SHOPLIFTERS OF THE WORLD UNITE
タイトルを直訳すると「万引きする人々」という衝撃的な意味を持つ、スミス的なユーモアと毒に満ちた楽曲。重低音の響くヘヴィなサウンドと幻想的なハイトーンな歌声が折り重なり、ダークな雰囲気を醸し出している。
14SHEILA TAKE A BOW
モリッシーが初めて恋愛観を綴った作品で、「僕は少女、君は少年」という倒錯した愛の表現が印象に残る。ドラムが凝ったビートを刻む立体感のあるサウンドに、明るくリズミカルなヴォーカルが鮮やかに交錯する。
15GIRLFRIEND IN A COMA
ギターのジョニー・マー脱退が発表された翌月にリリースされた作品。アコースティック・ギターのメロウな旋律に、中盤から荘厳なストリングスが重ねられ、モリッシーの優美で叙情的なヴォーカルと優しく絡み合う。
16I STARTED SOMETHING I COULDN'T FINISH
ヘヴィで歯切れのよいドラミングに、時にノイジー、時に流麗な12弦ギター・サウンドが絡みつく、ダイナミックなロック・チューン。モリッシーにしては珍しく、こぶしを効かせたユーモアなヴォーカルが個性を放つ。
17LAST NIGHT I DREAMT THAT SOMEBODY LOVED ME
87年に発表された、スミス活動中におけるラスト・シングル。もの哀しい冒頭の鍵盤音が鮮烈。アルペジオを駆使した荘厳なギターの旋律、絶望と諦念を歌う恍惚感に満ちたヴォーカルが圧倒的で、胸に深く染み入る。
18THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT
「いつまでも消えない光が存在する」という、彼らの存在そのものを示すようなメッセージに心揺さぶられる、解散後の92年にシングル・カットされた作品。みずみずしいアレンジ、メロディックでエレガントな歌声は秀逸を極める。