サザンオールスターズ / さくら

ミニ・レビュー

けっこうヘヴィな装いも感じさせてくれる作品だ。いわゆる、内面へと自分たちの音楽性を追求していった結果、各メンバーのルーツ音楽が色濃く各曲の中へと現れてきている。良質な歌物集という視点だけじゃなく、もっと深い音楽的な観点で味わってほしい。

ガイドコメント

サザンの12枚目となるオリジナル・アルバム。「LOVE AFFAIR～秘密のデート」などシングル4曲が収録され、アレンジはワルツ風、ボサ・ノヴァ風、ビートルズ風など多彩。原由子のヴォーカル曲ももちろん入ってます。

リサーチ

収録曲

01NO-NO-YEAH／GO-GO-YEAH

アルバム『さくら』のオープニング曲。全編ヘヴィなギターが唸り続けるハード・ロックで、フルート・ソロや桑田の絶叫など、聴きどころ満載。定番の“英語に聴こえる日本語詞”では“ドラえもん”まで登場する。

02YARLEN SHUFFLE～小羊達へのレクイエム～

崩れていく日本の安全神話をテーマにした、8ビートのブラス・ロック。タイトルには“SHUFFLE”とあるがシャッフル・リズムではない。洗練されたメロディから滑らかなギター・ソロまで、ベテランらしい高品位な1曲。

03マイフェラレディ

ムーディなジャズ・バラード。高級感のあるコーラスやセクシーなホーン・セクションなど、魅力あふれるサウンドだが、歌詞はタイトルからもわかる通り極めてエロティック。完璧な楽曲と笑える歌詞のギャップが売り。

04LOVE AFFAIR～秘密のデート

表面的には横浜を舞台にした“不倫ソング”という軟派なムードが漂うが、失った時間を憂うような、哀切を極めたほろ苦い言葉がちりばめられ、大人の涙をさそう名曲だ。ビーチ・ボーイズ風コーラスも素敵じゃないか！

05爆笑アイランド

アグレッシヴなデジタル・ロック。援助交際から頼りない総理大臣まで、日本の世相への憂いを軽快に歌い上げる。真面目なメッセージとそれを笑い飛ばす余裕が交錯する、桑田佳祐の豊かなアーティスト性が垣間見られる。

06BLUE HEAVEN

時の洗礼にも耐える切ないメロディを持った名曲。十年先も二十年先も、きっとこの曲が聴きたくなって、アルバム『さくら』を棚から引っぱり出すことになるだろう。大人になればなるほど歌詞が心に沁みるのだ。

07CRY 哀 CRY

42枚目のシングル「PARADISE」にカップリング収録されたロック・ナンバー。ソフトなAメロからキャッチーかつハードなサビ部分への豪快な曲展開と、美しい日本語をふんだんに採り入れた歌詞が魅力。

08唐人物語（ラシャメンのうた）

原由子がメイン・ヴォーカルの落ち着いたナンバー。黒船が来航した明治維新を舞台に、外国人のめかけとなった日本女性の心情を綴る。原の温もりのある歌声と純和風の美しい響きを持つ歌詞が、独特の世界観を演出している。

09湘南SEPTEMBER

3拍子を基調としたミディアム・バラード曲。いくぶん力の抜けた桑田佳祐のソフトなヴォーカルとストリングスの美しい音色が魅力。郷愁感を誘うハーモニカのサウンドが夏の終わりの寂しさを象徴しているかのよう。

10PARADISE

42枚目のシングル曲。ファンキーなワウ・ギターで始まり、打ち込みトラックをベースにしながらサックス・ソロやポエトリー・リーディングなど多彩な展開を見せる。詩的な表現が巧みなメッセージ性溢れる歌詞も秀逸。

11私の世紀末カルテ

ギターの弾き語りナンバー。サラリーマンの視点で綴られた歌詞は、自虐的とさえ感じられるほど正直で本質を突いた言葉が並ぶ。桑田佳祐の洞察力と高い表現力が実を結んだ、アルバム『さくら』の中でも特に聴き応えのある1曲。

12SAUDADE～真冬の蜃気楼～

「夏をあきらめて」の系統に属するラテン・テイストのメランコリックなポップ曲。桑田佳祐らしい歌謡曲調のメロディと土臭さの抜けたヴォーカルが魅力。安定したバンドのアンサンブルと滑らかなホーンが実に心地良い。

13GIMME SOME LOVIN'～生命（いのち）果てるまで～

派手やかなシンセ・サウンドとディストーション・ギターが印象的なロック・ナンバー。桑田らしいエロティックな歌詞だが、マゾ的な表現が多いのが本曲の特徴。メロディも実にキャッチーで申し分のない仕上がり。

14SEA SIDE WOMAN BLUES

ビートたけしも深夜番組でカヴァーした、昭和のムード歌謡的雰囲気が漂う惚けたバラード。「愛という字は真心で恋という字にゃ下心～」というフレーズには、誰もが納得させられた。

15 （The Return of）01 MESSENGER～電子狂の詩（うた）～（アルバム・ヴァージョン）

39thシングル曲のアルバム・ヴァージョン。シングルとはまったく異なるアレンジで、サザンには珍しいドラムンベース風打ち込みサウンドまで披露。歌詞のテーマは高度情報化社会だが、どこかSFチックな印象を受ける。

16素敵な夢を叶えましょう

大作アルバム『さくら』のラストを飾った穏やかなバラード。「南十字に戯れる星座（ほし）に願いを」という歌詞に､リリース当時20周年を迎えたサザンのメンバーから、ファンへのメッセージが込められている｡

タイアップ

アーティスト

サザンオールスターズ
日本のロック・バンド。“サザン”の愛称で親しまれる。青山学院大学の学生で結成され、1978年に「勝手にシンドバッド」でデビュー。シャレた詞と独特のヴォーカル、軽快なサウンドで脚光を浴びる。翌年の「いとしのエリー」の大ヒット以降、日本を代表す……

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