ミニ・レビュー
牢獄化された社会に牙をむいたクラッシュ、初のベストCD。当然『カット・ザ・クラップ』からは1曲も選曲されてない。初CD化が8曲収められているが、いずれもシングルで出ていたもの。ただし[2]の(6)は限定プレミアムEPに収録のインタビュー付きだ。
ガイドコメント
UKパンクを語るうえでははずせないクラッシュ。解散から13年経ち、未発表ライヴ盤をただいま編集中と嬉しいニュースも入っている。本作は、既発の2枚組ベスト&レア・トラック集の再発。
収録曲
[Disc 1]
01THE MAGNIFICENT SEVEN
刻々と過ぎていく時間の中での焦りやいら立ちをジョー・ストラマーが淡々と歌う。ラップのようでそうでもない、ディスコ調でありながらどこか陰のある魅惑的なナンバー。聴けば聴くほどにクラッシュの独特の世界へと引き込まれるはずだ。
02ROCK THE CASBAH
82年のアルバム『コンバット・ロック』からのシングル曲。軽快なピアノに思わず踊り出したくなるようなダンサブルな曲調と口ずさみやすいサビのメロディにより世界中で大ヒットした。作曲がドラマーのトッパー・ヒードンというところも興味深い。
03THIS IS RADIO CLASH
ダブの要素を採り入れつつもファンキーなリズムで魅了する、実験精神にあふれたナンバー。しかし、サウンドは彼ららしいシャープさをもってまとめられており、目新しさと自分たちの持ち味をうまくブレンドさせている。
04SHOULD I STAY OR SHOULD I GO
05STRAIGHT TO HELL
06ARMAGIDEON TIME
07CLAMPDOWN
「クランプダウン(背後からのねじ上げ)みたいな労働の中で、最初の殺人(自分を殺す)をする」 と、労働者たちの苦しみを痛烈に吐き出したナンバー。曲全体を力強く牽引するドラムが印象的で、詞の深刻なメッセージをより強く打ち出している。
08TRAIN IN VAIN
どうしようもなく落ち込んだやるせない感情を、ミック・ジョーンズがノリ良く歌うダンサブルなナンバー。発表当時のアナログ盤『ロンドン・コーリング』では隠しトラック扱いだったが、米国でシングル・カットされ、トップ40に入る大ヒットを記録。
09THE GUNS OF BRIXTON
怪しいベース・ラインとニヒルな歌声が、曲全体にどことなく意味深で独特な空気を漂わせている、ゆったりとしたレゲエ・ナンバー。要所で「ボヨヨ〜ン」と気の抜けるような音が入っていたりと、実験的な試みを感じる楽曲。
10I FOUGHT THE LAW
自動車のCMに使われたことで、再び脚光を浴びることとなったクラッシュの代表曲(The Cricketsのカヴァー)。社会派な歌詞とは対照的な、チャキチャキのダンス・ナンバー。やけにド派手なオープニングも○。
11SOMEBODY GOT MURDERED
12LOST IN THE SUPERMARKET
甘美なメロディとミック・ジョーンズのささやくような歌声が印象的なナンバー。ジョー・ストラマーが少年時代のミックについて書いたという詞も、“スーパーマーケットで迷子”というタイトルからして興味をそそられる。
13BANK ROBBER
ジョー・ストラマーの哀愁漂う歌声が、体の奥深くまで入り込み、そして染み込んでいく極上のレゲエ・ナンバー。以後レゲエ音楽に傾倒していった彼らのアーティスト性がより濃く表われた作品。
[Disc 2]
01(WHITE MAN) IN HAMMERSMITH PALAIS
うっとりと聴き入ってしまう甘美なコーラス、レゲエ調の切ないメロディ、そして響きわたる哀愁たっぷりのハーモニカ。どこを切り取っても美しい、エモーショナルなミディアム・ナンバー。
02LONDON BURNING
03JANIE JONES
04TOMMY GUN
オープニングからパワフルかつダイナミックに攻める、迫力あるパンク・ナンバー。ジョーの荒々しい歌声や、ミックのメロディアスなギター・プレイ、トッパーのマシンガンを連想させるスピーディなドラムなど、すべてがエキサイティング!
05COMPLETE CONTROL
上手くいかないもどかしさ、溜まった鬱憤。それらをあふれんばかりのエネルギーをもって叩きつけた、荒々しく攻撃的なナンバー。レコード会社との確執を背景にしたといわれ、その不器用なまでの実直な姿勢が多くのファンの共感を得た。
06CAPITAL RADIO ONE
07WHITE RIOT
アグレッシヴで荒々しいサウンドと「暴動を起こしたい」というラディカルで強烈なメッセージ。社会に対し不満を持つパンクスなどから爆発的な支持を得て、世界中にクラッシュの名を轟かせた、歴史に残る一曲。
08CAREER OPPORTUNITIES
09CLASH CITY ROCKERS
79年のデビュー作『白い暴動』のUSヴァージョンで、『パール・ハーバー'79』の1曲目に収録。とげとげしいギター・サウンドと、がなるようにして歌うジョー・ストラマーの感情剥き出しの迫力に圧倒される、荒々しく攻撃的なナンバー。
10SAFE EUROPEAN HOME
11STAY FREE
12LONDON CALLING
力強いカッティングから始まるイントロがあまりにも有名な、クラッシュを象徴する一曲。エッジの鋭いサウンドとジワジワと刺激するスマートな曲構成は、何度聴いても飽きさせない中毒的な魅力を放っている。
13SPANISH BOMBS
スペイン戦争をテーマにした、政治的メッセージの強いストレートなロック・ナンバー。ジョー・ストラマーのどこかやるせない歌声が、シリアスな歌詞とあいまって、骨太なサウンドの中でもの悲しく響いている。
14ENGLISH CIVIL WAR
突き刺さるようなギター・サウンドと、パワフルで勢いのあるドラムが印象的な、正統派ロックンロール・ナンバー。“英国内乱”をテーマにしたメッセージ性の強い詞を、反骨精神剥き出しでシャウトするジョー・ストラマーの歌声も存在感たっぷり。
15POLICE & THIEVES