ミニ・レビュー
トム・ヴァーラインのケイレンのような歌とギター。それはまさにNYパンクの象徴であり、いまだに時代の空気を凍りつかせる威力を持っている。この2作目はデビュー作に比べると、ややテンションが低いが、それでも永遠に語り継がれるであろう名盤だ。
ガイドコメント
美しい狂気を見事に表現した、NYパンクの寵児テレヴィジョンの2作目。アンダーグラウンドの脈動を、そしてパンクの発展性を感じさせながらもこの後バンドは解散してしまう。
収録曲
01GLORY
カントリー調の土臭いサウンドで聴かせる緩やかなロックンロール。ストレートで毒気のないサウンドには賛否両論が巻き起こったが、鋭利なギター・リフが随所に光るなど、テレヴィジョンらしさは十分に見てとれる。
02DAYS
トム・ヴァーラインとリチャード・ロイドが共作したナンバー。ギタリスト二人が顔を突き合わせただけあり、お互いの間を行き来するメロディは飛び抜けて美しい。シンプルなサウンドにそっと花を添えるようなコーラスも素晴らしい。
03FOXHOLE
歪んだギター・サウンドが全面的に押し出されたストレートなロックンロール。フォーク・ロックな骨太なサウンドとサビでの「フォックスホール! フォックスホール!」というコーラスが、リスナーのハートを煽りまくる。
04CAREFUL
ピアノを取り入れたカントリー・サウンドで聴かせるポップ・チューン。ビーチ・ボーイズを思わせる能天気なコーラス・ワークやハンドクラップなど、これでもかとハッピーな要素に彩られたサウンドが心地良く響いている。
05CARRIED AWAY
チャイニーズ・フレイヴァーのキーボード・サウンドが華麗なスロー・バラード。儚く甘いメロディと囁くようなトムの歌声が寄せては返す波のように漂っては、いつの間にか消えていく。誰もが持っているノスタルジーを呼び起こす切ないナンバーだ。
06THE FIRE
重々しく陰鬱としたダウナーなスロー・ナンバー。バラードというよりも、散文的な詩の世界にメロディをつけた一種のミュージカルのようなものと考えた方が自然。テルミン風のキーボードのフレーズが悲劇的に響くことでよりドラマ性を際立たせている。
07AIN'T THAT NOTHIN'
リズミカルなドラムとギター・カッティングが心地良いロックンロール・ナンバー。力強くタフなサウンドからは、ブルース・スプリングスティーンなどのストレートなアメリカン・ロックも想起させられる。
08THE DREAM'S DREAM
華やかなメロディが心地良いスロー・ナンバー。6分以上ある比較的長尺の曲だが、そのほとんどがバンド・セッションで構成。トムの歌は添え物程度に入っているが、彼らの魅力である濃密なバンド・セッションを味わうという意味で、聴き応えも十分な曲だ。