ミニ・レビュー
“公園どおりのユートピア”という題名はあまりに言いえて妙。珠玉のポップ・チューンをそろえた傑作の登場だ。ああ、ジャケット写真のように晴れわたった青空を思わせる楽曲の瑞々しさよ。(1)のイントロが鳴った瞬間からあなたも本作の虜になるはず。★
ガイドコメント
ポップなのにどこかセンチメンタル、心の襞という襞を刺激するメロディが特徴のファウンテインズ・オブ・ウェイン。待望のセカンドでも、ゾクゾクするほどの美メロを聴かせてくれます。
収録曲
01UTOPIA PARKWAY
軽やかなバンド・セッションに乗せて鼻歌のように歌われるヴォーカルとローファイ感漂うギター・リフが、絶妙な脱力感を生み出しているポップ・ナンバー。肩の力の抜けたサウンドは、いい意味でお気楽ソングと言えるだろう。
02RED DRAGON TATTOO
恋におぼれた男の浮ついた気持ちを歌ったナンバー。初期ビートルズのようなグッド・ミュージックとコーラス・ワークが絶妙なポップ・ソングで、スペイシーなエフェクトが程よいスパイスとして全体を盛り上げている。
03DENISE
へヴィなギターが炸裂するパワー・ポップ・チューン。疾走感のあるキャッチーなメロディとハンドクラップが心地良い。“ビートルズ・ミーツ・ウィーザー”とも言うべきサウンドの甘酸っぱさが、胸いっぱいに広がっていく。
04HAT AND FEET
ノスタルジックなカントリー調のサウンドと浮遊感漂うメロディが、独特のポップ感を演出しているメロウなナンバー。アダムのとろけるように甘い歌声に、思わずうっとり聴き惚れてしまう。
05VALLEY OF MALLS
重いギター・リフとアコースティックの軽いリズム・ギターによる耳当たりの良いサウンドに、ニューウェイヴ調のチープなキーボードが花を添えるメロウなナンバー。おとぎ話のような歌詞ともの寂しげなメロディが相まって、独特の切なさを生み出している。
06TORUBLED TIMES
クリアなアコースティック・ギターの旋律が美しいナンバー。クリスの切なげな歌声も素晴らしいが、伴奏・間奏での浮遊感のあるコーラス・ワークが曲全体の雰囲気を大きく盛り上げていく。
07GO HIPPIE
ファズ・ギターとワウの効いたリフが印象的なミドル・チューン。後半でハード・ロック調のギター・ソロが披露されたりと、サウンド面はかなり重めだが、キャッチーなメロディが曲調をクール・ダウンし、本作を見事にポップ・ロックとして成立させている。
08FINE DAY FOR A PARADE
鉄琴の音色が切なく響くメランコリックな一曲。詞の内容も老婆の孤独を描いており、しっとりとした哀愁を曲全体に振りまく。コーラスに参加しているロン・セクスミスの歌声が切なさに拍車をかけている。
09AMITY GARDENS
図太いドラムと煌めくギター・サウンドがまぶしいギター・ポップ・チューン。伸びやかなメロディとドリーミーなハーモニーは、まるで太陽の光のよう。ポップの良心がリスナーの胸を射抜く、胸キュンなナンバーだ。
10LASER SHOW
初期ビートルズを彷彿とさせる、1960年代フレイヴァー満載のロックンロール・ナンバー。8ビートにしゃがれたヴォーカル、軽快に鳴らされるピアノの連弾に、古き良きロックの輝きが宿っている。
11LOST IN SPACE
ファズ・ギターが炸裂するパワー・ポップ・チューン。1960年代調のキャッチーなメロディを、ギターの歪みと疾走感で現代風に調理し、そこにキーボードのフレーズを加えることでひねくれポップ感を演出。これぞFOWとも言うべきナンバーだ。
12PROM THEME
高校の卒業パーティをモチーフにした作品。ピアノの弾き語りから始まるイントロから、ドラマティックな展開へと至る感動的なバラード。3分という短い時間の中に、青春の輝きとほろ苦さがすべて詰め込まれているかのようだ。
13IT MUST BE SUMMER
歪んだギターが疾走感をともなって駆け抜けていく直球ギター・ポップ。甘酸っぱいメロディに絡み合う美麗なコーラス・ワークが全編にわたってちりばめられている。タイトル通り、夏にぴったりの爽やかなポップ・ソングだ。
14THE SENATOR'S DAUGHTER
パーカッションとアコースティック・ギターを主体とした軽やかなポップ・ナンバー。ギターの音色から歌声までの一音が完璧にポップに仕上がっているのはさすが。贅肉を省いた分、メロディメイカーとしての力量がはっきり証明されている。
15I KNOW YOU WELL
アコースティック・ギターとコーラスが炸裂するお得意の甘いポップ・ソング。日常の幸せと生きる喜びを最大限に描いた歌詞は、サウンドとともにハイクオリティ。何気ない日々をここまで素敵に描けるセンスはかなりのものだ。