ガイドコメント
99年発表の4thアルバム。エンジニアを一切起用せずすべてを自分達で作りあげたため、サウンドはかなりごつごつしたものになっている。しかし、それこそ彼らの貫くパンクの精神にぴったりの怒涛のロック・アルバム。
ミニ・レビュー
いつもと変わらぬ彼らがいる。明らかにガシガシ突き進んでる彼らがいる。それが感動的だ。タイトル曲がいい。「ダビンチのひらめきとライト兄弟の勇気で/僕らは空を飛ばないかわり月にロケットを飛ばす」こういうザ・ハイロウズが大好きだ!!!!
収録曲
01罪と罰
4thアルバム『バームクーヘン』の冒頭を飾るハード・ロック・ナンバー。“テロリスト”から“ションベン”まで、辛らつな単語を用いた攻撃的な歌。ハーモニカの炸裂ソロやスリリングに展開する3番などが聴きどころ。
02チェンジングマン
アップ・テンポのシャッフル・ロック。マイナー基調の情感豊かなメロディとかき鳴らすようなアコギのバッキングが特徴的。Aメロ〜サビを2回繰り返すだけのシンプルな曲構成によって、主旋律が最大限引き立てられている。
03二匹のマシンガン
甲本ヒロトの親しみやすいメロディが光る熱いロック・ナンバー。ロックらしい重めのグルーヴとマーシーのギター・ソロ(特に前半)が聴きどころ。“二丁拳銃”を想起させるタイトルは、ヒロトとマーシーのことのようだ。
04モンシロチョウ
可愛らしいタイトルだが、内容は極めて攻撃的なミディアム・ロック・ナンバー。“ポコチン”から“第三次世界大戦”まで、パンキッシュで尖った言葉が並ぶマーシーらしい歌詞と、タイトな8ビート・グルーヴが魅力。
05ハスキー (欲望という名の戦車)
ハイロウズを代表する人気ナンバーとなった13枚目のシングル曲。キャッチーだが決して媚びることのない美しいメロディと疾走するロック・ビートが魅力。ピアノ・ソロの直前や曲終わりの“ッシャー!”にも注目。
06ダセー
「なまけ大臣」や「Happy Go Lucky」にも通じるダメな自分を歌ったファンク・ロック。ドラムやオルガンがシャレたプレイを披露するなか、マーシーのギター・ソロが心なしか“ダサく”聴こえるのが面白い。
07見送り
落ち着いたリズムのポップ・ロック・ナンバー。外国へ立つ“キミ”を空港で見送る寂し気な歌で、アグレッシヴな楽曲が多いアルバムに緩急を付けている。バンドだけで制作したアット・ホームな雰囲気が味わいどころ。
08死人
リズミックなブルース・ロック。死人よりも生きている自分の方がマシだと訴え、死後の世界をも否定する甲本ヒロトらしいユニークな歌。裏返せば、生きているうちが華だという、一種の応援ソングとも受け取れる。
09彼女はパンク
爽やかなポップ・ロック・ナンバー。ファルセットのコーラスやハンド・クラップなど、めっぽう明るいサウンドが特徴的。軽い調子で歌う“カッコいいじゃん”など、えせパンク・ファンを嘲笑しているようにも受け取れる。
10ガンスリンガー
シンプルなギター・フレーズを繰り返すポップ・ロック・ナンバー。遠くで響いているようなコーラスとベースをフィーチャーした間奏が特徴的。巻舌の“鉛の流線形”や銃声のような“ガン!”など、甲本ヒロト節も全開。
1121世紀のフランケンシュタイン
軽快な16ビートや疾走するロックンロール調など、多彩なリズム・チェンジを展開するナンバー。ここぞとばかりにゴキゲンなギター・ソロを披露するマーシーが印象的。歌詞中の“21th〜”は正確には“21st”。
12ガタガタゴー
アルバム『バームクーヘン』中唯一のマーシーのヴォーカル曲。十八番のコテコテ・ブルースで、彼ならではのダミ声で大いに怒鳴り散らす。甲本ヒロトのハーモニカ・ソロやピー音が入るほど尖った歌詞にも注目したい。
13笑ってあげる
重めのブルース・ロック・ナンバー。自分を磨くためと安易な修行をし、偉そうなことを吹聴する連中を皮肉たっぷりに批判する歌。“わっはっはっはっは〜”と歌う終盤のコーラスが見事。自分探しの旅をしたい人必聴。
14バームクーヘン
4thアルバムのタイトル曲。2分に満たない短いナンバーだが、ピロピロと高音を鳴らすシンセやシンプルなメロディなど、甲本ヒロトのチャーミングな一面がよく出ている。人間らしさを肯定したポジティヴな歌詞もオツ。