ミニ・レビュー
ジョン・フルシアンテ復帰後初の音源となる4年ぶりの作品。オープニングこそ衝撃的だが、いわゆるインパクト勝負の楽曲はむしろ少なく、ミクスチャー・ロックというよりカリフォルニア流ロック集大成という感じ。具体的にいえばドアーズの匂いも。★
ガイドコメント
世界のロック・シーンの最前線で活躍するバンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ。4年ぶりとなるこのアルバムは、世界同時発売の超注目盤。見逃せないぞ!
収録曲
01AROUND THE WORLD
前作から4年のインターバルを経て発表された『カリフォルニケイション』のオープニング・ナンバー。4年の間、山にこもって修行にでも励んでいたかと思わせるほど、筋骨隆々としたファンク・サウンドに興奮。新生レッチリ復活ののろしだ。
02PARALLEL UNIVERSE
宇宙的視野で描かれたスケール大の歌詞を、メタル風のドラマティックな起承転結が展開されるヘヴィ・サウンドに乗せ歌唱。歌詞で登場するガラガラヘビそのままに、ジョンのギターがぐねぐねと動き回っている。
03SCAR TISSUE
全米9位、全英15位のヒットを記録したナンバー。これまでに負った心の傷やドラッグや孤独について歌われた私小説的な歌詞を、イントロからナイーヴなメロディが彩っている。レッチリ屈指の感傷的ナンバーだ。
04OTHERSIDE
決別したドラッグの誘惑に立ち向かうアンソニーの姿が歌われているナンバーで、いつになく暗めのサウンドが歌詞の深刻さに拍車をかけている。力強いベース・ラインと柔和なギター・ラインを対比させた構成が効果的だ。
05GET ON TOP
おバカな歌詞からしてレッチリらしさいっぱいのファンク・ナンバー。パンクとファンクを行き来するフリーのベースに聴き惚れ、ジミ・ヘンドリックスばりのギター・プレイでクールなフレーズを弾くジョンに感嘆してしまう。
06CALIFORNICATION
枯れに枯れたメロウなメロディが切なく響く『カリフォルニケイション』(99年発表)のタイトル曲。細く鳴くようなジョン・フルシアンテのギターが、カリフォルニアへの悲哀をよりいっそう引き立てている。
07EASILY
歌詞に少林寺の思想を盛り込みながら、戦争の意味を問いかける“少林ファンク”。骨組みがガレージ・パンクのようなトラックを、揺るがぬ演奏力で重厚なメロウ・ナンバーへと昇華。ジョンのギター・ソロが会心の鳴りをみせる。
08PORCELAIN
ドラッグに依存することの後悔と倦怠が内包された気だるげなナンバー。おそらくはアンチ・ドラッグの観点で書かれた曲なのだろうが、人によっては逆に試したい欲求を催しそうな曲。彼らにしては珍しく曲調がジャジィ。
09EMIT REMMUS
“サマー・タイム”を逆から読ませたタイトルのヘヴィ・ロック・ナンバー。地元カリフォルニアの魅力と対比させるためか、キンクスでもない彼らがロンドンの描写に挑んでいておもしろい。ノイジーなギターが耳に痛い。
10I LIKE DIRT
スピリチュアル化も目ざましいアンソニーが、地球の素晴らしさを讃えるファンク・ラップ。もちろん単なる讃歌では終わらず、性的隠喩・直喩を絡ませながらレッチリ流に展開。奔放なギター、緊密なリズム隊ともに個性がよく出ている。
11THIS VELVET GLOVE
ドラッグ中毒人生から解脱したアンソニーが、ドラック耽溺時代を省みながら、恋人への想いを打ち明けるラブ・ソング。歌詞中には、こちらもドラッグ中毒にあるジョンの言葉「地獄の上で生きろ」が引用されている。
12SAVIOR
クリームの「ホワイト・ルーム」とジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」が合体したようなサイケデリック・ナンバーで、サビではビーチ・ボーイズ風コーラスも顔をのぞかせる。高い演奏力を駆使した変拍子の連続が見せ場。
13PURPLE STAIN
仮に彼らが分別をわきまえたオトナになろうとも、セックスを歌うことを止めないだろう。淡々とした風情のサウンドをバックに、またも性的な内容のラップを展開。モンティ・パイソンにも言及しているのが意外な気もする。
14RIGHT ON TIME
エレクトロな味つけが施されたディスコ・ファンク・ナンバー。映画『メリーポピンズ』での呪文“スパーカリフラジリスティック”を引用したラップが、ゆるやかなメロディの合い間に息もつかせぬ速度で挿入される。
15ROAD TRIPPIN'
アコースティック・ギターとチェンバリンのサウンドを基調としたロマンティックなナンバー。高まるバンドの名声とドラッグへの決別が歌われているらしい歌詞には、デヴィッド・ボウイ『ハンキー・ドリー』の名も登場する。
16GONG LI