ミニ・レビュー
ボウイの最高傑作として、そればかりでなく70年代を代表するロック・アルバムのひとつとして挙げられる作品。このアルバムがもつ意義は、ロックがもつ神話的な世界を、メタファーの連なりとして見せていることにある。
ガイドコメント
ああ名盤。ロックという芸能の本質を見抜いたバイブル。ここからロックなんてちっとも変わってません。捨て曲一切なしのトータル・アルバムで、ラスト「ロックンロールの自殺者」は最高!
収録曲
01FIVE YEARS
ピアノによるシンプルなアレンジが秀逸なロック・バラードの名曲。叙景的な歌詞とストレートなメロディ、そしてラストに向けて激しさを増すデヴィッド・ボウイの歌が、哀愁に満ちたストーリーを感じさせる。
02SOUL LOVE
ラテン色のミドル・テンポのパーカッションが印象的なのんびりとした1曲。その中でもサビにのみ入ってくるオーヴァードライヴのギターは、展開にメリハリをつけ、全体を盛り上げる上で重要な役割を果たしている。
03MOONAGE DAYDREAM
アンプラグドなギターとハード・ロック的なエレキ・ギターの2本が効果的に使い分けられた1曲。ピアノやストリングスによりヴォルテージが高まった頂点でギター・ソロが入ってくる構成は王道的だが、やはり盛り上がる。
04STARMAN
ストリングスなどのオーケストレーションなアレンジが施されたロック・オペラの名曲。しかし、その核にあるのはアコースティック・ギター一本で演奏しても成立する良質なソング・ライティングだ。
05IT AIN'T EASY
素朴でミニマルなギターのフレーズは、なかなか思い通りに進まない困難な道のりを歌った詞の世界観を表しているようだ。しかし、サビのハードなエレキ・ギターは、その中でも力強く生きていこうとする意志を感じさせる。
06LADY STARDUST
デヴィッド・ボウイの自伝とも思える苦難に満ちた歌詞を、ほぼピアノとドラムのみのシンプルなアレンジで表現している。ヴォーカルは力強く、歌いようによっては暗鬱なだけのこの曲にポジティヴな力を与えている。
07STAR
リズミカルなピアノ・フレーズと女声コーラスがミュージカルのような躍動感のある曲調を作り上げているナンバー。しかし、終盤はスロー・テンポになり、しっとりとしたピアノ・プレイと歌唱に転じ、美しい余韻を残している。
08HANG ON TO YOURSELF
2カウントから8ビートで突っ走る痛快な1曲。男気あふれるロックン・ロールの王道を行きながら、デヴィッド・ボウイの中世的で危うげな色気のあるヴォーカルがこれでもかと炸裂している。
09ZIGGY STARDUST
抽象的でファンタジックな歌詞の中に少しずつ人間の悲哀を忍ばせてた、高度な表現をした歌詞が印象的。3ピースで演奏されるストレートなロック・サウンドで、哀愁に満ちた歌詞の世界観を損なうことなく表現している。
10SUFFRAGETTE CITY
8ビートのクラシックなロックン・ロール調のナンバー。ロールするギターと疾走感のあるドラミングに、皮肉や風刺とともに表現した、ボウイが創造した“矛盾に満ちた街”を駆け抜けるスピードを感じる。
11ROCK'N'ROLL SUICIDE
ギター1本の弾き語りのような冒頭からストリングスやコーラスなどのオーケストレーションが壮大に展開していく。沈痛ではかなげな歌詞が、最後に生きる希望へと変わっていくのにシンクロしていく、非常に技巧的な1曲だ。