ミニ・レビュー
さすがは900万枚を売った国民的歌手。大物にしか出すことを許されない、クリスマス・アルバムが登場した。もともとヴォーカルは“せせらぎ系”だったから、清らかに歌い上げても違和感はない。スターの役割を心得ているあたり、これはこれで立派。
ガイドコメント
彼女の大ヒット・アルバム『スピリット』を愛聴中のファンの皆様に、ジュエルから嬉しいクリスマス・プレゼント(かなり早いけど)。クリスマス・ナンバーを中心になるという本作は、心厳かに聖夜を過ごしたい人には最適な1枚です。
収録曲
01JOY TO THE WORLD
クリスマスの定番中の定番曲を、壮大なクラシック・ストリングスとコーラスをバックに、堂々と歌い上げる。全編を通して紡がれる、美しいアコースティック・ギターのアルペジオが気持ちいい。
02O HOLY NIGHT
賛美歌を爽やかに美しく、荘厳な雰囲気を全編に称えたアコースティックなバンド・アレンジによってシンプルに歌い上げている。誰が聴いても「キレイだ」と思える、どこまでも美しいメロディとヴォーカルがたまらなく魅力的なナンバー。
03SILENT NIGHT
誰でも知っている曲をカヴァーするほど難しいことはない。この有名曲を、てらいなく、気負うことなく淡々と歌い上げる彼女の、リスナーを圧倒する素晴らしい歌唱力が最大の聴きどころ。シンプルだが、だからこそ美しい。
04WINTER WONDERLAND
軽やかにキュートに、原曲の雰囲気を損なわずに真正面から取り組んだ、バンド・アレンジの定番曲。それでも、ところどころ歌い方を変え、夏の雰囲気を採り入れたスライド・ギターを用いるなど、彼女らしさ曲として打ち出す工夫がなされている。
05O LITTLE TOWN OF BETHLEHEM
原曲そのままの良さを最大限に引き出した、神聖な気持ちにさせられる賛美歌のカヴァー・ヴァージョン。ピアノとストリングスのみをバックに従え、シンプルにまとめている。優れたヴォーカル・ワークを堪能できる。
06AVE MARIA
ハープの繊細なアルペジオをバックに、オペラ歌手顔負けのクラシカルなヴォーカル表現で、静かに優しく歌われる超有名曲のカヴァー。他のカヴァーとの違いは、ただ、その歌声に聴き惚れてしまうという、圧倒的な存在感だろう。
07HARK! THE HERALD ANGELS SING
アルプスの高原にトリップしたかのような透明感あふれるフルートのイントロから、ギターのアルペジオを伴奏にしたシンプルなアレンジへと導かれる歌声が印象的。清潔感と透明感、美しさと荘厳さ、といった風情が楽しめるナンバー。
08RUDOLPH THE RED-NOSED REINDEER
聴こえるのはたったふたつ。メインを歌う彼女のヴォーカルと、下のパートでハーモニーを加える彼女のヴォーカル。たったひとりでの多重録音で、どこかジャジィでどこかゴスペルチックに「赤鼻のトナカイ」を表現している。
09FACE OF LOVE
99年に書かれたジュエル自身の手によるバラード・ナンバー。低音から高音まで、スムースに運ばれる美しいメロディと、カンペキなコーラス・ワークが荘厳な雰囲気を醸し出す。真実の愛を囁くように歌う彼女の声が、いつしか天使の歌声に聴こえてくる。
10MEDLEY; GO TELL IT ON THE MOUNTAIN|LIFE UNCOMMON|FROM A DISTANCE
ラグタイム風のピアノとハンド・クラップのイントロから、8ビートのバンド・サウンドへ。伝統的な賛美歌が現代風のアレンジで蘇った。ヴォーカルはどこか気だるく脱力した風を装いながら強い意志を感じさせる。賛美歌と自作曲のメドレーだが、自然な流れがお見事。
11I WONDER AS I WONDER
わずか2分弱の世界。彼女自身による多重録音の2声コーラスのみのシンプルな表現でありながら、唯一神・イエスにひざまずき、聖なる信仰心を忠実に歌声に乗せるこの曲を聴けば、キリスト教徒ならずとも感じるモノがあるはず。
12GLORIA
バッハのクラシック・ナンバーからインスパイアされて書いたという歌詞は、全編ラテン語。腹の底から頭のてっぺんへと高らかに抜けていくような錯覚を感じさせる歌い方は、オペラ歌手のもの。正統派のヴォーカルを堪能できる1曲だ。
13HANDS
荘厳なストリングスと聖歌隊によるコーラスをアレンジに加え、全面的にクリスマスの雰囲気を醸し出す別ヴァージョン。重く立ちこめるチェロの音色から一転、明るいオーボエや鐘の音色が聴こえてくるや気分は一瞬でクリスマスへ。神聖な気分に浸れるナンバーだ。
14LIFE UNCOMMON
アコースティック・ピアノの伴奏をバックに、シンプルに淡々と歌い上げる、聖なる1曲。コーラス隊と合流するサビからは辺り一帯がブロードウェイに早変わりしたような雰囲気に。シンプルなロック・アレンジに様変わりし大団円を迎える、壮大なポップ・ナンバーだ。