ミニ・レビュー
一度聴くだけで印象に残るリズムと、恋愛の移ろいゆくさまを季節や風景とともに切り取っていく詞は健在。その変わらない姿勢に喜びを感じる。一方、Kardelのラップを入れた(1)やアラブ風音楽の(4)なども新鮮で、そこにも彼女の色が存在しているのはさすが。
ガイドコメント
今作で通算30作目(おぉ!!)となる大御所の最新アルバム。『スユアの波』以来、約2年ぶりとなるオリジナル・アルバムなだけに、ファンの期待も最高潮。“ミクスチャー”なるテーマを掲げた新作なだけに、各種サウンドの異種交配が聴けるはず。ご期待あれ。
収録曲
01Now Is On
R&B/ダンス風ビートを特徴とするオープニング・ナンバー。今という瞬間を精一杯生きようというポジティヴなメッセージ・ソング。インパクトの強いサビ・フレーズと終盤のファンキーなラップが聴きどころ。
02恋は死んでしまった
純度の高い本格的ギター・ロック。“2度ときみに会えないよ”と恋に終止符を打つナンバーで、歌も歌詞も実にロックらしいのが特徴。特にかすれるような声にヴィブラートをかけた、サビ部分のヴォーカルが魅力的。
03巻き戻して思い出を
空港で恋人を見送る悲しいシチュエーションを綴った、軽快なラテン・ナンバー。1番と2番の間に1回だけ披露される短いブリッジ部分やエンディングのジャジィなピアノ・ソロなど、聴きどころ満載の贅沢な1曲。
04Raga#3
アラビアン・テイストのハード・ロック・ナンバー。「砂の惑星」以来続く民俗系シリーズで、ユーミンの自由奔放なヴォーカルが炸裂。ファンタジックで愛に満ちた歌詞も多彩なアレンジも、歌に負けないほど完成度が高い。
05Blue Rain Blue
エスニック・ダンス・ポップス。ブラジリアンを中心にスクラッチ、打ち込みビート、各種打楽器を取り入れた賑やかなサウンドが魅力。それでいてメロディも歌詞も安定しているという、申し分のない多国籍ポップス。
06Spinning Wheel
ヴォーカルで始まる落ち着いたポップ・ナンバー。分かりやすい言葉で優しく諭すような口調とウィットや愛に満ちた歌詞を魅力とする広義のラブ・ソング。ユーミンが目の前で歌っているかのような親近感を感じさせる。
07Josephine
リッチなイントロが印象的なジャズ・バラード。セクシーなヴォーカルと“ジョセフィーヌ”について語る映画のような歌詞が、不可解ながらも独特の味わいを醸し出す。得体が知れない分、引き込まれてしまう不思議な1曲。
08Sweet Surrender
サスペンス風極上ポップ・ソング。映画の1シーンのようなスリリングなAメロから信じられないほどポップなサビに急展開する、神業的ナンバー。歌詞もそれに呼応するが、要は“あなたに恋をした”というラブ・ソング。
098月の日時計
落ち着いたテンポのライト・ポップス。アコギが柔らかく包み込むAメロや男声も入ったコーラスが美しい珠玉のサビ、シャレたアコーディオンによるエンディングなど、どこをとっても聴きどころという完成度の高い1曲。
10Lost Highway
夏に激しい恋をした“きみ”を、雨の夜に車の中でひとり思い起こす切ないナンバー。あか抜けないAメロからハード・ロック調のサビに至るまでのドラマティックな展開と斬新なストリングス・アレンジが聴きどころ。
11流星の夜
流星の降る夜にかつての恋人を思い出す切ない恋歌。美しくも儚さを伴った暗めのミディアム・スロー・ナンバーで、同じフレーズを延々と繰り返すエレキ・ギターやエンディングのユーミンによるスキャットなどが特徴的。