ミニ・レビュー
早くも今年のベスト・ロック・アルバム最有力候補となったプライマルズの傑作。マイブラのケヴィン・シールズがミックスした(2)の滅茶苦茶カッコ良いハード・ロックを始め、ドラムン・ベース、ダブ、ファンクなど、リアルな今のロックとして重く鳴り響く。★
ガイドコメント
結成15周年を迎えたプライマル・スクリーム渾身の6thアルバム。彼らなりのエレクトロを追求した結果、勇ましい爆音のデジタル・サウンドに辿りついた! シングル「スワスティカ・アイズ」を含むパワー溢れる作品。
収録曲
01KILL ALL HIPPIES
映画『アウト・オブ・ブルー』の台詞をタイトルに冠した、メタリックなサウンドがノイジーにきしむファンク・ナンバー。ヒッピー文化に対する憎悪が生んだこの曲でのボビーは、ソウル歌手のように柔らかく歌唱を披露。
02ACCELERATOR
“男女ジャンク・ロック・ユニット”ロイヤル・トラックスの曲とは同名異曲。しかし、ケヴィン・シールズがギターを弾きまくるスタイルは、まさにトラックスの作風そのまま。瞬間風速計測不可能なノイズの大嵐が発生。
03EXTERMINATOR
宇宙飛行士のような風貌の害虫駆除業者に触発されたアルバム表題曲。駆除業者を為政者に、市民を害虫に置き換えた挑発的な歌詞が、生演奏を重用した人力デジタル・サウンドとともに、リアルな現実として歌い上げられる。
04SWASTIKA EYES
05PILLS
二日酔いの気分をサウンド化しようと試みた曲で、最後には「シック」と「ファック」をひたすら連呼。ボビーが珍しくラップを披露し、ダン・ジ・オートメーターがミックスを担当。全編ヒップホップ色の強いトラックだ。
06BLOOD MONEY
マイルス・デイヴィス作品の中でも『ダーク・メイガス』を好んで聴くボビーのセンスが明快に反映されたジャズ・ロック・インスト。ジャジィなパンク、あるいはパンキッシュなジャズ。いずれにせよ凶暴なサウンドだ。
07KEEP YOUR DREAMS
“夢を見るのをやめる”=“生きることの放棄”と考えるボビーの前向きなメッセージが、リリカルなメロディに乗せて届けられるポップ・ソング。おぼろげでトランシーな音空間が聴き手を夢心地へといざなってくれる。
08INSECT ROYALTY
映画『アシッド・ハウス』に提供したインスト曲に、新たに歌詞を付けたもの。ダビーなヒップホップ・トラックに乗せ、これが初披露となるラップに挑戦したボビー。ミックスにヒューゴ・ニコルソンなる懐かしい名前が。
09MBV ARKESTRA (IF THEY MOVE KILL 'EM)
オーケストラではなくアーケストラと表記したところに、故サン・ラーへの共鳴が感じ取れるナンバー。ノイズ渦巻くスペーシーなジャズ・ロックは、まるで楽曲を媒介としてサン・ラーの魂と交信しているかのようである。
10SWAASTIKA EYES
11SHOOT SPEED/KILL LIGHT
ニュー・オーダーのバーナード・サムナーがギターを弾いているニューウェイヴ感覚豊かなクール・ナンバー。サムナーのドライヴ感あふれるギターを聴いたボビーは、演奏の良さに思わずスタジオで男泣きしたそうだ。
12I'M 5 YEARS AHEAD OF MY TIME