ガイドコメント
ヴァン・ダイク・パークス、ローウェル・ジョージらが参加したLA録音の3rdアルバム。すでに解散状態にあったため、バンドとしての結束は希薄だが、鈴木茂のナンバーを筆頭に楽曲のクオリティは高い。
ミニ・レビュー
ついにCD化。解散記念のロサンゼルス録音。耳うるさい人には、ヴァン・ダイク、ビル・ペイン、そしてロウエル・ジョージというゲストで、どうだ。さすがに曲はどれも一級品。バンドとしてのまとまりはもはやないが。個人的には思い出がいっぱいの1枚。
収録曲
01風来坊
カービー・ジョンソンがホーン・アレンジを担当したミディアム・ナンバー。ホーンの響きと、朴訥とした細野晴臣の歌声が、聴く者の心を癒してくれる。あえて“意味”や“物語性”を排したような歌詞も印象的だ。
02氷雨月のスケッチ
はっぴいえんど時代の鈴木茂を代表する名曲。ファズとトレモロを用いたギター・サウンドを軸に、恋人同士の心のすれ違いが描かれる。メイン・ヴォーカルは鈴木茂だが、サビのパートを担当しているのは大滝詠一。
03明日あたりはきっと春
メジャー7thコードを多用した伸びやかなメロディが印象的なミディアム・ナンバー。ピアノにビル・ペイン、サックスにトム・スコットが参加している。カラリと乾いたサウンド・メイクはロサンゼルス録音ならでは。
04無風状態
鈴木茂の弾くファンキーなエレキ・ギターが、緩やかなグルーヴを生み出すミディアム・ナンバー。エキゾティシズムにあふれた歌詞は、細野晴臣がのちに発表する「トロピカル3部作」にも通じるものがある。
05さよなら通り3番地
ローウェル・ジョージのギターとビル・ペインのピアノが、鈴木茂のギターと絡み合い唯一無二の世界を創出したナンバー。ホーン・アレンジ〜リズム・アレンジには、ザ・バンドからの影響も見え隠れしている。
06相合傘
細野晴臣が自身のソロ・アルバムのために用意していたというアコースティック・ファンク・ナンバー。跳ねるリズムにピタリとはまった歌詞が、聴いていて実に心地いい。のちに矢野顕子もカヴァーしている。
07田舎道
アルバム『HAPPY END』の中では異色ともいえる、ストレートなロックンロール・ナンバー。効果的に配されたハンド・クラップや大滝詠一のヨーデル唱法など、遊び心にあふれたアレンジが随所に施されている。
08外はいい天気
大滝詠一の1stソロ・アルバム収録曲「水彩画の町」を彷彿とさせるメロディアスなナンバー。冒頭の何気ないスキャットで聴く者を惹きつけてしまうあたりは、ヴォーカリスト大滝詠一の真骨頂といえる。
09さよならアメリカ さよならニッポン
反復するビートに乗せてタイトルを延々とリフレインする、ヴァン・ダイク・パークスとの共作ナンバー。わずか16文字の言葉だが、そこには日本語によるロックを標榜し続けてきた彼らが出した“答え”がある。