ミニ・レビュー
U2との仕事で有名なマーク・ステントをプロデューサーに迎えたオアシスの4作目。そのせいか多彩なアレンジやミックスでサウンドの幅が広がり、ギター以外の楽器も新鮮に響く音作りが新しい。曲は今回も堂々たるビートルズ・テイストのオアシス節だ。
ガイドコメント
前作から約2年半ぶりのリリースとなる、待望のニュー・アルバム。ボーンヘッド、ギグジー参加のラスト・アルバムでもあり、まさに必聴! の1枚。
収録曲
01FUCKIN' IN THE BUSHES
レッド・ツェッペリン「移民の歌」そのままと言ってしまうと身も蓋もなくなるグルーヴィなヘヴィ・インスト。ワイト島ポップ・フェスティヴァル(70年)の記録フィルムから関係者の発言がサンプリングされている。
02GO LET IT OUT!
メロトロンやシタールに、ポール・マッカートニー風ベースまで楽しめる、中後期ビートルズ博覧会のようなロック・ナンバー。ドラム・ループにはジョニー・ジェンキンス版「I Walk on Guilded Splinters」を引用。
03WHO FEELS LOVE?
ビートルズをあくまでクラブ・ミュージックの素材として消化した、それまでのオアシスとは異なるアプローチが新鮮なサイケデリック・ポップ。タイ滞在時に書かれた曲ゆえか、音にほんのりと仏教テイストが漂っている。
04PUT YER MONEY WHERE YER MOUTH IS
「口にしたことに金も出せ」と繰り返し歌う、口は出すけど金は出さない全国会社経営者に聴かせたいエネルギッシュなナンバー。リンダ・ルイスとP.P.アーノルドの両歌姫がバック・ヴォーカルを務めていて聴きもの。
05LITTLE JAMES
リアムが愛息に捧げた記念すべきソングライター・デビュー曲。隠れてスタジオで練習しているのを知ったノエルが、リアムには知らせず隠し録り。メロディともども柔らかい歌唱が、ファンの間で高い人気を誇っている曲。
06GAS PANIC!
不安に苛まれて寝付けなかったノエルが、その心中をそのまま曲にしたシリアスなナンバー。全編にダークな雰囲気を漂わせながらも、キャッチーな要素はしっかりと備えている。オアシスの裏サイドを代表する隠れ名曲。
07WHERE DID IT ALL GO WRONG?
オアシスらしい哀愁漂うロック・ナンバーだが、メロディよりもグルーヴへの関心が高かった時期の曲だけに、少々違った趣がある。「友達を金で売った時のレシートは取ってあるかい?」と、歌詞に混じる皮肉が意味深。
08SUNDAY MORNING CALL
ノエルが生きすぎてしまっている知人を歌った私的な内容の曲。出来のよいバラードが書けると、決まってリアムには歌わせようとしない“ノエルの法則”はここでも健在。ノエル自らハートフルに歌い上げている。
09I CAN SEE A LIAR
デビュー当初の曲を再演しているデジャヴに襲われるシンプルなロックンロール・ナンバー。セックス・ピストルズのエッセンスを煮詰めたパンキッシュな曲調は、ノエルではなくリアムがお気に入りなのも納得だ。
10ROLL IT OVER
「シャンペン・スーパーノヴァ」に、クラブ・ミュージックとゴスペルを溶かし込んだナンバー。アレンジはかなり大仰だが、サイケなグルーヴはなかなか乙な味。リンダ・ルイスとP.P.アーノルドが伸びのある歌声で客演。
11LET'S ALL MAKE BELIEVE
シングル・カップリング曲でも手抜きしない彼らならではのメロディアスな裏名曲。分厚いモヤで覆われたような凝ったトラックに乗せ、“〜だというふりをしよう”と偽悪的な歌詞で呼びかける。オアシス一流の皮肉か!?