ガイドコメント
あの傑作デビュー・アルバムをも凌ぐ圧倒的世界が確立された大傑作2nd。ジャズもパンクもグランジも歌謡曲も全部我流に再構築して聴かせるサウンドには、唯一無二の迫力と切実さとが充満した未曾有の大傑作。先行シングル曲「罪と罰」も長尺版にて収録だ。
収録曲
01虚言症
プログラミングを多用し、前作『無罪モラトリアム』とは配色をガラリと変えた2ndアルバム『勝訴ストリップ』のオープニング・トラック。淡々と歌うヴォーカルを、バックに埋没させずにきっちりと切り出した亀田誠治のアレンジ力はここでも健在。湿り気が少なめのサウンドも、しっかりとうねりはキープするセンスに脱帽。
02浴室
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲。椎名林檎いわく「本能」への回答ということで、“純愛を遂げるが故の死”を連想させる。退廃的な歌詞と歪みきったメロディが胸に突き刺さる壮絶な楽曲。
03弁解ドビュッシー
2ndアルバム『勝訴ストリップ』に収録のノイジーなロック・チューン。“どうせあたしの人生 語呂合わせなんだもん”と歌いきってしまう潔さがある反面、全篇をごちゃついた感じのサウンドに仕立てて最後に“本当は全部トリックであろう”と締めるあたりに、一筋縄ではいかない彼女のセンスが垣間見られる。
04ギブス
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録のシングル曲。「ここでキスして」を思わせるような、好きな人への気持ちをモロに出しつつ、歌唱法にも歌詞にも憂いの表情が色濃く出た林檎流ラヴ・ソング。
05闇に降る雨
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録の、一分以上続く不気味なイントロが特徴的な曲。淡々とした曲調ながら、痛々しいほどに切ない椎名林檎のヴォーカルには、情念や怨念といった負の感情がにじんでいる。
06アイデンティティ
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲。シンプルな進行の疾走感あふれる正統派ロック・ナンバーで、伸びやかなヴォーカルがいかにもライヴ映えしそうな楽曲。壮絶なヴォーカルがいかにも椎名林檎らしい。
07罪と罰
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録のシングル曲で、ギターと歯笛で浅井健一が参加。タイトルそのものの重い歌詞を絶叫に近い掠れ声と巻き舌で歌う。自前のベンツを真っ二つにしたジャケット写真も話題に。
08ストイシズム
2分足らずの短い曲で、エフェクトをビンビンに利かせたヴォーカルをポップなメロディに乗せた、おふざけ心タップリの曲。とはいえメロディの質は高く、才能をチラリとのぞかせるあたりが何とも心憎い。
09月に負け犬
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲。“明日くたばるかもしれない”という刹那的な歌詞に表われているどおり、自虐感タップリのロック・ナンバー。負の感情を一滴残らず絞り出すような、凄まじいヴォーカルを披露している。
10サカナ
男の哀愁を感じさせるようなトランペットが全篇を支配している、2ndアルバム『勝訴ストリップ』に収録のナンバー。キュートで小粋なウーリッツアーを配した前半から、重厚なギター・サウンドが前面に打ち出たハードボイルドな世界へと誘う展開が特色。自身の生態をゆらゆら泳ぐサカナに喩えた気だるさがクセになる。
11病床パブリック
2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲。歪んだドラムのイントロで始まる、疾走感あふれるロック・ナンバー。エフェクト処理されたヴォーカルが入ると同時にドラムの音はピタリと止み、代わってギターが鳴り響く構成が面白い。
12本能
シンセやノイズを多用した99年発表のシングル曲。性的な欲求を露にし、男に媚びない強い女性を歌う姿が女性の熱狂的支持を受け、特大のヒットを記録した。ナースに扮した林檎嬢がガラスを叩き割るPVも話題に。
13依存症
柔らかいシンセサイザーの音で幕を開け、サビの部分で一気に感情を爆発させながら、聴き手を取り残すように唐突に曲が終わるダイナミックな曲。歌詞の一部がレコーディング時に差し替えられたことも話題に。