ガイドコメント
スタイル・カウンシルのセカンド・アルバムは“スタイリッシュ&ファッショナブル”サウンドが展開される大ヒット・ロングセラーだ。ヒット・チューン「シャウト・トゥ・ザ・トップ」も収録。
収録曲
01HOMEBREAKERS
失業家族の離散を描いた歌詞を通じ、当時のサッチャー政権を批判したミック・タルボット歌唱曲。憂鬱な雰囲気をまとったジャズ・ファンク・ナンバーで、カメール・ハインズの黒々としたベース・ラインが印象的だ。
02ALL GONE AWAY
サッチャー政権下で崩壊した地方経済を、ジャズ・ボッサ調のサウンドに乗せ描いた軽やかなナンバー。深刻な歌詞とフルートの音色も清々しいサウンドとの対照的な雰囲気が、楽曲に込められた格差社会批判を強調している。
03COME TO MILTON KEYNES
郊外都市“ミルトン・キーンズ”をモチーフに、新興住宅地の画一的な不気味さを描いた曲。ストリングスの空虚な美しさで、歌詞の逆説的な効果を補強。イントロのフィル・インも魅力的なアップ・ビート・ナンバーだ。
04INTERNATIONALISTS
左傾化したウェラーが、ニュー・ソウル調トラックをバックに決起と闘争を呼びかけるファンク・ロック・ナンバー。異なる収録内容で発売された『アワ・フェイヴァリット・ショップ』の米国盤では、この曲が表題曲になった。
05A STONES THROW AWAY
南アフリカやポーランドにおける警察の残虐行為への怒りを歌った曲。弦楽四重奏のみをバックに歌うヨーロッパ的雰囲気の曲で、弦の調べの哀切さが、虐げる側、虐げられる側を描いた歌詞が内包する怒りや閉塞感を体現している。
06THE STAND UP COMIC'S INSTRUCTIONS
飢餓救済団体“コメディ・リリーフ”設立などチャリティ活動に意欲的なコメディアン、レニー・ヘンリーを起用したファンク・ナンバー。人を笑わせるには人種差別ネタが最適と、笑いのノウハウを逆説的にラッピング。
07THE BOY WHO CRIED WOLF
重みのないビートが、いかにも80年代的で懐かしく感じられるジャジィなナンバー。全編ウェットな雰囲気のメロディで、ウェラー主宰レーベル“レスポンド”の看板娘トレイシーがバック・ヴォーカルを担当している。
08A MAN OF GREAT PROMISE
ドラッグ禍で死去した友人を追悼したパーソナルなナンバー。悲しみに包まれた歌詞とは裏腹に、ボンゴをフィーチャーした洒脱な曲調は軽快かつファンク。冒頭で鳴る鐘の音は、キンクス「黒い霧を消せ!」を連想させる。
09DOWN IN THE SEINE
たびたびフランスを題材にしてきたウェラーが、フランス語による伊達男歌唱を披露したラブ・ソング。ミック・タルボットが弾くアコーディオンなどで、ベタベタなフレンチ・ムードを演出しているシャンソン風ナンバー。
10THE LODGERS (OR SHE WAS ONLY A SHOPKEEPER'S DAUGHTER)
彼らに対する“オシャレ”なイメージと直結する曲調の傑作ブルー・アイド・ソウル・ナンバー。この時期のウェラーが好んだ、対照的な音と歌詞を組み合わせる手法が採用されており、歌詞では痛烈な政治批判を展開。
11LUCK
願ってもない幸運の訪れに、高ぶる気持ちを抑えられずにいるラブ・ソング。明るい曲調にシリアスな詞を組み合わせることが多かったこの時期の楽曲にしては珍しく、曲も詞も多幸なムードで一致。新しい恋に浮かれて仕方ないウェラーの気分が如実に反映された曲。
12WITH EVERYTHING TO LOSE
ボサ・ノヴァ風の洒落たナンバーで、英国政府の労働政策を批判した歌詞はウェラーではなくスティーヴ・ホワイトが書いた。中盤のムーディなサックスは、アニマル・ナイトライフのビリー・チャップマンが吹いている。
13OUR FAVOURITE SHOP
『アワ・フェイヴァリット・ショップ』における「タンブリング・ダウン」の露払い的楽曲。ミック・タルボットのオルガンを軸にしたアシッド・ジャズの先祖的インスト曲で、サックスがむせぶ後半まで展開に淀みがない。
14WALLS COME TUMBLING DOWN
ジャム時代の疾走感をギターレス・サウンドで再現した、快心のソウルフル・ナンバー。かつての“怒れる若者”ぶりを思わせるパワフルな歌唱で、民衆の団結とサッチャー政権打倒を呼びかけるプロテスト・ソング。
15SHOUT TO THE TOP
日本では“佐野元春の曲の元ネタ”が枕詞になっている、力強くも滑らかな英国ブルー・アイド・ソウルの傑作。フィリー・ソウルが趣味に合わなかったウェラーが、それ風の上品なストリングスで編曲したのは感慨深い。